杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・東京大空襲裁判 ~ 2010年7月23日控訴審始まる

2010-07-28 06:02:00 | 東京大空襲
東京大空襲裁判は、(2010年)7月23日に第一回口頭弁論が開かれ、控訴審が始まったところです。

2007年3月9日に東京地裁に提起したいわゆる東京大空襲訴訟は、原告132人が、国からの謝罪文の交付と官報への掲載、各自に慰謝料1000万円と弁護士費用100万円の支払いを求めた裁判です。

 2009年12月24日に出された第1審判決は、
同空襲による加害と原告らの被害を認めながら、
「国が戦後に補償をしないのは、不作為による違法行為であるという原告側の主張」に対しては、

「その被害の原因、態様、程度は様々なものであり、救済、援助のためにどのような措置を講じるかということ自体、客観的な基準があるわけではなく、一般戦争被害者を含めた戦争被害者に対して救済、援助を与えるべきかどうか、与えるとしてどのような救済、援助を与えるべきかなどといった問題は、一定の原理原則に基づいた判断をする裁判所が解決するにふさわしい問題ではなく、国会が立法を通じて解決すべき問題であるといわざるを得ないし、このような国会の立法に関しては、極めて広汎な裁量を認めざるを得ない」
として、これを否定しました。


 そして、「軍人軍属に対してなされている補償との差は、憲法14条の平等の原則に違反するという原告側の主張」に対しては

「明確な差別的意思に基づいて、特定のグループのみを優遇したり、冷遇したりするなど、差別的扱いが行われていることが明らかといえるような例外的な事情が認められる場合ではない限り、平等原則違反との断定をすることはできない」そして、「差別的意思に基づいて、旧軍人軍属のみを優遇したとか、取扱いに差別を設けることによって、他の一般戦争被害者を殊更冷遇しようとしたと認めることは困難である」
として、憲法14条違反と断定できないと結論付けました。

 しかしながら、子を奪い、家族を奪い、親を奪って生涯にわたる損害を与えたにもかかわらず、その後一切の補償をしていないこの国のあり方は、国民の幸福追求の権利を根底から奪い、人間としての尊厳ある生き方を否定したままで戦後65年を経過させてきた、不作為による大きな違法があるとしかいいようがありません。

 また戦争被害は既に回復したものと見ているわけではないことは、判決が原告らの被害について理解を示したことからも分かりますが、他方、軍人は恩給方によって毎年最低補償額約200万円~400万円が支給され、受給権は孫にも及ぶなど、現在も年間1兆円を超える支給を国は行っています。
まだ被害があると、国が思っているのではないでしょうか?
これが不平等でないと言えるでしょうか。


 控訴審は、1審以上に理論的な問題についても検討を進めるとともに、同じ国民の問題であり、裁判官と同じ生身の肉親の問題として感じ取ってもらえなかった(としか思えない)原告らの被害を、さらに丁寧に伝えていきたいと思っています。

 たまたま見ていたヤメ記者弁護士さんのブログに、この東京大空襲を指揮したアメリカのカーチス・ルメイのことが詳しく取り上げられていました。
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005?sess=e9eb06a99cbcc3aa7fab07f6f7026767


1945年3月10日未明、2時間余りの爆撃で約10万人が亡くなった東京大空襲は、米軍が、これに先立ち米国・ユタ州の砂漠に日本の木造家屋を建て、焼夷(しょうい)弾の燃焼実験をくりかえした、その成果(!)でした(「東京大空襲・戦災資料センター」(早乙女勝元館長)に提供された英文資料の研究などから、実験の詳細は明らかです)。

このカーチス・ルメイに、日本は1964年に勲一等旭日大綬章を授与しているのです。

航空自衛隊創設時の戦術指導に対する功績により、というのです。


今も民間の戦争被害について真摯に向き合わず、戦争功労者に対して過分な優遇をするという国のあり方は、今後、何か起こったときにも、私たち庶民がどのように遇されるか、という国の姿勢を端的に示していると思いませんか。
「過ぎ去った昔の話」ではないわけです。

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2 コメント

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Unknown (多摩)
2010-07-28 20:32:09
最近衝撃を受けた記事がこれです。http://alisonn.blog106.fc2.com/
7月19日の所です。
天保の使節団が見たと言う日本人女性が50万人も売り飛ばされてたとの事。
そんな民族ならカーチス・ルメイの事も当然なのかもしれません。
それに現在この国の為政者達は、おこぼれを貰い大多数の国民の汗を献上しています。汗だけじゃないですね、血もです。自殺者の3万人と言う数字は紛れも無く血です。
700兆のアメリカ国債の事は問題にせず、一般国民の僅かなお金で争わせて、仲間割れさせる作戦にまんまとのせられています。
普天間にしても、東京大空襲にしても他人事としてる間は、これを指導していた為政者達は腹を抱えて笑ってる事でしょう。
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悲しい (名無し)
2010-11-14 16:38:51
ルメイは軍人です 覚悟のが、あっての戦略です
非望、中傷できる人は、同じ時間 同じ場所を共有した人だけです
君のためにこそ死に行くを酷評したあなたにもいえます
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