杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・DV夫が妻子に殺される事件

2009-05-08 02:52:14 | DV・セクハラ・パワハラ
4月30日午前6時頃に、広島県竹原市内の建設会社経営の男性(57)の妻(40)が、自ら「自宅で夫の首を絞めた」と県警に通報し、現場に向かった竹原署員が、1階居間で男性が首にひもを巻かれて死亡しているのを見つけた、という事件がありました。
警察での事情聴取に対しては、妻と長男(18)、長女(15)が男性の首を絞めたことを認めたということです。

(警察の)発表によると、3人は共謀して、同日午前6時頃、自宅で男性の首をひもで絞め、殺害しようとしたとみられているようです。同署によると、男性は妻に対する家庭内暴力(DV)を繰り返していたということで、警察の調べに対して、妻は「殴られるのに耐えかねて首を絞めた」、長男は「母親が殴られるのが許せなかった」、長女は「家族全員が殺されると思った」などと話しているということです。 
 男性方は妻、子ども4人の6人家族で、4月17日にも、男性が妻に暴力をふるったと通報があり、署員が夫婦から事情を聞いたということでした。そして署員は妻に保護施設(シェルターのことでしょう)があることを説明したが、妻は「今は落ち着いている」などと話して保護を断り、被害届も出さなかったということのようです。

(ちなみに、司法解剖では死因が不明なため、3人を殺人未遂容疑で逮捕したということです。つまり、3人の行為と死亡との間に因果関係が認められなければ、3人は殺人罪には問われないということです。)

警察に通報しているということであれば、本当にDVだったということが強く疑われます。また、子どもたちが、一緒に親を殺そうとするというのは、相当のことがあったのだろうと想像できます。
もし、真実、夫のDVが原因だとしたら、妻は人間として穏やかな気持で日々暮らせなかっただろうし、子どもたちは、家庭の中が恐怖と憎しみの中にありながら、外には出さないように努力していただろう、本当に苦しかったと思います。
その上、親を殺すことを決意しなければならない異常な事態に追い込まれ、社会的には殺人(未遂)罪の汚名をかぶらなければなりません。

この子たちはどうやってこの凄惨な成育歴を修復していくことが出来るのかと思うと、本当にかわいそうでなりません。時間をかけてゆっくりとその心の凍えを解かなければならないでしょう。


ところで、このような事件があった時に、マスコミはどうして、周囲の人の声を、一方的に拾うのでしょうか。
「教育熱心で仲のいい夫婦だったのに」「昨年、妻を亡くしたとき、香典をもらった。仕事もまじめだった」「一般の家庭以上に幸せそうで、仲良く、夫婦同士の会話もよくしていたのに」・・・・・信じられないと。

事件が起こるまでは、どこの家庭もそれなり普通に見えるわけですが、そこには実はどんなことがあるのか分かりません。とくに、DVは、外から見ると普通以上の紳士が加害者であることも多いわけで、そちらからの「信じられない」構造についても、もっと社会に示すことが必要ではないでしょうか。


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2 コメント

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Unknown (DVは絶対に許せない)
2009-05-10 13:48:51
DVは肉親・親族・家族に対する暴力ですから、普通の暴行罪の何倍もの重い刑を科し(執行猶予なしの懲役刑)、住所・氏名・顔写真などを公表し(所轄警察署の門前に掲出するなど)、また警察官はDVの通報を受けたなら、その場で加害者を緊急逮捕できるようにし、さらに、DVの前科のある者は、生涯にわたって、死ぬまで警察などの行政機関の監視下におかなければいけないと思います。
スポーツ選手とDV、性犯罪 (龍造)
2009-06-15 21:12:52
スポーツ選手たちによる性犯罪やDVは少なからず起きているようです(『スポーツ・ヒーローと性犯罪 』大修館書店)。

彼らは屈強な体と脆弱な精神の持ち主です。彼らは男性としての強さを誤解し、体育会的な上下関係や連帯意識を悪用し、女性を支配しようとします。

彼らはスポーツ選手としての力を悪用して、女性に近づき、言うことをきかせ、そして犯罪行為を行います。

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