杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・米軍事域外管轄法(MEJA)ではもともと受け入れ国に裁判権 ~玄葉外相の合意はなに?

2011-12-04 09:33:32 | 法律・法制度
11月末に、「日米地位協定ので運用見直しで、これまで治外法権になっていた米軍属公務中の事件・事故について
日本の裁判が可能になった」との一歩前進の報道がありました。
 
これは、「玄葉光一郎外相が、11月23日、地位協定の具体的運用を話し合う日米合同委員会で合意した。」
という報道でした。

合意によると、米側が公務中に罪を犯した軍属を刑事訴追するかどうかをまず決定し、日本側に通告。訴追しない場合は、日本側は30日以内に、日本で裁判にかけることへの同意を米国政府に要請できる。これを受け、米側は、被害者が死亡したり、重傷を負った場合などは、日本側の要請に「好意的考慮」を払い、それ以外の犯罪でも「日本政府の特別な見解を十分に考慮」するとした。米側が同意すれば日本で訴追することになる。

というものです。

ところが、12月1日の沖縄タイムスによれば
軍属の公務中犯罪を米国の一般の裁判所で裁くことを可能にした米軍事域外管轄法(MEJA)の条文に、
軍属が派遣されていた接受国(基地受け入れ国)が刑事訴追した場合はMEJAによる訴追はできない
と明記されている
ことが11月30日、赤嶺政賢氏(共産)が同日の衆院外務委員会で指摘し、分かったということです。

つまり、MEJAの条文に従えば、まず日本側の裁判権行使の判断が先にあることになるわけで、
これまで、全く反対の運用が行われていたばかりか、
今回、新たに日本が譲歩の合意をわざわざ取り付けてしまった
ということになります。

 
 玄葉光一郎外相は、この条文について
「接受国が地位協定などにより刑事裁判を行っている場合に、
米側がMEJAによる訴追ができないという一事不再理の原則を定めたもの」と説明し、
「MEJAによる訴追に優先して接受国の裁判管轄権を認めている規定ではない」と述べた。
(一事不再理 = 日本で裁判をしたら、アメリカは同じ事件を再度裁判はできません)

ということで、あくまでも米側の訴追の優先を認める答弁になっています。

 一方、米陸軍大学のケバン・ヤコブソン大佐は2006年に出した論文で
「MEJAは接受国が裁判権行使しない場合に限り有効」との見解を記している。

ということも沖縄タイムスには報じられています。
アメリカの軍の専門家が、日本に優先権がありますよ、と論文で書いているわけです。
にもかかわらず、玄葉外相はなぜ、「検討して回答する」と答えるのではなく
譲歩しているようのは、なぜでしょうか。

1995年の沖縄での米兵による少女“暴行”事件について知らなかった様に見えた防衛大臣も
沖縄を考える資格はないと思いますが、
これまでも懸案になっていた軍属の裁判権について、
一歩譲歩がお手柄のようになってしまった状況は
何とか改める、という次善の策を早急にとってほしいです。


http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
なお、委員会での審議の様子を聞くと、もう少し複雑ですが、
いずれにしても、沖縄のことはもっと親身になって考えるべきだと思いました。



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