杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・「蟹工船」を見ました~「9条フェスタ2008」にて

2008-10-20 03:33:28 | Weblog
10月18日品川の「きゅりあん」で「輝け9条!世界へ未来へフェスティバル」という催しに、コスタリカに学ぶ会(正式名称「軍隊を捨てた国コスタリカに学び平和をつくる会」)として参加しました。
ブース展示もしました。

もともと関心のある方が集まる集い、とうことは言えますが、多くのかたがコスタリカのこと(第二次世界大戦後間もなく軍隊を放棄した国であることを)をご存知でしたし、「すごく関心があった」「いろいろ知りたい」といわれる方も予想以上に多くいらっしゃいました。
入会される方、学習会に参加したいので情報を下さいといわれる方が、これまでのいろいろな集い以上に多かったと感じました。

どころで、このフェスティバルは、映画の上映やコンサート、討論会などいろいろな企画があったのですが、私は「蟹工船」の上映を見てきました。

簡単に報告です。

今ブームの「蟹工船」ですが、昭和28年の映画(山村聡の監督)で、生活そのものが今とはまったく異なり貧しく、今の若い方が見たら船内での奴隷的な酷使を見るまでもなく、重苦しいものを感じただろうと思います。

当時、海での撮影も大変だっただろうと思いました。

船に乗り込む人たちは、金のない人たちで、はじめから重い足取りでゴザくるんだ荷物を担いで蟹工船に乗り込んで行ったり、また人さらいのようにして子どもを人夫にして乗船させてしまったり。人権感覚は今とまったく違う状態でした。
今は、少なくとも、それがいいか悪いかの判断はできている(守られているかどうかは疑問ですが)ように思います。

船は北洋にでて、カニを取り、船内で缶詰に加工する作業をしています。
途中、中積船が製品を引き取りに来て、人夫たちには家族からの手紙などを渡します。

牛馬のように扱われる様子、つかれて動きが遅くなるとスコップで頭を叩かれたり、棒で殴られたり。嵐でも海に出されたり、寒くても汚くても風呂にも入らせてもらえず、監督には「人間とは扱ってない」という言葉を吐かれる。
それでも、耐えるしか仕方のないことと受け止めている人たちの状況がおも苦しくのしかかってきました。

過労や病気で倒れる者が続出するというまさに「地獄」のような船中。

逆らうものが折檻されて殺される、そして、知らないうちに葬られてしまう空間の恐ろしさ。


最後に蟹工船の中で働くものたちが監督らに反旗を翻すのですが、これも謀議とか共謀とかの知的活動があったわけではなく、
どうにもその扱いにたまらず、我慢の限界で「嫌だ」と声を上げた者に「俺も」「ワシも」と声が連なったというぎりぎりの状況のものでした。

でも、この物語の中で、労働者が反撃できたのは、声を上げることまで。資本家の意向を代弁し、私欲に走るする者に対して訴える、というところまででした。
そのあとは・・・。

この時代から、労働者の権利が確保されるまでにどれほどかかったか。

いずれにしても、息をもつかさぬ約100分でした。

映画冒頭に、プロレタリア文学についてくるみ(木偏に胡)沢健さんからのコメントがありました。
もともと労働の現場は見ることのできない場所、見せることを嫌がる場所(だから食品偽装も・・・と言及)であって、プロレタリア文学とはそれを見るという特殊な性質を持つものあということ。
蟹工船には、全国各地からの労働者が集まって乗り組み、暗い船室で、皆が方言で話すから、暗い労働の場所で分からない方言が飛び交う、見にくい・分かりにくいものとなっている。
それもまたプロレタリア文学の特性といえる、

という話で、これまでそのような視点でプロレタリア文学というものを考えたこともなかったので、とても興味深かったです。

このころの労働者と現在の労働者と、どこがどのように違うか。
そして、今の若い人たちはこの「蟹工船」を、どう見たのか、そのことも知りたいと思いました。




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4 コメント

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コスタリカですかぁ・・・ (通りすがり)
2008-10-24 22:19:21
コスタリカは武装中立国家です。非武装と
言うのはいささか誤解を生じます。 

気を付けないといけないのは、コスタリカが
重武装の警察を保有し、頻繁に米軍との協同
訓練を行っているという点。非武装国家として
コスタリカを例にあげるのは大失敗ですよ。

なにしろ、コスタリカ憲法は非常時に軍隊を
組織し徴兵制を敷く事を認めています。
ある意味、自民党の右派も真っ青な憲法です。

P.S. お返事がいただけていませんけど、
   先日の航空自衛隊幕僚長の献金について
   現行法及び関連規則には抵触せず、
   罪刑法定主義に従い、違法性はないと
   いうことで良いか、弁護士として法の
   プロとして、どうかご教授下さい。
   よろしくおねがいします。m(__)m
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コスタリカ憲法12条は ()
2008-10-26 00:20:47
おっしゃるとおり、
コスタリカ憲法は非常時に軍隊を
組織し徴兵制を敷く事を認めています。

でも、私が知っているコスタリカの方たちから知るコスタリカの国民は、軍隊を持ちたいとはまったく思っていないようです。

たとえていうと・・・
その一定の空間から飛び出す気持ちなど毛頭ない野獣がオリの外に出されている状態と
オリがあっても飛び出しそうになっている野獣がいてこのオリの鍵をなんとかはずそうとしている人たちがいる
こんな現状だと思います。


だから「自民党の右派も真っ青な憲法」というわけではないと思います。
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国防意識旺盛なコスタリカ (通りすがり)
2008-10-26 10:54:06
それはそうでしょう。現時点で差し迫った危機がないのですから、コスタリカの人々は軍隊を持ちたいとは思わないでしょう。しかし、必要と認めたときに、国を守るために軍隊を組織し、徴兵制を敷くことに国民的合意があるからコスタリカ憲法12条があるのです。

対して日本は、準軍隊として自衛隊を常備するものの、徴兵制を敷くことが出来ません。この点を捉えると、やはり日本の国防意識はコスタリカ以下であると断じても良いと思います。自民党右派は負けています。

野獣と檻のたとえ話は、良く理解できませんでした。

参考に、自衛隊はイラクで復興支援を行いましたが、コスタリカは文民警察が治安維持活動に関与しています。この点でも日本はコスタリカに負けています。国防意識も実績も、実はコスタリカに負けているのかも知れません。

<参考>
「紛争があるときには、国際条約に従って国を守る。それが最高の防衛である。」コスタリカ警察学校長オバンド氏
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格差是正 (ken)
2008-10-26 15:19:45
 今の日本は格差を広げるような政策をとっているように思えます。
 思いきった格差是正策をとって欲しいです。

たとえば
 ・賃金格差を10倍以内にする。
   (10倍以上も価値ある仕事をしている人っているのか? 最低賃金の10倍以上の人には高率の所得税をかける)
 ・1日8時間、週40時間の徹底、残業原則禁止
   (法律があるのにざるでしょう。過労死や失業死が多すぎる。仕事を分けましょう)
 ・消費税を贅沢税に変える。
   (生活必需品を無税に)
 ・温暖化対策は、一定量以上の二酸化炭素排出者にとってもらう。
   (すでにエコ生活をしている人が苦労することはない) 
 ・投機に厳しい制限を(投資はいいとしても)

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