杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・18才成人について ~ 個々の問題について子どもと一緒に考えたい

2008-03-03 23:29:39 | 法律・法制度
成人を18才に引き下げる法制定が、いよいよ議論になってきそうです。今朝の毎日新聞でも、このことについて取り上げていました。

女性は引き下げ反対の方の方が多数だということです。それは、精神的に未熟だからということが理由だと書かれていましたが、さすがに子どもの近いところにいる方が多いゆえの発言だと思いました。ただ、それがいいかどうかとは別で、成人と扱うことで成長することもあるでしょうから、杞憂とか過保護ということもあるかも知れません。

私は、この18才成人論については、画一的に扱うメリットもありますが、まずは「生活のどの領域に関してか」、「成人と扱うとどうなるか」をしっかり検討することが必要だと持っています。

たとえば、選挙権のように現実に権利を行使する場面に立たせることで意識が変わり成長することが期待できる事柄については、引き下げがあってもいいと思います。地方自治体の合併について中学生の住民投票をして、子どもたちが自分たちの町について真剣に考えるきかいになったという例もあります。

でも、刑事責任能力のように、責任をとる場面においては一定の成人としての学習(選挙権でもいいでしょう)をして、行動についての意識とそれによるコントロールができるようになってはじめて負わせるべきではないかと思います。
理解できる前に懲らしめるというのでは、(極端に言うなら犬猫のよう)反射的な抑制にはなっても長い目で見て得策ではないと思います。

社会経済取引を一人で一人前としてできるか(行為能力)についても、やはり学習が先にあってからでしょう。
理解できず、抑制もできないところでの自己責任は、結果責任になってしまいます。

また、酒・たばこのような体に影響を与える医学的な問題については、勝手に許可年齢を上げ下げしていいものではありません。

一律に成人年齢を決めるメリットもありますが、これからその年齢決めをしようというのですから、じっくり個別の分野について検討していくことが重要だ考えます。
この検討なしに、適当に一律に引き下げてみる、というようなことだけは、大人の責任としてやってはいけないと思います。

また、この問題はまさに子どもの権利にかかわる問題ですので、大人だけで決めることなく、子どもの声も十分聞いて、一緒に法律をつくる(変えないことも含めて)というくらいのスタンスが必要ではないでしょうか。
その過程で、子どもが自分たちの問題としてこの成人年齢の問題を考える契機になればとても有益です。


<毎日世論調査>
「18歳成人」6割が反対 精神的に未熟だ
3月2日18時30分配信 毎日新聞


 毎日新聞が1、2の両日に実施した電話による全国世論調査で、成人年齢を18歳に引き下げることの是非について尋ねたところ、「反対」との回答が60%を占め、「賛成」の36%を大きく上回った。男女別では女性の66%が「反対」、男性は52%にとどまり、女性に「反対」の回答が目立った。鳩山邦夫法相は先月13日、民法を改正し「成人」年齢を引き下げるかどうかについて法制審議会に諮問したが、国民の間では慎重論が根強いことをうかがわせた。

 反対の理由は「精神的に未熟だから」が69%と圧倒的に多く、「18歳から飲酒・喫煙が認められるのが心配だから」(16%)▽「親の許可なく消費契約を結べるのが心配だから」(14%)を大きく離した。また年代別にみると、男性の30~50代は「反対」と「賛成」がほぼ拮抗(きっこう)していたが、女性はどの年代も「反対」が6割を上回った。18歳前後の子どもを持つ主な世代にあたる40代女性は「反対」が7割を超え、各年代でトップの73%だった。

 一方、賛成の理由を見ると、「若い人に自覚を促し、責任を持たせることができるから」が62%で最も多く、「十分に責任をとれる年齢だから」(29%)、「18歳成人が、欧米各国の主流だから」(9%)を上回った。【有田浩子】



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6 コメント

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人権擁護法案 (Unknown)
2008-03-09 00:04:05
別のことですみませんが
人権擁護法案
ってなんですか
ご教示願います
可決されるとやばいって聞きましたが
時間がなく
マスコミもてがだせないようにされてるようです
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東京大空襲。 (石田知花)
2008-03-09 22:23:53
杉浦さんへ。

こんばんわ。お元気ですか?昨年は2回も会えてよかったです。メールもありがとう。さて、明日は3月10日。東京大空襲があったひです。折からの強風で炎が燃え盛ったというのは最近知りました。それでyoutubeで当時の映像をみて
みましたが、人だと分からない遺体は
まだいいのですが、わずかながらに顔が
残っている遺体は、恐ろしく動画をすぐに止めてしまいました。自分の心が弱いがゆえに、起こった現実を直視できないことが悔しくて、哀しいですが、未だに
現実に起こったことと信じることが出来ません。私は原爆の熱さに耐えられない。でも、それは現実に起こった。人が、ガラスが、建物が溶けて影だけのこして消えた人たちが一杯いた。ここまで
書いただけで気が遠くなりました。
なぜ、一般市民がという思いを消せません。60年以上経った今も、自分の耳の
なかに「あついよー、あついよー」
「助けて、助けてー!」「おかあさーん、おかあさーん」という断末魔の叫びが蘇るようです。戦争は、爆弾の下にかけがえのない命があるんだということを忘れることでしか起きえません。

そして、日本は被害者だけでなく加害者にもなり、中国で731部隊を創って
人体実験をし、その中にいた一人が
ミドリ十字をつくり、薬害を起こしたのですから、本当に命を軽く見ている。

彼らにとって人間はもはやモルモットだとさえ思っているのではないかと疑ってしまいます。
「戦争をなくすにはどうしたらいいか?」湾岸戦争で戦争に関心を持ち始めた小学生の頃からの私の中にある大きな課題です。
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人権擁護法案について (杉浦ひとみ)
2008-03-09 23:37:59
内容については、ウイキペディアにも書いてありますが、人権の侵害があったと思うときに、裁判でなく公平な機関に訴えて調査してもらい、判断をしてもらうというものです。
でも、その機関が私たちの人権をもっとも制約するおそれのある行政機関がこの申立を受ける機関になっています。またこの人権擁護機関は大きな調査権も持ちます。人権制約のおそれが高いことから反対されます。
下記は日弁連の意見です。

http://www.geocities.jp/zenkairen21/02-33.html

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コメント非公開希望もありです (杉浦ひとみ)
2008-03-09 23:50:39
非公開希望のコメントがありましたら、その旨書き込んでいただければ、非公開にできます。
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1990年代の戦場 (杉浦ひとみ)
2008-03-10 00:00:31
先日先輩の弁護士から、新しい戦争で犠牲になった住民の方たちのむごい映像をいただきました。

日本の子どもたちも、何にも関心がないわけではなく、教える側の工夫も必要ですね。
今でも戦争があったことを知らなかった子もいます。
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下町反戦 (TOCKA(佼成労組))
2008-03-11 01:21:42
今日(昨日)は、熱い思いのこもったお話を、有り難うございました。今日は中小ないし非正規労組主体の反戦集会でしたから、先生の問題提起を受け、懇親会では格差社会と戦争政策の関係など議論になりました。29日に関連イベントもあります。他方、私が発言で触れたCS神奈川懇話会に関しては、URLリンクをご覧ください。報告記事は、次号「もうひとつの世界へ」にも掲載します。こちらは今後、川崎で始まる無防備都市運動や旧陸軍登戸研究所保存運動を取り上げる予定となっています。が、コスタリカの会や原告団の人もいますから、いつか先生も話をしに来て下さいね。ではまた、お会いしましょう。
http://blogs.yahoo.co.jp/yamerugendai/53525785.html
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