風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

デヴィッド・プラウズ

2017-12-19 04:48:50 | 名バイプレーヤー










1935年、イングランド生まれ。元ボディビルダーで重量挙げのイギリス・チャンピオンでもあるとか。


198センチという長身と筋骨隆々たる肉体を生かし、俳優を志しますが、身体の大きな人の常といいますか、悪役かホラー映画のモンスター役ばかりをやらされていました。


中でもイギリスの映画制作会社「ハマー・プロ」制作のホラー映画にはよく出演していました。ハマー・プロといえば、クリストファー・リーやピーター・カッシング、テレンス・スタンプなどのホラー映画スターを生み出した会社でありますが、デヴィッドは特別演技が上手いわけでもなく、ルックスが良いわけでもなかったためか、ここでもスターにはなれませんでした。



しかし、そんなハマー・プロ制作の映画の大ファンだった若き映画監督により、デヴィッドはその生涯最高にして最大の当たり役を与えられることになるのです。

監督の名はジョージ・ルーカス。作品名は『スター・ウォーズ』


そしてデヴィッドが与えられた役、それが



「ダースベイダー」でした。









ただ、デヴィッドは訛の強い英語をしゃべるため、ジョージ・ルーカスはこれが気に入らず、声をジェームズ・アール・ジョーンズに吹き替えさせます。役者としての意識の高いデヴィッドはこれがかなりの不服だったらしい。

それとデヴィッドは殺陣が下手で、撮影用のライトセイバーを何本も折ってしまいます。そのため殺陣のシーンは殺陣師兼スタントマンの方が吹き替えることになり、こうしたことがジョージ・ルーカスのデヴィッドに対する印象を悪くしてしまった部分があったようです。


デヴィッドとしてはベイダーを「演じている」のは自分だという意識が強い。しかし監督およびスタッフ・サイドとしては、ただダースベイダーの服を「着ているだけ」の人と認識していたようですね。


スター・ウォーズ第1作が大ヒットを記録し、続編の制作が決定。そんなとき、ちょっとしたゴタゴタが起きてしまいます。


あるインタビューでデビッドが「ルークとダースベイダーが親子だったら面白いね」と発言したのです。


この時点ではまだ、脚本も出来上がっておらず、デヴィッドは当然ながら続編のストーリーなど知る由もないのですが、機密保持にピリピリしていた制作サイドとしては、こんな不用意な発言をされては困るわけです。

勿論本人に悪気はありません。しかし、この出来事が益々デヴィッドの印象を悪いものにしてしまう。




第3作『ジェダイの帰還』では、デヴィッドは冷たい扱いを受けたと述べています。ダースベイダーのシーンの大半を、自分ではなくスタントマンが演じることが多く、デヴィッドは放って置かれることが多かったようです。極めつけはダースベイダーがアナキン・スカイウォーカーとしての素顔を晒すシーンで、アナキンを演じたのはデヴィッドではありませんでした。


制作サイドは、デヴィッドにこのシーンの演技を求めるのは無理だと判断したようです。そこでセバスチャン・ショウという俳優にアナキンを演じさせました。


このシーンはデヴィッドに内緒で撮影され、デヴィッドがこのシーンを初めて観たのは映画館だったそうです。ベイダーを「演じて」いるのは自分だと自負していたデヴィッドにとって、これは大変なショックであり、屈辱でした。


以来、デヴィッドとジョージ・ルーカスとの間の確執は年々深いものとなっていく。そして2010年に至り、とうとうデヴィッドは、スター・ウォーズ関連の全ての公式イベントに出席を拒否されてしまいます。


いやはや……。







スター・ウォーズで人生最高の名声を得、そのスター・ウォーズの制作サイドから拒否されてしまった男、デヴィッド・プラウズ。



なんと表現したらよいものか……。



ただこれだけはハッキリと云えます。世界中のスター・ウォーズ・ファンにとって、ダースベイダーと云えばデヴィッド・プラウズ。

デヴィッド・プラウズといえばダースベイダー。


これ以外にはないということを。




ゴジラ・ファンにとって、ゴジラ役者と云えば永遠に中島春雄さんであるように、スター・ウォーズ・ファンにとってダースベイダー俳優は永遠にデヴィッド・プラウズなのです。



ジョージ・ルーカスや制作サイドがどのように扱おうとも、世界中のスター・ウォーズ・ファンは、永遠にデヴィッド、あなたの味方です。



ダースベイダーの声を担当した俳優ジェームズ・アール・ジョーンズも、ダースベイダーはデヴィッド・プラウズのものであり、私は声を充てただけだと発言しています。役者は役者の気持ちが分かるといいますか、さすがですね。



デヴィッド・プラウズ。なんとも不可思議な人生を送った方ではあります。しかしとても幸せな方であるとも云えます。




ダースベイダーという、史上最大最強の悪役に巡り合い。世界中のファンから愛されています。


制作サイドがどの様な扱いをしようとも、ファンは知っています。デヴィッド・プラウズ、あなたこそが


ダースベイダーであると。