荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ランウェイ☆ビート』 大谷健太郎

2011-04-09 07:57:52 | 映画

 『NANA』(2005)と『ソラニン』(2010)は共に、宮崎あおい出演作の中では、申し訳ないけれど惨憺たる出来としか思えなかったが、現在松竹系で公開中の『ランウェイ☆ビート』では、なんと前者の監督である大谷健太郎、後者の脚本家である高橋泉が組んでいる。「毒をもって毒を制す」「盗人の番人には盗人を使え」のたぐいと勘ぐるのは、辛辣に過ぎるか。

 東京・月島にある廃校寸前の高校を舞台に、ファッション・ショーの開催に情熱を燃やす生徒たちの青春映画で、みずからの凡庸さを自覚したヒロインが、才能に恵まれた親友の躍進を陰から応援するという点では、『NANA』の宮崎あおいのポジショニングが、桜庭ななみに引き継がれている。祭りの熱狂から覚めた未来の位置からヒロインの回想形式で語られるという点も、『NANA』の焼き直しである。

 大谷健太郎という人は、もともと自主製作時代から、室内の淡々とした日常描写を得意とする人であったと記憶しているのに、なぜか柄にもないモブ・シーンを撮らされる羽目に陥って、墓穴を掘っている気がする。『NANA』のモブ・シーンはあり得ないひどさだったが、今回も悪戦苦闘といったところ。円陣のアルドリッチ的な仰角ショットは、可愛らしい。

 また、月島やお隣の佃島のロケーションについては、これを生かそうとして、あまり生かしきれていない。そもそも月島に学校があったとして、生徒不足で泣く泣く廃校などという設定は、認識としては古すぎる紋切型であろう(これは原作者の責任だけではないはずだ)。都心部の過疎化が叫ばれたのは、10年以上も昔までの話である。これは以前にも指摘したことだが、月島を含む中央区は東京23区中、人口増加率の最も高い区のひとつとなっている。住宅の供給は急ピッチで、小中学校については、かえって教室が足りなくなってさえいるのが現状である。

 

3月19日(土)より、新宿ピカデリーほか全国で上映中

http://www.runbea.jp/



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3 コメント

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Unknown (じょーたろ)
2011-04-09 11:55:33
大谷監督、初期作品が好きでした。どことなくフランス映画のようで。

今年は「ジーン・ワルツ」もありましたが、2本とも批評、興行的にも厳しいようですね。

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Unknown (中洲居士)
2011-04-10 08:35:17
じょーたろさん、こんにちは。

『ランウェイ☆ビート』、若い出演陣はみながんばっていましたが、どうも演出にも脚本にもキレがないんです。福本淳の撮影は悪くはないですが、全体的に「当たり前」のものを並べ立てただけという印象が色濃い作品です。友人から、論じるべき公開作は他にたくさんあるだろう、と叱責するメールももらってしまいました。
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Unknown (中洲居士)
2011-04-10 08:46:57
注釈

宮崎あおいさんの「崎」の字は、「山偏に大可」ではなく、正確には「山偏に立可」となりますが、gooブログの投稿エディタ機能の改悪によって、どうしても文字化けしてしまいます。そこで暫定的に「山偏に大可」の「崎」で代用いたしました。ご本人、関係者の方々に、この場を借りてお詫びすると共にご理解を請う次第です。
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