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荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『妻と女の間』 豊田四郎+市川崑共同監督

2007-10-09 06:13:00 | 映画
 忙しさにかまけ、『天然コケッコー』を9月19日に見に行って以来、かれこれ3週間も劇場に足を運んでいない。いくらなんでもこれはひどい。これでは、一応かかげている映画評論家の看板なんぞ、いっそ降ろしてしまうべきだろう。
 とはいえ、TV、DVD等では順調に夜な夜な(というより早朝)見ている。特にe2 by スカパー!のチャンネルが9月からハイビジョン化され恩恵に浴したが、まあ単に自宅でのお楽しみの域を出る体験ではない。

 週末、そのスカパー!で珍品を見た。豊田四郎+市川崑共同監督の『妻と女の間』(1976)。名匠二人が揃いも揃って、いったい何をしているのだろう? 豊田に至ってはこれが遺作になってしまったではないか。
 簡単に言えば、三田佳子主演、瀬戸内晴美(現・寂聴)原作で作られた、単なる年増女のよろめきメロドラマであるが、妹の夫を演じる田村高広のコミカルな演技も相まって、そこはかとなくうらぶれたユーモアがピリッと利いている。谷崎潤一郎『細雪』や、向田邦子『阿修羅の如く』といった同一系列の物語の域には遠く及ばないレベルではあるが、まったく憎めない作品となっている。

 また、この『妻と女の間』が公開されたのが1976年1月で、『犬神家の一族』がブームのうちに公開されたのが同年10月らしい。正直言って、市川崑は大映を辞めてからまったくつまらなくなったと考え(この点において木全公彦に賛同する)、特に金田一耕助モノに手を出して以後の市川崑はポテンシャルがガクッと落ちた(市川崑ファンの方、ほんとすみません)と捉えている。本作は、豊田の遺作としてだけでなく、市川崑にとっても素晴らしかったキャリア前半の、真の挽歌となった作品としても見ることができるのかもしれない。


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