ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ここは精神病棟か!?

2014-12-18 00:14:02 | 日記
きのうの夜勤はというと…

妄想壁のあるミヨの部屋の前まで行ったら
車椅子で玄関のそばまで来たらしい彼女の激しい声がする。

「そこにいるのは誰だ! 名前を言ってみろ。
ああ、そう、言葉がわからないんだな。
ということはオマエは日本人じゃないんだろう。
なんて図々しいヤツだ、さあ、出て来い!!!」

ああ、今夜は荒れてるな。近づくのはやめておこう。
午後11時半。
本来なら排泄介助の時間だが、私はスルーすることにした。

それから30分。
そろそろ落ち着いたころかしらと、再びミヨの部屋へ。
ドアを開けると、テレビの前の定位置で
彼女はいつものように上品で穏やかな笑みを浮かべながら私を迎えてくれた。

しかし、「お邪魔します」と入ろうとしたら
玄関が水浸しである。
実は先日も同僚が部屋に入ろうとしたら
スイッチの入ったミヨがいきなり桶の水を浴びせかけてきたという。

おそらくそれと同じ、ミヨの水攻撃。
どうやら彼女は、深夜に見えない敵と闘っているらしい。
危ない、危ない。
闘いのさなかに入室していたら
私もバシャ~ッと水を浴びているところだった。

気を取り直して、深夜2時半。
事務所でパソコンに向かっていると
トントンとドアをノックする音が。

こ、こんな時間にナニ!?

恐る恐る開けてみると
立っていたのは先週入居したばかりの女性、
80代で認知症の進んだKさんである。

「私、なんでここへ連れてこられたのかわからないの。
家族にその理由を聞きたくても、誰も電話に出てくれないの。
私、捨てられちゃったみたい。
もう悲しくて寂しくて、発狂しそう。
心臓がドキドキして眠れないの。お願い、話を聞いて」

もちろんきちんとした説明・同意のもとに入居されており
家族にだまされて“投獄”されたわけではない。
しかし何度説明しても、そのたびに納得されても
10分後には“見捨てられた”と泣くのである。

ああ、仕事が、仕事が~!!!
しかし忙しいというこちらの状況を理解してもらえるはずもなく
傾聴すること30分。
不安な心をなんとかしてさしあげたいが
こっちは18時間ほとんど休むことのできない夜勤。
勘弁してくれ~と、泣きたくなる。

そして夜勤明け。
泥のように重い体を引きずって、朝食のお世話である。
事務所と食堂とそれぞれのお部屋をめぐって走り回っていると
あっちゃ~、つかまっちゃった!
かわいそうな私をつかまえたのは
物取られ妄想のA子さんだ。

「あ、あなた、ちょっといいかしら?」
この台詞で始まる彼女の妄想劇場。
はあい、今日は何を盗まれましたか?

「今日は1500万円盗られました。
犯人はあの頭の薄い方(おそらくウチの男性職員)です。
もう、今日という今日は警察に訴えます」

そうですか、そうですか。
あらまあ、それは大変なことになりましたね。

いい加減としか言いようのない返事をしつつ
そろりそろりと後退。
次は、うつ状態で引きこもっているIさんを
近所の美容院までお連れしなければならない。

・・・・・・
ああ、ここは精神病棟か。





鏡は曇っていたほうがいい。

2014-12-16 03:10:09 | 日記
ああ、いよいよ年末。

休みだったおっさんが、今日は拭き掃除をしたと胸を張る。
どこを?と問うまでもなく、わかった。

遅番の仕事から帰った午後9時半。
食事よりビールより、まずは半身浴だ!と足を向けた脱衣所で
私は愕然とする。
姿見に映った己の顔。
ババアじゃないか!!!?

おっさん、曇っていた姿見を拭いたんだね。
ああ、ありがとう!

っていゆーか、この大バカヤロー!!!

曇った鏡には映らなかった老いた顔が
キレイになった鏡にリアルに映ってんじゃな~い!?

私って、こんなに老いてたの?
私って、こんなに醜女だったの?
いやだ~~~。

50過ぎたら、家の鏡は曇っていていい。
2014年。私の教訓である。

陶器の湯たんぽ

2014-12-11 01:46:19 | 日記
湯たんぽ、買おうかなあ。

そう思ってから1年が過ぎた。

例年を上回る寒さが続き、その思いが再燃。
やっぱ、湯たんぽを買おう!

エアコンはあるが
アレを使うことによって生じる空気の乾燥が
鼻と喉を痛めつける。肌をパサパサにする。
どうにも苦手だ。

ネットで検索してみると
近年のエコブームに乗ってか、いろいろな湯たんぽがあった。

安いものほど慎重になる性格ゆえ
吟味に時間をかけること、2週間。

その結果、選んだのは美濃焼きの湯たんぽである。

さて、今日それが届いた。
今、赤い陶器の湯たんぽをお腹に抱えてパソコンと向き合っている。

ぬくぬく、ぬくぬく。
この重量感のある優しい温もりが、なんともいえない。
深夜2時を過ぎているが、暖房要らずの夜である。

ぬくぬく、ぬくぬく。
ああ、気持ちまでほどけていく~。
今地震があったら、私は絶対、これを脇に抱えて避難するだろう。



オンタイ

2014-12-10 00:46:07 | 日記
93歳のHさん(女性)は
夕食時に介助によって食堂に出てくる以外、寝たきりの生活。
口だけはお達者で驚くほどウィットに富んだジョークを飛ばすが
自力で起き上がったり歩いたりする体力はない。

そのHさんが、近頃ますます弱ってきた。
2週間ほど前、呼びかけにもまったく反応しなくなって
急遽ドクターに往診を依頼したところ
「一時的な脳虚血」とのこと。
いますぐ危ういということではないらしく
その後まもなく元に戻ったので安心していたのだが…

おとといの私の夜勤中に、またしても同じ状態に陥った。

Hさん、Hさ~ん!
どんなに呼びかけても、肩をたたいても
目を開けず、言葉も発しない。
呼吸は規則正しく脈も正常だったので
この間と同じ状態なのだろうと慌てることなく
家族に報告の電話だけして様子を見ることにした。

その後2回部屋を訪ねたが反応はなく
いつまでこの状態が続くのかといささか不安になる。

そして夜間3回目の訪室。
恐る恐るベッドに近づき、顔を覗き込む。
すると
「あ、オンタイ…」
寝ぼけた感じの頼りない口調だが、それでも
喋った~!
帰ってきた~!
バンザ~イ!!!

実はこの「オンタイ」(御大)というのは
彼女だけが使う私のニックネームである。
説明するまでもないだろうが、“御大”とは“御大将”の略である。
何ゆえ私をそう呼ぶのか。
一度たずねたら「だって、御大は御大だからよ」とのこと。
弱った老婆を子分扱いしていると誤解されそうだが
決してそういうことではない。
私はまだ、そこまで腐ってはいない。

とにもかくにも
彼女は一時的な脳虚血状態から生還し
私の顔を見て開口一番、「オンタイ」と言った。
そしてにこっと微笑んだ。

このときの「オンタイ」ほど、嬉しく耳に響いたことはない。


トボケこそ、老後の生きる道

2014-12-07 02:07:51 | 日記
愛しのオトボケ爺・M三郎さん。
彼の顔が、なんだかヘンだ。
なんか、色が薄い。

援助のとき、よ~く見てみたら
その理由がわかった。

眉がない!!!

M三郎さん、眉、どうしたの?
聞いてみたら
「ヤギみたいに長くなっちゃったから
髭剃りで剃っちゃったんだ~。ヘン?」

い、いやぁ、ヘンじゃないけど…ぷふっ。
まじめな問いかけに笑いをかみ殺したが
どう見たってヘンである。
まるで出来損ないの暴走族みたいである。

しかし、ね。
鼻毛が伸び放題の人がいる。
耳毛がフサフサの人もいる。
鼻の下の産毛が黒々と成長した
オジイサンみたいなオバアサンも少なくない。

そんな中にあって、眉毛を気にするM三郎さん。
アナタはなんと素敵なのだろう!

毎度毎度の失禁で
オムツ交換・衣服の交換・洗濯物の山…
これにかなりの時間を割かれている私たちだが
アナタの愛嬌が
すべてを帳消しにしているのだ。

色惚け爺
うんちく爺
わがまま爺
たくさんの爺がいるけれど
愛されながら老後を送りたければ
トボケ通すに限るのである。