ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

それはアナタの奥様です。

2014-12-03 22:29:04 | 日記
夜勤の午前3時。
ある方の排泄介助を終えて廊下を歩いていたら
はるか先の暗闇から、こちらに向かってくる白い何かが。

一瞬声を上げそうになるほど驚いたが
よく見れば、人である。
さらによく見れば、白っぽいパジャマ姿のK子さん
物取られ妄想の激しいK子さんである。

しかし半年前の骨折以来歩行もままならないはずなのに
愛用のシルバーカーも、部屋で使っている杖も持たず
まるで茶運び人形のようにトコトコ、トコトコと
しかも無表情で、こちらに向かって歩いている。

け、け、K子さん?
・・・K子、さん?

1メートルくらいの至近距離になって
ようやく私の呼びかけに反応。

はっと我に返った彼女は
「今、娘を見送りに行ってきたところなんです」と言って
義歯を外した口元にゾクッとするような笑みを浮かべたのだった。

このところ認知症が進んで物取られ妄想がいっそう激しくなり
「なんでウチばかりがドロボウに狙われるんでしょう」と
ヒステリックに泣くことが多くなったK子さん。
そこへいよいよ徘徊まで始まってしまったのだろうか。

「オバケが出たかと思ったよ~。怖かったわぁ」
夜勤が開けて、出勤してきた同僚にさっそく話をする。
これからちょっと様子見が必要だね、ということになった。

そしてその日の晩。
夜勤を担当する別の同僚からメールが。
「いまHさんの排泄介助に行ったら
最近、夜中になると、白い服を着たおばあさんがやってくるんだ。
怖くて眠れないんだって仰っていました。
何かが見えちゃったんでしょうかね!?」

ははは、心配は無用だ。
白いおばあさんの正体を、私は知っている。

それはK子さん。
怖くて眠れないと言っているHさんの奥様、K子さんに相違ない。

白いパジャマを着て夜中に徘徊するK子さんと
それをオバケだと勘違いして怯えているらしいHさん。

当高齢者住宅の名物夫婦である。