夜勤の午前3時。
ある方の排泄介助を終えて廊下を歩いていたら
はるか先の暗闇から、こちらに向かってくる白い何かが。
一瞬声を上げそうになるほど驚いたが
よく見れば、人である。
さらによく見れば、白っぽいパジャマ姿のK子さん
物取られ妄想の激しいK子さんである。
しかし半年前の骨折以来歩行もままならないはずなのに
愛用のシルバーカーも、部屋で使っている杖も持たず
まるで茶運び人形のようにトコトコ、トコトコと
しかも無表情で、こちらに向かって歩いている。
け、け、K子さん?
・・・K子、さん?
1メートルくらいの至近距離になって
ようやく私の呼びかけに反応。
はっと我に返った彼女は
「今、娘を見送りに行ってきたところなんです」と言って
義歯を外した口元にゾクッとするような笑みを浮かべたのだった。
このところ認知症が進んで物取られ妄想がいっそう激しくなり
「なんでウチばかりがドロボウに狙われるんでしょう」と
ヒステリックに泣くことが多くなったK子さん。
そこへいよいよ徘徊まで始まってしまったのだろうか。
「オバケが出たかと思ったよ~。怖かったわぁ」
夜勤が開けて、出勤してきた同僚にさっそく話をする。
これからちょっと様子見が必要だね、ということになった。
そしてその日の晩。
夜勤を担当する別の同僚からメールが。
「いまHさんの排泄介助に行ったら
最近、夜中になると、白い服を着たおばあさんがやってくるんだ。
怖くて眠れないんだって仰っていました。
何かが見えちゃったんでしょうかね!?」
ははは、心配は無用だ。
白いおばあさんの正体を、私は知っている。
それはK子さん。
怖くて眠れないと言っているHさんの奥様、K子さんに相違ない。
白いパジャマを着て夜中に徘徊するK子さんと
それをオバケだと勘違いして怯えているらしいHさん。
当高齢者住宅の名物夫婦である。
ある方の排泄介助を終えて廊下を歩いていたら
はるか先の暗闇から、こちらに向かってくる白い何かが。
一瞬声を上げそうになるほど驚いたが
よく見れば、人である。
さらによく見れば、白っぽいパジャマ姿のK子さん
物取られ妄想の激しいK子さんである。
しかし半年前の骨折以来歩行もままならないはずなのに
愛用のシルバーカーも、部屋で使っている杖も持たず
まるで茶運び人形のようにトコトコ、トコトコと
しかも無表情で、こちらに向かって歩いている。
け、け、K子さん?
・・・K子、さん?
1メートルくらいの至近距離になって
ようやく私の呼びかけに反応。
はっと我に返った彼女は
「今、娘を見送りに行ってきたところなんです」と言って
義歯を外した口元にゾクッとするような笑みを浮かべたのだった。
このところ認知症が進んで物取られ妄想がいっそう激しくなり
「なんでウチばかりがドロボウに狙われるんでしょう」と
ヒステリックに泣くことが多くなったK子さん。
そこへいよいよ徘徊まで始まってしまったのだろうか。
「オバケが出たかと思ったよ~。怖かったわぁ」
夜勤が開けて、出勤してきた同僚にさっそく話をする。
これからちょっと様子見が必要だね、ということになった。
そしてその日の晩。
夜勤を担当する別の同僚からメールが。
「いまHさんの排泄介助に行ったら
最近、夜中になると、白い服を着たおばあさんがやってくるんだ。
怖くて眠れないんだって仰っていました。
何かが見えちゃったんでしょうかね!?」
ははは、心配は無用だ。
白いおばあさんの正体を、私は知っている。
それはK子さん。
怖くて眠れないと言っているHさんの奥様、K子さんに相違ない。
白いパジャマを着て夜中に徘徊するK子さんと
それをオバケだと勘違いして怯えているらしいHさん。
当高齢者住宅の名物夫婦である。