ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

トンチンカン

2017-10-14 00:37:28 | 日記
看取りの時期を迎えようとしている方がいる。
小田切さん。
若干69歳の男性だ。

末期の腎臓障害、脳にまで転移しているかもしれない癌。
医師から余命3日と告げられて、10日が過ぎた。

ご飯はひと口かふた口しか食べられず
下半身は浮腫みによって肥大。
脳への癌転移のせいか、話も支離滅裂だ。

それが、おとといの昼
信じられないことにご飯を残さず平らげた。
そして、お世話しているヘルパーのMちゃんに言った。
「次はいつ来るの? 3日後?
そう、じゃあ、もう会えないかもしれないね」
援助を終えてMちゃんが帰ろうとすると
満面の笑みを浮かべてバイバ~イと大きく手を振ったという。
もはや、手そ上げる力も残っていないはずなのに…

その話を聞いた誰もが
ああ、いよいよかと胸を詰まらせる。
やさしく謙虚な人だったから
数ヶ月という短いお付き合いながらも
みんな、悲しい。

一夜明けた。
きのうの夜勤を終えた職員Gさんから
カンファレンスで報告が入る。

ええっと、ですね
昨夜、小田切様からコールがあってお部屋に伺ったところ
「僕はもう去ります」と仰っていました。
だから私は
「せっかくここでの暮らしに慣れてきたんですから
他に行くなんて考えないでください」
そうお伝えしておきました。

あれれれれ?
まさかGさん、小田切様がお引越しでもすると思ってる?
余命宣告された人が“去る”という言葉を使ったら
それはお引越しとは違う意味ではないの?

実はこのGさん
何を言い出すか予測不可能なほど頓珍漢な
私より年長の女性職員である。
仕事熱心でイイ人で
体力を惜しまずに働いているのだが
どうも、どうもピントがずれていて
利用者である高齢者以上に対応困難なのである。

悲しいはずの小田切さんの看取りが
なんだか笑い話になってしまった。

そう考えたら
Gさんの存在価値は大きいのかもしれない。

ありがとう、Gさん。
加齢や病気や死と向き合っているこの職場で
アナタの頓珍漢は、きっと、意味があるのでしょう。