おふくろ心、2017

友人のところに、息子が一家で数ヶ月居候するという。
近くに家を建てることになったので
それまで置いてほしい、ということらしい。

面倒見のいい友人だが
この数年の間に両親を相次いで看取り
やっと夫婦二人の静かな暮らしに戻ったばかり。
まだフリーでグラフィックデザインの仕事もしているから
本当なら断りたいところだ。

しかし両親が果物農家をしてきた彼女の家も土地も
都会では考えられないほど広く
使っていない部屋もたくさんある。

息子としては、妻と１歳の子どもを連れて帰ってきたところで
「部屋なんかあるじゃん！」といったところだろう。

そして先週からはじまった息子家族との同居。
嫁は子どもを姑である彼女に預けてアルバイトをすることにしたという。

ジョーダンじゃない！
爆発する彼女。

さっそくケンカだ。

そのとき息子は言ったという。
「息子が帰ってきて、嬉しくないのかよ！？
しかも、孫までいるんだぞ。
普通の母親だったら、喜ぶとこじゃないのか！？」

彼女の不満を聞いて
私までもがジョーダンじゃねー！と叫びたくなる。

息子が帰ってきたら母親は手放しで喜ぶ？
おいおい、勘違いしなさんな。
そりゃ息子も娘もかわいいが
もう子育ては終えたんだ、勘弁してくれ！！！

もう一人、職場の友人の話。
彼女のところには、地方勤務となった息子がたまに帰ってくる。
息子の元気な顔を見て一応は安心する彼女だが
二日目にはこう言うという。
「ねえ、いつまでいるの？　いつ帰るの？」

ここでもその息子が言うらしい。
「なんで？　帰ってほしいわけ？
息子が帰ってきたんだから、フツー喜ぶでしょ、母親は」

ああ、息子たちはとんでもない思い違いをしている。

もちろん、息子の帰りを待ち望み
テーブルに好物を並べて
「いつまでいられるの？」と聞く母親もいるだろう。
ひと昔前なら、それがフツーだったかもしれない。

でもこの現代、50代、60代の母親の多くが仕事をしている。
忙しいのだ。
独立した息子のために割く時間、使う体力は
日数にしたら１日か2日がいいところなのだ。

それを
「息子が帰ってきたら、母親はフツー喜ぶでしょ？」
とは何事だ！

夫元気で留守がいい、という。
息子だってオンナジだ。
息子、元気で独立がいい！

あ、なんだか佐藤愛子みたいになってきた。
頭を冷やして寝るとしよう。