ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

夜間の妄想劇場

2014-06-05 01:19:25 | 日記
最近ツライ夜勤に花を添えてくれているのが
M子さん劇場だ。

M子さんは90歳。
美人で上品で、働く女性の先駆者的な人だが
ついに結婚もせぬままその歳を迎えてしまい
一人娘だったがゆえに身内すらいない境遇である。

そのM子さん、このところ妄想が激しい。

楽団が部屋にやってきて、演奏している。
旅芸人たちがやってきて、うるさくて仕方ない。
自分の部屋で許可なく映画の撮影をしている。失礼だわ!

そして私が夜勤だった昨日の午前4時。
「テレビを消してくださる?」とM子さんからコール。
テレビをつけっ放しでないと寂しくて眠れないのだが
夜中にふと目を覚まし、その音声がうるさくなったらしい。

お部屋を訪問してテレビを消す。
そして幕を開けた、施設名物・M子さん劇場。

「さっきⅠさん(彼女と同じ名字)というオバアサンがきたの。
私の親戚だって言うんだけど、知らない人なの。
ナンデ来たのかしら。もうイヤになっちゃう。
帰ってほしいんだけど、全然帰ってくれないのよね」

ひたすら傾聴する私の目を見つめ
数秒間の沈黙のあと
彼女は別人格が降りてきたかのように不敵な薄笑いを浮かべて言った。

「あれは死なないね」

な、なに?
背筋をツーッと汗が伝う。

「あれは死なないね。
だって、内臓を全部取り替えて
不老不死の手術をしたらしいから・・・」

妄想とはわかっているが、恐い。
だけど、面白い。

認知症による妄想壁の脳メカニズムとは
いったどうなっているんだろう。