ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

衰えの中に咲くヒーロー

2014-04-20 00:25:06 | 日記
悪くなる一方の人、ばかりだ。

12月に入居されたKさんはウチのシステムについて
毎日ガミガミと文句を言うウルサ方だったのに
近頃すっかり子ども返りしてしまい
「おかあちゃん」と「おしっこ~」しか言わない。

食堂でお友だちと食事をするのが楽しみだったMさん(女性)は
先月から引きこもり状態が続き
食事は居室配膳、背中はどんどんま~るくなって
一日のほとんどをベッドで天井を眺めて過ごしている。

慣れない環境が認知症を進ませる要因の一つと学んだが
本当にその通りだ。

しかしそんな中に燦然と輝くヒーローが。
90歳のOさん(男性)は今年に入ってからのご入居。
一人娘さんを亡くされたショックで
脳と身体に障害が生まれ
ウチに転居される前の病院ではトイレでの排泄も
職員が二人がかりで行っていた。
奥様は言う。
「先生から、そろそろお別れの覚悟をなさっていたほうがいいでしょうって
言われていたんですよ」
ところが、ウチにいらしてからというものの
俄然、生きる意欲を持ち始めたらしく
車椅子から歩行器に、歩行器から杖にと3ヶ月で移動手段を変え
今では何と、杖さえも持たずに一人で食堂までの廊下を歩いている。

「どうしても歩けるようになりたかったから」と、Oさん。
その一念から
ベッド上でも自主的にリハビリを続け
奥様が買ってくる脳トレの本をめくり
ついに自主歩行にまで至ったのである。

Oさんと長い廊下をゆっくり歩きながら
「すごいですね。人間、諦めちゃいけませんね」
そうお声を掛けたら
悠然と胸を張りお答えになった。
「そうです。人間、諦めちゃいけない」。

彼の歩く姿を羨望の目で見つめながら
「自分の足で歩けるようになりたい」と訴えてくる車椅子の方が
少しずつ増えている。