
オオダオ(芝平峠)を過ぎて幾つかの曲がり道を過ぎた谷の中に、毎年指標木にしている山桜の木がある。今まさにそれが満開の時を迎えていて、芽吹きの遅い落葉松の薄暗い谷の中で、一際目立って見えていた。
法華道を語るには欠かせない故北原のお師匠が、若いころに炭焼きをしたと聞かされた場所もこの谷の中にあったはずだ。もっともご本人は「オレは炭焼きは上手くなかった」と語っていた。入笠をこよなく愛した師の思い出は、どんなことも懐かしい。
4月22日 大型の囲い罠の点検をする。意外なことに、かなりの頭数の鹿が出入りして誘引用の塩を漁っていたことが分かる。罠を仕掛ける。
4月23日 朝、上に来て見ると7頭の鹿が囲い罠の中いるのを確認。いつもの鉄砲撃ちらに連絡をする。1時間半ばかりして4名が上がってきて3名が罠の中に入る。しばらくするも一向に銃声がしない。
やがて3名が手ぶらで引き上げてくる。なんと鹿は仕掛けに接触せず、ゲートが落ちていなかったのだと。人の気配を察知して、当然その前に鹿たちは自分らが入り込んだゲートより遁走を決める。
捕獲したとばかり思い、うっかりゲートを確認しなかった。気付いていれば打つ手はあった。ゲートが何かに引っ掛かって落ちず、鹿を逃がしたことならある。しかし、塩で誘引された鹿が仕掛けにも触れずひとしきら罠の中で遊んで、そしてまた森に帰っていった例は17年間で初めてのことだ。
きょうから上に泊まることにした。(4月24日記)
眩い朝の光が窓から射し込んでくる。午前6時半、牧の朝だ。昨夜は夜中に一度も目が覚めずよく眠れた。外の気温は零下まで落ちたようだが、この時季こういうことは珍しいことではない。そのため、外も内も水道の水は流しっぱなしにしてある。
外へ出てみた。曇り空だと思っていたらよく晴れていて、雲ひとつない早春の透明感を感じさせる朝だ。忙しく鳴く鳥の声もすれば、まだ未熟なウグイスの声もして、3,4種類の鳥の声がよく聞こえてくる。
これからは野生に還って、お前たちと一緒に自然の中で暮らす。
本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
本日はこの辺で。