牛にとって、頭の角(つの)がどれほど大事で、役にたっているのかは分からない。闘う、というのか、何事かを主張したり、威嚇したりする場合に、角を突き合わせている場面を目にすることはあるが、その結果流血の惨事に至ったというようなところは見たこともないし、聞いたこともない。「除角」と言って、角を取られてしまった牛も多いから、あってもなくてもよいのかも知れない。
そこへいくと、尻尾は重要である。充分に役に立っている、どころかないと困るだろう。放牧地ではブヨやアブがひっきりなしに近付いてくるから、それを追い払うのが尻尾の重要な役目である。だから絶えず、尻尾は動いている。時折、尻尾だけでは足りず、後ろ足まで使っているところを見ることもあるが、物言わぬ牛の心中を思うと、その滑稽な姿を笑ってばかりもいられない。
以前、尻尾が途中で切れた牛が来たことがあった。それでも期間中を何事もなく過ごして山を下りていったが、恐らくは相当のストレスが続いたと思う。障害を持った牛、と言ってもよいくらいだが、きっと畜舎にいたときに少しづつ耐性をつけてから来たのだろう。
こういうことを書くのは偽善者的だが、家畜は人間のためだけに生かされている。そういう運命だと言ってしまえばそれまでっだが、その一生におよそ幸福などはない。動物愛護の対象でもない。最後には食べられてしまうとしても、大洋を自由に泳ぐクジラの方が、比較にならないほど恵まれていると思う。
テレビなどで女優がしたり顔に、オックステイルを使ったスープがどうだとか、子牛のロインがああだとか・・・、結局みんな代謝だから、淑女の振る舞いとしては美しいと思わない。
8月につきましては、キャンプの場合も、できるだけ予約をお願い致します。キャンプ場及び山小屋の営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」と「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。