入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「秋」 (14)

2015年09月06日 | 牧場その日その時


  昨日青柳駅から登ってきたという若い登山者は、今朝来たらもう出発したあとだった。昨夜は炉のすぐそばにツエルトを張り、火を燃やし、いい雰囲気でウイスキーらしきをちびちびと飲んでいた。「穴場ですね」などとお世辞も言ってくれたが、一人しみじみと山の夜を過ごせば、孤独の甘味も充分味わったことだろう。青柳からは約3時間、もっとこのコースを歩く登山者が増えてほしいものだ。
 現在伊那側から車では、千代田湖経由だと道路工事のためう回路を進むか、または152号線を長藤から山室川に沿って大ダオ(芝平峠)に出て来るしかない。とにかく行政の一方的な規制や不便な工事ばかりで・・・、ならば法華道や青柳駅から歩いてきてはどうだろうか。それが正しい入笠山の登り方だという気がする。もちろん、便利な交通機関では味わえない秋の山の気や、しめやかさも知ることができるだろう。

 苦労して立ち上げたばかりの第3牧区の電気牧柵がおかしい。半月近くかけた現場にまた戻って不良個所を探し出すのも気の重い話だが、放って置くわけにもいかない。今日もまた深い霧で、その中を歩いていくと、森の中ではキノコがまるで身を投げ出すかのように採ってくれとせがむ。しかし、そんな誘惑には負けていられない。幾か所か不具合を見付けたが、その程度のことでと半信半疑で戻ってきた。で、測定すればなんと、電圧計には6800の数字が表示された。この時の安堵感だが、なかなか電話の通じなかった相手と、ようやく連絡が取れたような感じ、と言っても通ずるかどうか。


     白い電牧の支柱は森を抜けて


     草地を上へ上へと

 鹿が罠に掛かっている。小鹿だ。本来なら捕獲した昨日のうちに殺処分をして埋却するのだが、1日延ばした。そのことが鹿にとって良いことだったかどうかは分からない。が、敢えてそうした。一夜雨の森の中で、恐怖と苦痛に苦しみながら鹿は分かっていただろうか、突然身に起きた不幸の結末を。

 今日は昼飯を食べるのを忘れていた。この狂ってしまった天気もそろそろ終わって、高い秋の空を眺めてみたい。
 入笠牧場の宿泊施設及びキャンプ場の営業に関しましてはカテゴリー別の「H27年の営業」を、また天体観測に関心のある方は「入笠牧場からの星空」をご覧ください。
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