スウェーデン音楽留学サバイバル日記 ~ニッケルハルパ(nyckelharpa)を学ぶ

スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを学ぶため留学。日々の生活を様々な視点からレポートします。

ゴールド・ブラウンの秘密

2007-05-13 23:02:16 | 楽器製作
昨日の同窓会は朝の4時過ぎまで続いていたらしい。
休暇中なら無茶したかもしれないけど、今日もエスビョン宅へ行きたかったので私は昨夜は2時で帰った。
さて、という訳で今日も自転車にまたがった。
3回目の塗装の後、紙やすりなどで表面を整えたら再び塗装します。

今日は、もう一台作製中の楽器の塗装もやっていたので、再び一から見れて面白かった。

写真右
は塗装前のもの。
がこれから2度目を控えているもの。
中央は私の。均一な表面でなく縦の木目が部分的に鮮やかに浮き上がっているのがわかるでしょうか。
ちなみにサイドと底板は赤みのある濃いゴールド・ブラウン。

サイドや底板、表板も含めて色はいい具合に均一でない。
この色のバラつきで濃く見える所は、塗装前は逆に木の白い箇所だったそう。
塗装が薄いところは、塗装前は濃い目の色だったそう。
白っぽい部分は夏の間に成長し柔らかい(塗装を吸収する)。
濃い部分は、逆で固くあまり塗装を吸わない。
生きた木目が、本当に色鮮やかに浮き上がっている。

最初に塗った塗料の染み具合で、木目がどう浮き上がってくるかが異なる。
この2度目の塗装をするまで、どんな木目模様になるのか全く分からないのだと言っていた。
シェラックもいろんな色があるけど、単に色の違いだけではなく質まで違ってくるらしい。
なので、黄色のシェラックはエスビョンの経験のたどり着いたベストだという訳。

写真右の、塗装を控えている楽器をオーダーした人は、赤茶ではなく茶色を希望していたため、
私のより赤の配合が若干少ない。
それでも一度目の塗装は、薄い赤系の色に見える。
これに黄色のシェラックを塗ると、赤みが消えパァッと華やいだゴールド・ブラウンになった。
ちなみにこのお客さん、鍵盤部分はウロフのように黒にしてくれと言っていたらしい。
(エスビョンがウロフの楽器を作ったので)
でも、エスビョンが電話して話したのだそう。
黒はオイル・ペインティングみたいなもので塗料自体も安上がりな上に木目が見えなくなる、
もし木らしい木目をみたいなら...、と。
もちろんお客さんを説得してまで色の変更はしないけど、その人は「じゃあ、黒に近いダーク・ブラウンに」と
気をかえたらしい。

ところで写真左は、行きがけに撮った一面たんぽぽの草原。

主に塗装作業が続いたので、今日は色々な話をした。
エスビョンは、機械と人とが関わる「効率」「心理学」「品質」「マネージメント」と多岐に渡って大学で教えてきた。
今日はそのマネージングに関わる部分について。
研究職として企業で働いていたこともあるエスビョンは、ディレクターとしての立場という
自分の経験にも基づいた理論を持っている。

組織全体をよくするにはマネージャーはどうあるべきか。

とてもいい話。
熱く語ってくれる。
でも、私がマネージャー的立場で組織を動かす日はやってくるのだろうか。
疑問に思ったので「自分の家族をどう動かすかって置き換えられるよね!」
となんとも小さい話に置き換えた。

そういえば、エスビョンの作った教科書にはなぜか「マツシタ・コウノスケ」のセリフが沢山、引用してあった。

そしてFIKA(ティータイム)の話から、日本の残業天国(いや地獄か)の話になった。
スウェーデンでは法律で決められたfika休憩が午前と午後にそれぞれ15分程度ある。
「これは仕事の能率を上げるために必須の休息で、社内の交流を活発にするためのものでもある。
それに大抵、良いアイデアはリラックスしている時間に生まれるからね
とエスビョン。

日本の会社でfikaなんてない。
残業ザンマイだからそんな暇あったら早く仕事進めたいという人が多いだろう。
残業代が全額支払われないのも珍しくない。
私がそう言うと、そんなことで会社や経済が健全にまわるのが信じられないといった様子。
そのうち、ゆがみやひずみが出るのでは?と。
そうかもね。
皆とは言わないけど、少なくとも私の周りでは(日本)、家族で夜ご飯を食べられる時間に帰宅できる人はいない。
こんな環境の働き方、個人の権利を尊重する欧米ならはっきりと労働者がノーと言うでしょう。
この環境を受け入れる国民性もあるから日本では続いているのだろうけど...。
これが普通となって何十年と続いておかしな社会になっていくのかな??

色々と話ながら今日もごちそうになり、帰る前に再び塗装後の楽器を見てうっとりとため息をついた。
するとエスビョン「ちょっと待って。日が落ちかけた明かりの元で見ると赤がくっきりとでるよ。」
ぶら下がっていた楽器をつかんでフックからはずすと、大きな窓の側に行った。
赤とゴールドが絶妙に混ざり合って外からの光に輝きをいっそう増している。
「いい具合に焼けた熱々のトーストにバターをたっぷり塗ったパン」
なぜかそんな連想をしてしまった。
再び、ため息。
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