11日土曜日、遠来の客、東京から中年の女性Sさんが一人で美術館にやってきました。聞けば康花に一度会ったのことで、その時の康花の印象が強く焼きつき離れなかったからだと言います。
それから数年して、Sさんは癌を患い入院生活を余儀なくされます。詳しくは聞きませんでしたが、あるいは康花の闘病生活と重なる頃であったのかもしれません。康花と同じ病であったことにもよるのでしょう。Sさんは、何といっても辛かったのは癌の痛みと、手術後の抗癌治療であったと、往時の康花に同情するかのように言いました。そしてさらにSさんを苦しめたのは鬱病でした。抗癌剤服用による副作用と、これ以上命を全うできないのではないかという不安から、強度の鬱病を併発してしまったのです。それでも恐らく、Sさんの仕事への情熱(イラストレーター?)が死を遠ざけることになったのでしょう。抗癌剤を止め漢方のせんじ薬に切り替えた結果、副作用が消えてゆくとともに鬱病も徐々に解消していったとのことでした。
そんな時に、Sさんはネットで康花が同じ癌で亡くなったことと、康花美術館のことを知ります。「いつか康花さんの美術館を訪れよう」。しかし東日本大震災がそれを阻みました。福島県いわきの実家が被害にあったため、一時期他府県への移住を余儀なくされてしまっていたからでした。それから3年半、実家も修復しどうにか生活できるようになり、Sさんは東京に在住しながら仕事にも復帰しました。そして今日、漸く康花美術館へ足を向けることが出来たのだということでした。
現在展示している作品の中には、「私は形」、「双眼」、「隻眼」、「ブリキの太鼓」など、いずれも康花が自分の顔をモデルにした作品が含まれています。『幻想か 現実か―食と戦場と人間』という企画で、シュール的な作品など必ずしも康花の「顔」が見えない中で、幸いにして、これらの作品は、十数年前の康花を想い起こしていただくに充分なようでした。
Sさんは言います。「康花さんが私に焼き付けたものはピュワ―としか言いようのないものでした。」。あたかもこれらの作品と当時の康花、そして彼女自身と重ね想い起こすかのように、Sさんは「ピュワ―」と言う言葉を繰り返しました。Sさんに話すことはしませんでしたが、康花の好きな言葉の一つも「ピュワ―」でした。
信濃毎日新聞、松本市民タイムスのコラムを初め、朝日新聞、中日新聞など他紙にも何度か取り上げて頂きましたが、相変わらず来館者が少ない中、Sさんのような方が遠路はるばる来館して頂けたのは、康花にとって、美術館にとって何よりの贈り物でした。Sさん有難うございました。くれぐれもお体を大事になさり、お仕事にも励んでください。
それから数年して、Sさんは癌を患い入院生活を余儀なくされます。詳しくは聞きませんでしたが、あるいは康花の闘病生活と重なる頃であったのかもしれません。康花と同じ病であったことにもよるのでしょう。Sさんは、何といっても辛かったのは癌の痛みと、手術後の抗癌治療であったと、往時の康花に同情するかのように言いました。そしてさらにSさんを苦しめたのは鬱病でした。抗癌剤服用による副作用と、これ以上命を全うできないのではないかという不安から、強度の鬱病を併発してしまったのです。それでも恐らく、Sさんの仕事への情熱(イラストレーター?)が死を遠ざけることになったのでしょう。抗癌剤を止め漢方のせんじ薬に切り替えた結果、副作用が消えてゆくとともに鬱病も徐々に解消していったとのことでした。
そんな時に、Sさんはネットで康花が同じ癌で亡くなったことと、康花美術館のことを知ります。「いつか康花さんの美術館を訪れよう」。しかし東日本大震災がそれを阻みました。福島県いわきの実家が被害にあったため、一時期他府県への移住を余儀なくされてしまっていたからでした。それから3年半、実家も修復しどうにか生活できるようになり、Sさんは東京に在住しながら仕事にも復帰しました。そして今日、漸く康花美術館へ足を向けることが出来たのだということでした。
現在展示している作品の中には、「私は形」、「双眼」、「隻眼」、「ブリキの太鼓」など、いずれも康花が自分の顔をモデルにした作品が含まれています。『幻想か 現実か―食と戦場と人間』という企画で、シュール的な作品など必ずしも康花の「顔」が見えない中で、幸いにして、これらの作品は、十数年前の康花を想い起こしていただくに充分なようでした。
Sさんは言います。「康花さんが私に焼き付けたものはピュワ―としか言いようのないものでした。」。あたかもこれらの作品と当時の康花、そして彼女自身と重ね想い起こすかのように、Sさんは「ピュワ―」と言う言葉を繰り返しました。Sさんに話すことはしませんでしたが、康花の好きな言葉の一つも「ピュワ―」でした。
信濃毎日新聞、松本市民タイムスのコラムを初め、朝日新聞、中日新聞など他紙にも何度か取り上げて頂きましたが、相変わらず来館者が少ない中、Sさんのような方が遠路はるばる来館して頂けたのは、康花にとって、美術館にとって何よりの贈り物でした。Sさん有難うございました。くれぐれもお体を大事になさり、お仕事にも励んでください。