ターナーは、数年前から私の大好きな画家の一人になった。
~1799年に描かれた『自画像』〈24歳〉~
それまでの私には、ターナーは、イギリスの風景画家という、漠然とした知識があるだけだった。
ターナーの絵の素晴らしさに気付かせてくれたのは、テレビのある美術番組。
その番組によって私は、ターナーが、宗教画や肖像画が絵画の主流(風景画は、宗教画のバックに描く添え物)と考えられていた時代に、周囲の批
判にもめげず、風景画を追求したことを知った。
そして、その風景画というのも、単に風景をうまく美しく描くというのではなく、その風景を取り巻く大気・光・空などと共に、自然のダイナミックな姿を、
描こうとするものだった。
その試みを示す初期の絵の幾枚か(テレビ番組で紹介されたもの)を、次に挙げてみます。
『海の漁師たち』 (21歳、初めてロイヤルアカデミーに出品した作品)
『ノラム城、日の出』 (22歳~23歳)
『バタミア湖とクロマック湖 にわか雨』 (24歳)
20代前半で既にこんな素晴らしい風景画に到達したターナー!
しかし彼の、自然の奥深さと、それを表現するための画法の探究はいっそう進化し、後半(1800年代)には、次のような作品となって結実する。
『吹雪 港の中の蒸気船』 (1842年 67歳)
『ノラム城、日の出』 (1845年 70歳)
私は、これらの絵を見て、驚嘆した。
1800年前半という早い時期に、物の形にこだわらない、こんな斬新な絵が描かれていたなんて!
モネを中心とする「印象派」の絵が世間の物議をかもしたのは、1800年代の後半になってから。
その「印象派」が現われる30年くらい前に、すでに印象派を先取りした(或いは、印象派を超えているとも言えるような)絵画が、イギリスのターナーに
よって、描かれていたのだ!
これらの絵を見た瞬間から、私はターナーの大ファンになった。
そして、彼の展覧会があれば、必ず行きたいと思っていた。
そんな私に、昨年の暮れくらいに、『ターナー展』がこの1月から、神戸市博物館で行われるという朗報が入った。
私は、友だち2人と一緒に、展覧会に行くことにした。
私たち3人は、28日11時に、神戸・三宮で落ち合った。
展覧会鑑賞の前に、先ずは昼食をとることに。
昼食は、『トゥーストゥース』というお店を、事前に予約していた。
『トゥーストゥース』は、明治の10年代に「アメリカ領事館」として建てられた、由緒ある建物なのだそうだ。
内部もとてもステキだったが、写真には上手く撮れなかった。
料理は、ビーフシチューをメインにしたランチコースにしたが、これもなかなかに美味だった。
食事を終え、いよいよ『ターナー展』へ。
神戸市博物館は、食事をした『トゥーストゥース』から、通りを一つ隔てたところにある。
私たちは、彼の初期の作品から順次、ターナーの世界を味わっていった。
ターナーの絵の素晴らしさはよく解っているつもりだったけれど、当然ながら、実物には全く違う迫力がある!
特に後半の展示場は、あの茫漠として詩情あふれる、ターナー後半の風景画のオンパレードで、私の心は躍った。
それに、私の大好きな町・『ヴェネチア』を描いた絵も多くあって、とっても嬉しかった。
(ただ、大好きな『ノラム城、日の出』が来ていないのだけが、ちょっと残念だったが…。)
私たちはターナーの絵を堪能して会場を後にし、ターナーの絵の感想も含めてダべリングするべく、喫茶店に入った。
(最後に、私が記念に買った、クリアファイル(下に展覧会のチケット)と絵葉書を、載せておきます。)