昨夏からレンジの調子が悪く、何度も業者を呼んで直してもらっている。またうまく熱っせなくなり、一昨日は新しい業者を呼ぶ。
白髪の修理工と杖をついたひょっとして90近いかもしれないと思える父親と、男性2人。父親の方は修理する息子を台所で立って見守りながら、常に携帯しているという犬用のスナックをポケットから取り出しては、嬉しそうに家の犬にあげる。どうぞお座りくださいと言っても、「いや、わしゃ立ってるのが好きでなあ」と。
レンジを吟味し、部品をはずしていく。部品をはずしていくにつれ、吹きこぼれや普段手の回らない汚れが露になっていく。「こういうこびりつきや汚れは火事の元になって危ないですからふき取るようにして下さいね」そう笑顔で横に立っている私に話しかける。
故障の原因が中々わからない。予想していたよりも大掛かりな部分までねじをはずす必要が出てくる。杖を片手の父親は顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに犬や走り回る下の子2人に話しかけている。なかなかうまくはずせないよう。「同じメーカーでも違う型だったら接続はこうなっているはずなんだが」そうつぶやきながら難しい表情になっていく修理工。「馬鹿げてる!(stupid)」というような言葉も聞かれるようになる。ようやく開けようとしていた箇所が開く。焦げのかすがパラパラと表面に落ちている。その途端切れ怒鳴る。
「だいたいなあ、見せる前にきれいにしとくべきだろ!」
一瞬、凍りつく私。子どもが周りにいないのを確認。父親の顔からはあれほどの笑顔がさっと消え私と目を合わさないよううつむいている。
怒りが湧き起こる。元々結構激しい性格なので、手当たり次第周りにあるものを投げつけ棍棒で叩くなりして家から引きずり出したくなる。「あんたにねえ、そんな言われ方をされる筋合いはない、レンジの部品をはずしてかりかりとこびりついた焦げを取るなんて時間ありゃしない、しかも旅から帰ったばかりだっていうのに、5人の子どもに揉まれる生活を経験したことがあるんかい、2人でさえどれほど相手が必要か今だって周りを見回せば分かるだろうに、ああやだやだ目先のことしか見えない想像力のない人っていうのは」内に溢れる怒りの言葉を聞き続ける。
無言で金だわしを手に取り、修理工の横ではずされた部品を磨き始める。当てつけの気持ちもあり、かなり手に力が入る。ゴシゴシカリカリゴシゴシカリカリ。父親は杖を手に固まっている、修理工はしかめっ面で故障の原因を探している、私は無表情で手を動かしている。子ども達のキャーキャーという声が響く。祖父と父と娘くらいの年代の大人達が、口を結び険しい顔をして台所に立っている・・・。
アラスカの風の吹き荒れる島々で長い間肉体労働していたという、ジャケットをハンガーにかけようと申し出たら「汚いからね」と笑いながら床の上の汚れた道具箱の上にさっと落とした、「今日はワイフを仕事に送っていかなくてはならなくてね」そう窓の外を眺めていた、「直らなかったら半額しかお金は取らないから」私の目をまっすぐと見つめて言っていた。いくつか来てもらった業者は当たり前のようにたとえ直らずともこの修理工が提示する何倍もの金額を取っていったのだった。手を動かしながら、修理工が家に入って来てからのそんな様子をぼんやりと思い出す。
確かに直しに来て貰うんだからもう少し時間かけてきれいにするべきだったかな・・・。
そう思った途端、すっと力が抜ける。もう一度切れようものなら帰ってもらおうと決めながらも、修理工の隣で銀色の表面を磨き上げていく。
重苦しい雰囲気が、金だわしのリズムに合わせ少しずつ軽くなっていく。故障の原因が分かり、レンジも輝き始め、父親の顔にもまたあのくしゃくしゃの笑顔が戻ってくる。
一仕事終え、「ああワイフの迎えに遅れてしまう」そう慌てながら靴を履く修理工。立ち上がると、握手を交わした。「Thank you」そう心から言っている自分に少し驚く。大きく頷いた修理工の顔には、父親と同じ笑顔があった。
白髪の修理工と杖をついたひょっとして90近いかもしれないと思える父親と、男性2人。父親の方は修理する息子を台所で立って見守りながら、常に携帯しているという犬用のスナックをポケットから取り出しては、嬉しそうに家の犬にあげる。どうぞお座りくださいと言っても、「いや、わしゃ立ってるのが好きでなあ」と。
レンジを吟味し、部品をはずしていく。部品をはずしていくにつれ、吹きこぼれや普段手の回らない汚れが露になっていく。「こういうこびりつきや汚れは火事の元になって危ないですからふき取るようにして下さいね」そう笑顔で横に立っている私に話しかける。
故障の原因が中々わからない。予想していたよりも大掛かりな部分までねじをはずす必要が出てくる。杖を片手の父親は顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに犬や走り回る下の子2人に話しかけている。なかなかうまくはずせないよう。「同じメーカーでも違う型だったら接続はこうなっているはずなんだが」そうつぶやきながら難しい表情になっていく修理工。「馬鹿げてる!(stupid)」というような言葉も聞かれるようになる。ようやく開けようとしていた箇所が開く。焦げのかすがパラパラと表面に落ちている。その途端切れ怒鳴る。
「だいたいなあ、見せる前にきれいにしとくべきだろ!」
一瞬、凍りつく私。子どもが周りにいないのを確認。父親の顔からはあれほどの笑顔がさっと消え私と目を合わさないよううつむいている。
怒りが湧き起こる。元々結構激しい性格なので、手当たり次第周りにあるものを投げつけ棍棒で叩くなりして家から引きずり出したくなる。「あんたにねえ、そんな言われ方をされる筋合いはない、レンジの部品をはずしてかりかりとこびりついた焦げを取るなんて時間ありゃしない、しかも旅から帰ったばかりだっていうのに、5人の子どもに揉まれる生活を経験したことがあるんかい、2人でさえどれほど相手が必要か今だって周りを見回せば分かるだろうに、ああやだやだ目先のことしか見えない想像力のない人っていうのは」内に溢れる怒りの言葉を聞き続ける。
無言で金だわしを手に取り、修理工の横ではずされた部品を磨き始める。当てつけの気持ちもあり、かなり手に力が入る。ゴシゴシカリカリゴシゴシカリカリ。父親は杖を手に固まっている、修理工はしかめっ面で故障の原因を探している、私は無表情で手を動かしている。子ども達のキャーキャーという声が響く。祖父と父と娘くらいの年代の大人達が、口を結び険しい顔をして台所に立っている・・・。
アラスカの風の吹き荒れる島々で長い間肉体労働していたという、ジャケットをハンガーにかけようと申し出たら「汚いからね」と笑いながら床の上の汚れた道具箱の上にさっと落とした、「今日はワイフを仕事に送っていかなくてはならなくてね」そう窓の外を眺めていた、「直らなかったら半額しかお金は取らないから」私の目をまっすぐと見つめて言っていた。いくつか来てもらった業者は当たり前のようにたとえ直らずともこの修理工が提示する何倍もの金額を取っていったのだった。手を動かしながら、修理工が家に入って来てからのそんな様子をぼんやりと思い出す。
確かに直しに来て貰うんだからもう少し時間かけてきれいにするべきだったかな・・・。
そう思った途端、すっと力が抜ける。もう一度切れようものなら帰ってもらおうと決めながらも、修理工の隣で銀色の表面を磨き上げていく。
重苦しい雰囲気が、金だわしのリズムに合わせ少しずつ軽くなっていく。故障の原因が分かり、レンジも輝き始め、父親の顔にもまたあのくしゃくしゃの笑顔が戻ってくる。
一仕事終え、「ああワイフの迎えに遅れてしまう」そう慌てながら靴を履く修理工。立ち上がると、握手を交わした。「Thank you」そう心から言っている自分に少し驚く。大きく頷いた修理工の顔には、父親と同じ笑顔があった。
原因見つかってよかったです。部品を取り寄せです。この修理工さんは他のところに比べ驚くほど良心的なプライス、仕事もしっかりとしてくれるという評判を聞きました。良心的に仕事をしているということへの誇りみたいなものを感じましたよ。
私もひどい業者に出会うことがあったけれど、この修理工さんは少なくとも仕事面では信用できるのかもしれません。仕事がしやすいよう次回私もそれなりの準備をしておこうと思ってます。
アドバイスありがとうございます。これから気をつけますね。