靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

希望について、いつかチーズを生み出す

2013-07-07 06:19:10 | ファミリーディナートピック
昨夜のファミリーディナートピック。
(毎週金曜日の夜は、家族で知恵やバリューについての話をしています。我が家は今のところ特定の宗教に属すということはないのですが、宗教的テキストからも大いに学ぶことがあると思っています。)

希望をもつということ

ローマーのシーザーが、ギリシャの賢人六十人とユダヤの賢人一人にディベートを行わせたという話が、タルムード(6世紀頃編纂)に載っている。

ギリシャ賢人:もしひよこが卵から孵る前に死んだら、その魂はどこから抜け出る? 殻に覆われてしまっている。
ユダヤ賢人:魂は、入ったのと同じところから出て行く

ギリシャ賢人: 塩が腐ったら、何で防腐すればいいかね。
ユダヤ賢人:ラバ(雄ロバと雌馬との雑種)の胎盤と胎膜(afterbirth)を使えばいい。
ギリシャ賢人:ラバに胎盤があったかね?
ユダヤ賢人: 塩が腐るなんてことあるだろうか?

といったなぞなぞのような問答が続く。
最後のやりとりが、卵とチーズについて。

ギリシャ賢人:ここに全く同じに見える二つの卵がある。どちらが黒い雌鳥から生まれ、どちらが白い雌鳥から生まれたか分かるかね?
ユダヤ賢人: ここに全く同じに見える二つのチーズがある。どちらが黒い山羊から作られ、どちらが白い山羊から作られたと分かるか?

このやり取りで、このディベートはユダヤの賢人の勝利と両者が納得したと。

長い間これらの問答にどういった意味があるのかと、様々なユダヤの賢人が議論解釈を重ねてきた。

その中で、16世紀のポーランドのラビShumuelEidelsによる一つの解釈( “The Greeks Vs The Jews: Black Eggs and White Cheese” by Y.Y.Jacobsonを参考に。):

雌鳥は21日間卵を温め孵す。白い雌鳥の21日間、黒い雌鳥の21日間、それはユダヤ暦での一年の始まりを祝う21日間の祭り行事と、一年が終わりに近づく頃行われる行事、二つの寺院が壊された歴史的な出来事を嘆き悲しむ21日間を象徴している。光の期間と、闇の期間。そして光と闇とはフィフティーフィフティーで同等であり、どちらがどちらに勝るということも、結局はどちらがどちらと区別することもできない。そして白く光に覆われた始まりも、闇に覆われ膜を閉じるだろう。一時栄えたユダヤも、ローマを前に、もう終わりなのじゃないかね。

そうギリシャの賢人は示したと。

山羊は寺院に供えられる山羊と、人々の罪を背負い荒野に放たれる山羊(”スケープゴート”という言葉の語源となったユダヤの行事)とを表している。神に近い山羊(白山羊)と神から離れた山羊(黒山羊)、それでも、やがて共に白いチーズを生み出す。そして荒野に放たれた山羊も罪がいずれは清められ白い山羊となる(放たれる時くくりつけられた赤い糸が白くなると清められたとされる)。白い雌鳥も黒い雌鳥も白い卵を生み出すように、白い山羊も黒い山羊も白いチーズを生み出す。暗く闇の中にあろうとも、それはいつか白い卵を、白いチーズを生み出すためなのだ。

そうユダヤの賢人が返したと。

辛く苦しいときも、いつか白いチーズを生み出すためなのだという世界観が、ユダヤの人々にその回復力弾力性(resilience)を与え、凄まじい迫害の歴史を乗り越え生き残ることを可能にしてきたのだというこの記事の著者の言葉に納得。

Henny Youngman(British-American-Jewishコメディアン)の言葉に、「ユダヤ人がなぜ酒を飲まないか知ってるかい? 苦しみの邪魔になるからさ。」というのがある。

著者曰く、二つの点で間違っていると。1.ユダヤ人は酒を飲む(祭り行事にワインごくごく)、そして2.決して苦しみを歓迎などしていない。

ただ苦しみの最中にこの「光も闇も、いつか白い卵を、白いチーズを生み出す」という世界観によって、立ち上がり続けてきたのだと。

希望を胸に、歩き続けていきたいです。


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希望を持つことの大きさを話し合い、子供達と納得。そして、その他のことについて長女から疑問: 

1.ギリシャの賢人はこれでユダヤの賢人より劣ってるいるということになるの? 何だか六十人の賢人を一人で負かして、ギリシャ悪者!みたいなちょっと意地悪な感じもする

ユダヤがローマ、ギリシャから迫害を受けた歴史を少しさらい。確かにギリシャ側の文献が残っていたら、全く違う見方が書いてあったかもしれないね。これはあくまでもユダヤの側から見た情報だからね。

欠けてるなとか、おかしいなと感じる部分というのは、どんな情報に触れてもあるはず。その感覚を大切にしつつね、全てを鵜呑みにすることなく、学べるところから学ぶのよ。光でも闇でも白いチーズを生み出すという考え方は、確かに希望を与えてくれるね。


2.なんで「白」がいい、「黒」が悪いというイメージなんだろう。これどうにかならないのかなあ。

白はすっきりと見通しやすいからピュアな感じがして、黒はよく見えなくて思わぬところで転んだり躓いたりしてしまいそうで、自然とこういったイメージを持ってしまうのだろうね。

でも確かに、そのまま単純に当てはめるべきでない場合も多くあるね。このイメージへの拘り、注意していこうね。


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2 コメント

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Unknown (旅人パンダ)
2013-07-08 01:37:30
深いです!
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旅人パンダさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2013-07-17 04:22:51
学んだこと、心に留めていきたいです!ありがとうございます!
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