靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

子育てノート、バランスを支えるもの

2013-03-17 03:00:30 | 子育てノート
・バランスを支えるもの

 ある夏の休日、家族でサイクリングに出かけました。三十分ほど走り、公園にたどり着くと、遊具の隅に人だかりができています。覗いてみると、白樺の木の間にロープが張られ、その上を中年の男性が歩いていました。右に左に前に後ろに揺れながら、前へ前へと進んで行きます。ぴんと張った黒く平たいロープが、足を踏み出す度に曲線を描いてしないます。周りの視線を一身に集めた綱渡り師は、往復して元の地点に戻ると、ロープからぽんと飛び降り、拍手喝采を浴びます。すると今度は、周りの子供達に、順番に綱の上を歩かせて下さいました。

「ありがとうございます。子供達大喜びです」

 そう話しかける私に、さわやかな笑顔で「You are welcom」と答えながら、きゃ~きゃ~と綱の上を歩く子供達を眺めています。何度も落ちながらも、またよじ登り歩き始めようとする子供達。皆なかなか前に進まないようです。

「あなたが歩いている時は、あんなに簡単そうに見えたのに。難しいものなんですね。普段もお仕事でこういったことをされているんですか?」

「いやいや、楽しみのためだけにしているのですよ。だって、ほら楽しいじゃないですか、見て下さいあの笑顔」

 うわあ、あれ~、おっとっと、そう声を出しながらロープを歩く赤毛の男の子、目を輝かせその男の子を見上げる子供達、その1人1人をを指し示し、嬉しそうにそうおっしゃいます。

 長女と長男の番になりました。地上一メートル程のところに張られたロープの上へ、足を踏み出していきます。右に揺れ左に揺れ、なかなか前へ進むことができません。地面に立つ私が差し出す手を放せば、瞬く間にロープから落ちてしまいます。手をしっかりと握ったまま、一歩一歩進んでいきます。手には汗がにじみ、身体に力が入り緊張しているのが分かります。実際に綱の上を歩いてみることで、バランスを取ることの難しさを、体験したようでした。

 一通り集まった子供達が歩き終えた後、口々に質問が出ました。

「どうしたら、あなたみたいに、そんなにも軽やかにロープの上を歩くことができるようになるんですか?」

「毎日練習することだよ。私もね、トレーニングを欠けば、すぐに綱の上から落ちてしまう。とにかく毎日続けるんだよ。それがバランスを保つ秘訣だよ」

 ロープの上でバランスを保つためには、綱の上を歩く練習の他にも、身体の隅々の筋力を鍛えることに、毎日の大半を費やす必要があるのだそうです。真夏の太陽に照らされ、シャツを脱ぎ捨てた綱渡り師の身体に、はっと息を呑みました。首、胸、腹部から手の先まで、そしてショーツから伸びるふくらはぎからつま先まで、隙無く引き締まった筋肉。綱の上で、絶妙のバランスを支えていたのは、この見たことも無いほど鍛え抜かれた身体、毎日のトレーニングの積み重ねだったのです。


・バランスを支える習慣

 成長する力の要は、バランスです。そのバランスを支えるのも、また普段の積み重ねといえるのではないでしょうか。普段の筋力トレーニングの習慣が、綱の上でバランスを取りつつ軽やかに進むことを可能にするように、普段の心がけや実践の積み重ねこそが、子育てにおいての絶妙なバランスをとることを助けてくれるのです。

 何も無いところから、突然絶妙なバランスが取れるようになるということではありません。あちらに揺れこちらに揺れ、何度も落ち、それでも毎日こつこつとトレーニングを続けること、成長力を支えるのも、そんな日々の繰り返しです。

「バランスを取る」とは、感覚を基にした曖昧な言葉にも聞こえます。それでも、綱渡り師の日常のトレーニングが、分かり易い一貫したメニューを基にしているように、成長力を支える日々の習慣というのも、明確に表されるものです。成長する力を支えるためには、次の三つの習慣づけをしていくことが役に立ちます。

一、結果より過程を重視する
二、失敗は成功の元と捉える 
三、他人と比較して歩みを止めない

 これらの習慣はいずれも、「利き手で抱える」をより強調したしたものです。家庭から一歩外へ出れば、過程より結果を要求され、失敗をすぐには許されることがなく、一直線上に並べられ他人と比較されることが多いでしょう。「もう片方の手で押しやる」がより優位の社会で、家庭では一貫して、もう一方のバランスを強調していく習慣づけをしていくことが、子供を健やかに成長させるバランスだと感じています。

 これらを習慣として持つ子供達は、将来どんな荒波にさらされようとも、潰れることなく力強く進み続けていくための、しなやかなバランス感覚を身に着けているのことになるのではないか、そう感じています。


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2 コメント

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Unknown (旅人パンダ)
2013-04-15 22:20:09
結果を良くする為には過程が重要だと常に感じております!
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旅人パンダさんへ、コメントありがとうございます! (マチカ)
2013-04-21 05:18:21
結果にとらわれすぎることなく、最善を出し続けることにフォーカスしていきたいです。ありがとうございます!
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