靴下にはそっとオレンジを忍ばせて

南米出身の夫とアラスカで二男三女を育てる日々、書き留めておきたいこと。

「ギフテッド」教育について、その一

2013-03-03 01:38:32 | 「ギフテッド」教育について
 「ギフテッド」教育についての問い合わせをいただくことがあり、日本でも関心が高まっているのかなと思っています。以前書いたものなどを、改めて考え直したり書き足すなどして、整理してみました。まだまだ言葉足らずに感じているのですが、今のところのまとめです。これからも、また何か思うごとに少しずつつけ足していけたら、そう思っています。

 
その一.「ギフテッド」?・選別方法、選別基準・「ハイリー・ギフテッド」プログラムの内容
その二.IQというものさし・「ギフテッド」という名称への違和感
その三.先天的?後天的?・親が「エリート」?・
その四.子供の力を伸ばすには・努力の継続
その五.「違い」と「差別」・より多様なものさしを


 昨今の米国経済の状況により、アメリカ全土で教育予算も削減されつつあります。何を削るか、そう議論になると挙げられるのが、この「ギフテッド」プログラムでもあります。州によって対応が違いますが、プログラム縮小または取りやめの州も。ここアラスカ州でも、何度か廃止するかどうか話し合われていて、ちょうど二週間程前にもプログラムに関わるスタッフを減らすことが決まったようです。このようにいつまで続くか分からない状況ですが、現在までの七年間、四人の子供達が「ハイリー・ギフテッド」プログラムに通っています。



「ギフテッド」?
 「ギフテッド」というのは、一般的に「先天的に平均よりも顕著に高い能力を持っている人のこと、またその能力を指す。その人物における高能力の傾向は誕生時から生涯にかけて見られる。外部に対する世間的な成功を収めることではなく、内的な学び方の素質・生まれつきの学習能力を持つことを指す」(ウキペディア)とされています。
 米国では約三十八州に、何らかの「ギフテッド」プログラムがあると言われます。通常の学級では必要が満たされない生徒への救済措置として、障害のある生徒と同じ「特殊教育(special education」という位置づけで、公立学校のシステムに組み込まれているのです。
 それら「ギフテッド」とされる子供たちの特徴を表すのによく用いられるのが、次の分類です。

成績優秀者      ギフテッド学習者          
答えを覚えている              思いがけない質問を持ち出す    
興味を持つ                      好奇心旺盛
注意深い                   選択的に精神的にはまり込む
先を行く考えを生み出す              複雑で抽象的な考えを生み出す   
集団のトップ           集団を超える                       
簡単に学ぶ                  既に知っている           
6-8回の繰り返しで習得             1-3回の繰り返しで習得  
課題を時間通りにこなす              課題のプロジェクトや拡張を導く 
Aを取る              成績はモーティベーションにならないかもしれない


選別方法、選別基準
 「ギフテッド」の選別には、IQテストと学力テストが用いられています。果たしてそのような方法で「ギフテッド」が見出せるのかと、様々な議論がされていますが、現在ほとんどの州の「ギフテッド」プログラム入学審査が、これらのテストに拠っています。
 ここアラスカ州アンカレッジの小学校には、「イグナイト」と「ハイリーギフテッド」と呼ばれる「ギフテッド」プログラムがあります。
「イグナイト」プログラムは、アビリティーテスト(IQテストの縮小版のようなもの)と学力テストで96パーセントタイル(全国の同年月の子供達と比べたもの)以上の子供達を集めたものです。ほとんどの小学校に「イグナイト」プログラムがあり、「ギフテッド」教育専門の教師が、週に一度授業をします。
 「ハイリー・ギフティッド」プログラムは、学力テストが98パーセントタイル以上、アビリティーテストで99パーセンタイル以上、IQテストが99.5パーセントタイル以上の子供達を集めたものです。アラスカに一校のみあり、アンカレッジ、および周辺地域から集まった約百五十人近くの子供達が、週五日間終日通うプログラムです。普通の公立小学校内に設置されていて、プログラムの生徒数は全校生徒の三分の一ほどの割合です。
 中学・高校になると、「ギフテッド」や「アドバンス」授業をより多く提供する学校も増え、選別はIQテストよりも、全国統一学力テストの結果に拠るなど、学力重視になっていきます。「ハイリー・ギフテッド」プログラムを提供する学校は中学一校、高校一校です。


「ハイリー・ギフテッド」プログラムの内容
 プログラムの内容は、詰め込みでなく掘り下げ考えることを重視し、生徒一人一人のレベルに合わせ、学年を飛び越えて学ぶことができます。「退屈させない」ためにチャレンジ満載で、方式を教えるよりも方式を考え出すような教え方をし、ストレートに答えを示すよりも、「なぞなぞ」のような形式で答えを自ら導き出すよう働きかけます。
 低学年からイカやヘラジカの目を解剖したり、様々な分野のかなり専門的な用語も学び、福祉関係のボランティアが取り入れられていたりと、毎日濃い授業内容です。進む速度も速く、「通常の学校が三日かけてすることを一日でします」と、子供達の担任の先生がおっしゃっていました。
 教師は皆「ギフテッド教育」専門の資格を持っています。クラスは十人から二十人前後と少人数で、感情面や社会性の養育を専門とするカウンセラーも、配属されています。
 私と夫がこのプログラムを選んだのも、そのカリキュラム内容のよさ、一人一人の生徒に対する待遇の良さが理由でした。四人の子供達も、楽しそうに通っています。


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