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にしみの鉄道情報局付属ブログ

一段下降窓で痛い目にあった鉄道会社

2019-09-03 | 鉄道
一段下降窓は車体に雨水が入り、そのため外板が腐食しやすいなど、保守に手間がかかります。適切な水抜きをしないと台枠まで腐食することになり、車両の寿命を大幅に縮め、それで痛い目にあった鉄道会社は数多くあります。


小田急 5200形 撮影 相模大野 2006年5月4日


小田急は9000形と5000形後期型(5200形)で一段下降窓を採用。両形式とも車体の腐食が末期はひどかったらしく、とくに9000形は地下鉄乗り入れの関係で、複雑な構造ということもあり比較的早期に置き換えられています。
その後、8000形では鋼製車体にも関わらず、一段下降窓を採用しましたが、同時期の国鉄117系100番台200番台やJR西日本の221系と同じく、ステンレス製のユニットサッシの採用など、車体の腐食対策がされ、とくに問題は起きていないようです。

京王は6000系が鋼製車体で一段下降窓を採用しています。5000系が地方私鉄に譲渡され、現在も活躍しているのとは対象的に、1両も譲渡されず、事業用に改造された車両を除いてはすべて廃車になっています。20m4扉車ということもありますが、置き換えの時期には、車体の腐食が酷く、譲渡に適さなかったという噂もあります。

名鉄は初期高性能車の第2段の5200系で1段下降窓を採用しましたが、直ぐに一段下降窓の問題に気付いたらしく、次の5500系では5000系と同じ2段サッシに戻しています。5200系は更新時に2段サッシに改造され、腐食対策がされています。
その後、車体の腐食対策が進んできて問題なくなったのか、6500系及び6800系後期型と、3500系で一段下降窓を採用しています。


京浜急行は800形の後期形が一段下降窓を採用しましたが、こちらは老朽化や車体の腐食ではなく、4扉がホームドア導入の支障になるため早期に置き換えられました。

もっとも痛い目にあったのは国鉄で急行型グリーン車や157系などの保守で相当苦労し、急行型グリーン車の中でもサロ165やキロ28は根本的対策として2段サッシに改造された車両が多く存在しました。そのため国鉄では、ステンレス車体になるまで一段下降窓はご法度でした。

余談ですが、国鉄の昭和30年代製の車両の多くは、1970年代後半から80年代前半にかけて、20年前後で廃車になっています。一段下降窓が原因で17年で廃車になった157系や14年~16年で廃車になったサロ112(旧サロ152)などは極端な例ですが、153系181系なども長距離走行の酷使がたたったのか昭和50年代には置き換えられています。この時期の国鉄は、労使関係の悪化もあり整備の水準が落ちていたようです。


これらの一段下降窓で痛い目にあった鉄道会社は国鉄と関東私鉄が多いのですが、関西私鉄は、一段下降窓を採用し、問題なく使っていた鉄道会社が多くあります。
阪急は創業期から一段下降窓を採用し、その車両整備技術の高さには定評があります。徹底した整備をしていて、腐食箇所を見つけるとすぐに外板を張り替える整備をしているそうです。



撮影 東寺 2019年1月2日


阪急ほど徹底した整備の話を聞かないのが近鉄。近鉄も初期高性能車以降、通勤電車は一段下降窓を採用しています。近鉄の場合、更新工事から20年以上経過した車両は、2度目の更新工事であるB更新を施工しています。
B更新では化粧板の取替などの内装工事と外板の腐食箇所の取替などが行わているようですが、一部の窓の固定化もされています。おそらく雨水の侵入対策も一因にあるのかもしれません。


撮影 新今宮 2018年3月10日


南海は南海線が鋼製車体、高野線がステンレス車体と車両を分けていた時期がありました。南海線の7100系で一段下降窓を採用していますが、比較的しっかりとした水抜き対策を行い、車体の腐食はそこまで見られません。
ただし、一段下降窓の影響というよりも、もともと南海線が本線支線とも海沿いを走ることや、関西国際空港開業後、空港線で海上橋を通過することなどから塩害の影響があるようで、7100系の置き換えが進んでいます。しかし、一度に全車の置き換えは無理なことから、多くの車両では局部更新工事を行い外板の張替えを行っています。


ステンレス車体やアルミ車体が一般的になり、国鉄JRを筆頭に一段下降窓が一時期広まりましたが、空調の発達などで通勤電車でも固定窓が普通になったので、以前ほど多くは無いようです。
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