この本、去年の10月に出た本ですが、いろいろ有ってあまり読む気になれず、出てから半年もたって読んでいます。
東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと (幻冬舎新書)
福島の事故の当事者ともいうべき、当時総理大臣だった菅直人氏の著書です。当時、首相官邸で何が起きていたのか、その克明な記録というべき本です。
東電本社と福島の間のゴタゴタや意思疎通の悪さは、この本からも伝わってきます。詳しくは書きませんが、僅かな幸運によって最悪の事態、東日本全体の避難区域は避けられたと述べています。
事故に関しては官邸の介入とか言われていますが、東電本社が機能不全状態だったため、その機能を官邸が代行したというのが同氏の主張です。後々問題になった海水注入中止の指示については、明確に否定しており、福島第一原発の吉田所長の独断で継続したということです。
同氏は物理学が専攻で、原子力工学の専門家ではないのですが、理系であることが知られています。この本にも書かれている通り、多少の知識はあり、大学時代の人脈を活かすことが出来た点も僅かながら幸運だったのではと思います。
いろいろ情報を得ていますが、福島第一原発への津波到達後に出来たことは限られ、誰がどのようにしても、このような事態になったと思います。福島第一原発1~4号機の沸騰水型原子炉GEマークI形は自己冷却が出来ない、致命的欠陥があったのは明らかですし、地下一階に非常発電機を設置した単純な設計ミスであったと思います。津波に関しては、あまりに無防備だったということなのでしょう。
震災にも津波にもびくともしなかった屈強な女川原子力発電所と、脆弱だった福島第一原発、あまりに対照的ではないかと思います。
自分は鉄道ファンで、国鉄分割民営化後のJR7社の体質や考え方などを傍から見ていて、同じ国鉄から分離したとはいえ、特に本州三社は随分違うなということを感じています。
電力会社もJRと同じく、10社の体質や考え方などは、かなり異なるということが、この事故から見えて来ました。自分は使いこなせない技術はない、技術には限界はない、生命倫理の問題を除いて人間が入ってはいけない領域など無いと考えていますが、この電力会社の会社ごとに違う体質を見ていると、どうも原子力発電所を使う資格の有る会社と無い会社が有るようです。
現状で電力は全国的に需要を満たして安定してるように思えますが、老朽化した火力発電所の無理な延命で、いつ破綻しても不思議ではない危なっかしい状態での安定です。
10年以内には、高効率のコンバインドサイクル式の火力発電所が増設されます。経済的に安価なこれらの発電所が出揃い、ロシアや北米から輸入が始まり天然ガスの価格が下がれば、原子力発電所にこだわる必要性は無くなるのではと考えています。それまでは、原子力発電を使わざるを得ない状況ではないかと考えています。