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nishimino

にしみの鉄道情報局付属ブログ

成瀬は天下を取りにいく

2024-12-06 | 書評

デビュー作で本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」とその続編「成瀬は信じた道をいく」。この作品は2作とも短編集で、全作品が主人公の成瀬あかりの中学2年から大学1年までの物語で、友人や家族などの関係者の視点で語られています。

ただ1作目の3本目の「階段は走らない」には成瀬あかりは主役ではありません。これは1本目の「さよなら西武大津店」と3本目の「階段は走らない」が対になっていて、2020年8月に閉店した西武百貨店大津店の閉店前1ヶ月の物語となっていています。

 

物語の舞台の大津市は、浜大津に車を止めて京阪で京都市内へ行く場合や、三井寺や京阪電車そのものを目的にして何度も訪れています。そのため、親近感がある土地でもあり、本屋大賞受賞直後から当初から気になっていました。西武大津店は訪れたことはありませんが、作中に出てくるファミレスやはあそこだろうなと思えるところが数か所あります。

 

 

というわけで、本屋大賞受賞後、大津市内には「成瀬は天下を取りにいく」と「成瀬は信じた道を」のラッピング電車が走り始め、大津市のイベントのポスターには成瀬シリーズが使われるようになっています。

 

以下余談ですが、有名な文学賞は、たいてい1回しか受賞できません。もっとも権威のある芥川賞直木賞は、どちらか一方を受賞すると、それ以降その作家はノミネートから外されます。既存の文学賞は新人賞である面が大きいためようです。

ただ本屋大賞は、書店員の投票によって決まるので、同じ作家が複数回受賞できて、実際に2回受賞した例もあります(2005年2017年恩田隆・2020年2023年凪良ゆう)。他にも複数回受賞できる文学賞はあると思いますが、現状では本屋大賞がもっとも有名な複数回受賞できる文学賞です。本屋大賞はある意味、本のアカデミー賞か、カー・オブ・ザ・イヤーといった賞ではないかと思います。

 

https://otsu.or.jp/naruse/


赤と青のガウン SNSでバズって文庫化された留学記

2024-08-25 | 書評

三笠宮家の長女彬子女王のオックスフォード留学期。2015年に出版されたのですがSNSでバズって、文庫化されることになりました。自分もそのSNSを読んで気になっていて、文庫を購入しました。女性皇族では初めて博士号を取得して、現在は日本美術の研究者となっています。

 

皇族とはいえ、英国への留学や欧州内の移動は、護衛が付かず、単独で行動するそうです。英国には世界各国の王族が留学してくるので、わざわざ護衛を派遣しない、警護を依頼しないそうです。生まれて初めて街を一人で歩いたのがオックスフォードだったのは、そのような事情があったためです。

オックスフォードの大学院時代にフランスで日本美術の展覧会を学芸員の補佐として開いたエピソードや、皇族用の外交パスポートで格安航空に乗って空港で怪しまれる話、エリザベス女王に面会した話など、読みやすい文体で面白く書かれています。


変な家

2024-04-22 | 書評

 

変な家を買ってみました。映画はまだ見ていませんが、聞くところによるとホラー映画的な要素が多く入り、かなりアレンジされているとか。

小説の方は、ライターがふとした事から不思議な間取りの家を見つけて、建築やホラーミステリーに詳しい人と対話形式で推理を繰り広げる話です。この家をライターが記事で取り上げたら、関係者からコンタクトがあり、さらに話が進んでいき、この家の裏には相当恐ろしい事が判明します。そのあたりを、具体的に実写化するとホラーになると思います。

小説の方は間取り図が書かれているなど、斬新な面白さもあり、確かに売上が伸びるのもわかる面白さがありました。

 

ちなみに小説は続編も発行されていて、こちらは短編の組み合わせとなっているようです。


ブルーバックスの相対性理論

2023-11-23 | 書評

アインシュタインの相対性理論、実生活にあまり縁のない話かというと、そうでもなくカーナビでおなじみのGPSは相対性理論を考慮しないと、数十メートルの誤差が発生するそうです。

このブルーバックスの超入門相対性理論(福江純著)ですが、相対性理論をわかりやすく解説してあり、なんとなくですが理解できました。相対性理論は一般相対性理論と特殊相対性理論の2つに分かれていて、特殊相対性理論が光速不変の法則、一般相対性理論は重力についての理論になります。

光速不変の法則だと、一定速で走る列車や宇宙船の中から先頭と最後尾に向かって光を出すと、内で測定したときと、外から見たときでは、異なる結果になります。これをアインシュタインは時間の方が一定に流れていないということで、正しいことを証明しました。速く動くほど、時間がゆっくり流れるということで、ウラシマ効果とも呼ばれています。一般相対性理論は、さらに光は重力によっては曲がるということで、重力レンズ効果やブラックホールの事までアインシュタインは予言していました。

 

この本は、相対性理論はブラックホールや重力波など、壮大な宇宙の話になりがちですが、もう少し本質的な物理学のところから説明している著書となっています。


福井県立図書館 100万回死んだ猫

2023-05-03 | 書評

一部で話題になっている、福井県立図書館の書籍覚え間違いタイトル集、百万回死んだ猫。福井県立図書館のリファレンスに問い合わせがあった、本のタイトルと実際に司書が案内したタイトルをwebサイトに載せていたのですが、それが一部で話題になり、百万回生きた猫の覚え間違いの百万回死んだ猫をタイトルにして出版されるまでになりました。

 

福井県立図書館 | 覚え違いタイトル集

 

ジワリジワリくるのが、「おい桐島、お前、部活やめるのか」→「桐島、部活やめるってよ」とか、独身男性が若い女の子を妻にしようとして色々失敗した話→谷崎潤一郎「痴人の愛」とか。これらの覚え間違いタイトルと、その本の情報などを一冊にまとめて出版しています。

最後にはリファレンス、司書の仕事を紹介するページがあり、書名の検索の仕方も紹介されています。