人件費以外の先進国の製造業が衰退した要因として、労働組合の問題がある。労組が会社の経営水準を越えた要求をする場合や、年金の負担が重荷になる。
北米の企業の多くは確定供出型年金負担が重荷になっているところが多い。欧州、とくにドイツでは同様の問題が多い。
欧州では地理的文化的に近く、人件費の比較的低い旧東欧諸国への工場移転が進んでいる。
ところが日本国内では人件費の問題があることにはあるものの、製造業はいまだに主要産業である。
付加価値の高い製品への移行、合理化などが一般には言われている。これらの要因は間違っていないと思うが、それだけでは言えない一因があるようである。
自動車産業を始めとして、日本製品や日系メーカーの競争力が強い分野の場合、製造工場の都合で国内の工場で製造しているケースや、需要や輸送費などがあり人件費があまり関係ないとも言える。
また、国内市場向けや欧米向けのみではなく、中国や東南アジア向けの輸出がかなり大きな割合になっているようである。
特に工作機械や電子部品、鉄鋼関係などの工業原材料は中国の経済発展が進めば、輸出がさらに増えるという仕組みになっている。
先日あるテレビ番組で見たのだが、欧州のある会社が、日本製の工作機械は日本の伝統文化が生んだ芸術品に近いものがあると評していた。自分もその一部をみたことがあり、確にそれに近い製品もあるようである。
日本の工業が人件費の高さが逆に省力化を進め、それが海外の日系企業の強さにつながっている。そのため海外との役割分担が明確になり国内工場の高付加価値製品への専念が可能になったと考えられる。
今後の国内の製造業がさらに発展するためには、当たり前のことだが技術革新と、得意分野への特化、海外と明確に役割分担をしなければならないと思う。