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にしみの鉄道情報局付属ブログ

電気主任技術者の話・13 3.11

2025-03-11 | 電気主任技術者

自分は2011年3月8日、中部電力の大口顧客向けの見学会で浜岡原子力発電所に訪問していました。今にして思うとすごいタイミングです。

その後、2014年2月に再度、浜岡原子力発電所を大口顧客向けの見学会訪問しました。このとき、浜岡原子力発電所の安全対策の説明を受けています。巨大な防潮堤を作っていて、この安全対策費を注ぎ込んで、浜岡を動かせないとなると、その巨費は無駄になり、電気料金に反映されるのかなと思った記憶があります。

 

中立的観点から見ると、原子力発電については、現在の原子力発電所はすべて東日本大震災級の災害が発生しても、問題なく停止できる状況にあると言えます。ただ、いま原子力発電に色々意見を言っている人々は、どちらかというと、さらにすごい災害が起きたとき、未知の災害が起きたときに原子力発電は制御できなくなると主張しています。

阿蘇山クラスの火山の噴火や、原子力発電所内に根尾谷断層のような、数メートルの断層が一度に発生するなど、科学的にも非現実的な災害を主張しています。ただ東日本大震災の前まで、津波の規模を過小評価していて、一部の研究者以外は過去の津波から、原発に津波が押し寄せるとは思っていませんでした。耐震性については、一応中越沖地震などの経験から、ある程度は対策されていたようです。

火山の噴火は、過去の地層などから研究が進んでいますが、そこまでの噴火だと、原発事故云々の前に、その地域が数十年は人が住めない状態になってしまいます。発電所直下の活断層は裁判の焦点になっていて、これについては今のところ裁判では認められていません。原子力発電所の所内で、根尾谷断層のような数メートルの断層が突如出現する可能性は、地学的に極めて低いと思います。

 

さて、ここからは現実的な話になります。原子力発電が動けは電気料金が下がると言われています。電気料金が高いと産業競争力を失いますが、あまりにも安いと逆に技術革新や節電省エネのインセンティブが高まりにくくなります。このあたりのバランスが難しいわけですが、原子力発電の電力が安くないところまで安全対策費が来ない限り、動かしたほうが産業的には良いことになります。


電気主任技術者の話・12 電電宮

2024-11-25 | 電気主任技術者

火の神様や金属の神様は、古来からいくつかの神社があり、有名なところでは静岡県に総本宮がある秋葉神社が火の神様、岐阜県の南宮大社が金属の神様として知られています。東京の秋葉原は秋葉神社があったことからこの名前がついています。(現在は台東区に移転)

また京都の宝くじが当たると有名な御金神社は南宮大社から金山彦神を勧請しています。本来なら、金属や鉱山の神様のはずですが、いつの間にか金融機関者が多く信仰するようになり、さらには金運アップの神様になりました。

 

電気が本格的に日本に入ってきたのは明治以降なので、電気はこういった信仰とは無縁でした。その中で唯一と言って良いぐらいの電気の神様があります。

京都の嵐山にある法輪寺、ここは虚空蔵菩薩が本尊の十三参りで有名なお寺なのですが、その境内には鎮守社の電電宮があります。

 

もともと電電宮は、雷の神様の電電明神で、明星社として祀られていました。幕末の動乱で焼失し、戦後、電気関係者の信仰を集め、1956年には郵政省関係者により明星社が再建され、電電塔が建てられました。1969年には社殿が再建されています。

 

電気電子電波の偉人として、法輪寺境内の電電塔にはエジソンとハインリヒ・ヘルツの胸像が掲げられています。

1979年には電電宮護持会が結成されています。この護持会の会員はパナソニックを筆頭に錚々たる日本の大企業が名を連ねています。関西電力や近畿地方の放送局など関西系の企業が多いのですが、日立製作所やソフトバンクなども会員となっています。


電気主任技術者の話・11 低圧配線接続の話

2024-07-24 | 電気主任技術者

電気主任技術者の実質的な担当範囲は、自社選任か外部委託かによって、さまざまだと思います。たとえば、電気保安法人や電気監理技術者に高圧受変電設備の管理を委託している場合、電力会社との間の責任分界点(多くの場合は構内第一柱のPAS)から、変圧器などのキュービクル内の機器までで、低圧配線や機器は名目上は管理しているものの、事実上委託元の会社や、委託元の会社が外注している電気工事会社が管理しているケースが多いです。

それに対して、自社選任の場合は、電気主任技術者が電気機器をすべて管理しているケースが多く、電気工事も電気主任技術者が施工管理するケースが多いです。ただあまりに大規模な事業場だと、エリアごとに代務者がいて、個別に施工管理するケースもあると思います。

 

さて、低圧配線のうち、20A以下でよく使われる電線に、VVFという電線があります。工事業者や地域によってはVA線とも言いますが、単芯のケーブルを2本ないし3本シースに包んだ平型のケーブルです。一般家屋であれば、分電盤より下位は、ほぼこのVVFで配線されていると思って間違いない電線です。

工場やビルなどでも、コンセントや照明はありますので、このVVFはよく使います。たまに、本来は三路用やアース用の3芯VVFを、三相200V供給でも使いますが、ほとんどは単相100/200V供給で使われます。

このVVFを相互接続する場合、リングスリーブが使われることが一般的でした。いまでも施工規則が厳しい現場や防水など特殊な環境だと、リングスリーブが使われるケースが多いですが、それ以外の現場では、差し込み式コネクタが使われるケースも増えています。

 

 

こんなコネクタで、電気工事士の資格試験などでも使われる問題があるそうです。このコネクタ、自分の知る限りでは5社の製品があります。一番有名なのはワゴの差し込みコネクターで、電気工事業者は他社の製品でもワゴと呼んでいたりします。ワゴはこれ以外にも、多数のコネクタをラインナップしています。

その次に有名なのがニチフのクイックロックで、こちらをメインで使う工事業者も多いです。ちなみにニチフはこの接続コネクタよりも圧着端子のメーカーとしてよく知られています。工具商社として知られるトラスコはニチフ製品をメインで扱っている関係で、工場などではこれが一番入手しやすいコネクタです。

カワグチトーメーコネクタは、電材系の卸売店では、一定のシェアがあり、ホームセンターではELPAブランドで知られる朝日電器経由で売られています。オーム電機OKコンも、たまに使っている業者があるようです。

2012年に生産終了したのが、未来工業の電コネ。流通在庫もほぼ無いと思いますが、工事業者がたまに在庫で持っているケースも。

上の写真は3本の線を差し込める製品ばかりですが、ニチフの場合、2本~6本・8本のラインナップがあります。

 

 

これらのVVF接続用のコネクタは、2種類に分けることができます。中のバネが1重の製品と、2重の製品の2種類があり、接続の信頼性が異なるといわれています。2重のほうが信頼性安全性が高いと言われていますが、1重のメーカーは1重の方が、バネが電線に強く接触する、2重は中途半端な接続になって、奥まで差し込まないと接続できないと言っていて、1重の方がいいと言っています。

 

公共系はリングスリーブ限定でこのようなコネクタ禁止ですが、大手ゼネコンなどでは、このコネクタのうち、バネが1重のものは使用禁止で、2重のもののみ使用可としているところもあるようです。

電気工事業者も、リングスリーブしか使わない、2重のバネのコネクタしか使わない、メーカー問わず使うという方が居て、一概には言えないようです。ちなみに自分は情報収集をしていますが、結論が出ていません。


電気主任技術者の話・10 低濃度PCB

2024-01-16 | 電気主任技術者

ここ数年、多くの電気主任技術者や電気工事業者などを悩ませているものに低濃度PCBがあります。

 

PCB、ポリ塩化ビフェニルは絶縁油として、1954年頃から変圧器や力率改善用コンデンサ、蛍光灯安定器などに使用されていました。1960年代後半にそのPCBの有害性が判明し、1972年に生産中止、1975年に使用禁止になりました。その後、廃棄も禁止になり、耐用年数が来たPCB機器は使用者が適切に保管する事になりました。

それらの処理は2000年以降、技術の発達で処理が可能になり、適切に保管されていた機器は日本環境安全(現中間貯蔵・環境安全事業)にて、ほぼ処理が完了しています。ただし、未把握のPCB機器があり、時折発見されています。この後から出てきたPCB機器の処理については、色々問題になっています。

 

PCB機器がこのように一応適正に処理されてきた一方で、非PCB機器のPCB含有問題も2000年代以降に判明しています。

電気機器の絶縁油は、現在新油が使われていますが、かっては再生油が使われていました。PCBの使用禁止の前もしくは、それ以降に非PCB使用機器と誤認されて、廃棄された電気機器の絶縁油が、再生に回され絶縁油の中に混入しました。

1989年以降絶縁油の再生は行われなくなりましたが、それ以前の変圧器や力率改善用のコンデンサの絶縁油には、再生油が使用された場合、ごくわずかなPCBが含まれている可能性があります。0.5%以上絶縁油にPCBが含まれる機器を高濃度PCB、0.5%以下を低濃度PCB機器としています。測定機器の検出限界の0.5mg/kg(0.00005%)以上のPCBが含まれる低濃度PCB絶縁油及び変圧器や力率改善用コンデンサは、指定された処理施設で、適正に処理する必要があります。

ちなみに0.5mg/kgというのは国際的にかなり厳しく、10mg/kg程度までは通常の油として廃棄できる国が多いようです。

 

実際のところ、変圧器の絶縁油を抜き出すことは簡単ですが、力率改善用コンデンサは密閉構造なので、取り外してドリル等で穴を開けて、油を抜き出す必要があります。そのため、コンデンサに関しては、使用停止後の調査ということなります。

1970年代1980年代の変圧器からは比較的よく低濃度PCBは見つかりますが、1990年以降の変圧器からも、たまに低濃度PCBが出てきます。一説では絶縁油交換を行った際に、ポンプを共有していて、その際に廃油が混入したのではないかと言われています。

この低濃度PCBの問題が表面化したのは2005年頃からで、そのあたりから徐々に調査が進みましたが、それ以前に相当数の低濃度PCB混入の変圧器やコンデンサ、交換された絶縁油が廃棄されたのではないかと言われています。

 

さて、この低濃度PCBの問題は年々規制が厳しくなり、絶縁油の引取や混入も、低濃度PCB不在証明書が必要になっています。近年では、変圧器の絶縁油の交換の場合、低濃度PCB不在証明書に記載された変圧器の製造番号と、実際の銘板の写真の製造番号が一致しないと、廃油処理業者が引き取らないそうです。

 

ここまでは、受変電設備の話ですが、それ以上に厄介な話なのが、蛍光灯や水銀灯の安定器です。安定器のうち、電子式の蛍光灯安定器は問題ないのですが、それ以前の力率改善用コンデンサが内蔵されたもの、ラビットスタート式の安定器も廃棄が近年難しくなっています。力率改善用コンデンサには、絶縁油が大抵入っています。今のところ、分別すれば処分できるようですが、色々難しい話も聞いています。

 

水銀灯などのHIDランプは、低圧ナトリウム灯など一部のタイプを除いて、水銀を使用しているため、水俣条約により2020年に製造禁止になり、蛍光灯も本体はすでに生産を終了し、交換用のランプが2027年までに製造を終えることになっています。LEDへの置き換えは進んでいますが、在庫品の流通や継続使用は禁止されないので、点灯時間の短い箇所を中心に、相当先まで蛍光灯や水銀灯が残ると思われます。

 

低濃度PCBは2027年までに処理を終えることになっています。受変電設備の変圧器や力率改善用のコンデンサだけでも難しいのに、世の中のラビットスタート式蛍光灯安定器及び水銀灯安定器、1989年以前のものに限っても全廃することは2027年までには無理だと思われます。


電気主任技術者の話・9 年次点検

2021-12-26 | 電気主任技術者

電気主任技術者にとって、1年で一番のビッグイベントは停電を伴う年次点検です。特高変電所の点検と、高圧側のキュービクル、サブ変電所の点検がメインになると思いますが、電気を止められるチャンスは限られるので、これにわせて色々と改修工事を行います。

特高変電所の点検は受電用と高圧側への送り出しの継電器のリレー試験、機器点検、接地抵抗を測定します。自分の専任の変電所は、特別高圧側がC-GISでメーカー以外やそれに類する会社以外は点検不可能で、かつメーカーの指定は6年間隔の点検なので毎年行いません。高圧側のVCBの点検も、メーカーの指定は6年間隔なので毎年の点検は行いません。
それ以外のリレー試験は、専門の点検業者に外注します。リレー試験機をユーザー側が持っていることはまず無いので、必然的に外注になります。
高圧側のキュービクル、サブ変電所の年次点検は、電気保安法人や電気管理技術者なら大抵どこでも出来るので、それほど制約はありません。

この年次点検は会社の方針や過去の経緯にもよりますが、特高変電所と高圧のキュービクルの点検を一括で、メーカーの関連会社や電力会社のグループ会社などに外注し、特高は元請けで行い、キュービクルはそこが、電気保安法人や電気管理技術者に下請けで発注するケースが多いようです。ただし、ユーザー側が特高変電所とキュービクルの年次点検を別の業者に発注する場合もあります。自分は過去の経緯で、特高変電所とキュービクルの点検を別の業者に個別で発注しています。
年次点検の日時や発注ですが、年末に行う場合、4月の新年度開始後にはある程度日程を定めて、5月のGW後ぐらいには業者に日程を内示し、遅くとも9月中には点検を正式発注しています。これぐらいの日程の余裕を持たせないと、点検業者を集めることは難しいです。

昨年にあった事態なのですが、2020年末の点検に数年間隔の大規模な点検を計画していました。5月のGW後の中旬に、特高変電所のメーカーに打診を行いましたが、コロナの影響で、5月のGWに点検を予定していた首都圏の特高ユーザーが軒並み点検中止になり、2020年末に延期になり、点検要員を確保できないという連絡が入りました。仕方なく1年その点検は順延になりました。
ただ、東海地方の特高ユーザーには、年次点検を延期したところはあまりなかったと聞いており、それ以外の点検工事は問題なく実施しました。


自分が担当しているところは、キュービクルは高圧受電時代から使っている古いものが多いので、この更新工事を併せて行うケースが毎年のようにあります。もっとも古い変圧器は引き継いだ時点で1979年製で、使用年数が20年を超えるものが多く、絶縁油を入れ替えて延命を行うか、そのものを入れ替えるかの選択に毎年迫られます。また、特高変電所とキュービクルの間の高圧ケーブルも寿命が有限なので、順次引き換えを行い、これも年次点検に併せて行っています。