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癌細胞はインスリン抵抗性を回避する

2015-11-21 06:02:17 | 
Cancer cells poised for growth when opportunity knocks

November 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151117093209.htm


(ヒトに癌を引き起こす遺伝子をハエで活性化させると、高糖食を与えたハエの腫瘍は通常食よりも大きく育った)

※poise: ~を平衡状態にする。~の用意をさせる(for~)※再帰的または受身


インペリアル・カレッジ・ロンドンのMRC臨床科学センターで代謝・細胞増殖研究グループを率いる平林 享(Susumu Hirabayashi)と、マウント・サイナイ・アイカーン医科大学/Icahn School of Medicine at Mount SinaiのRoss Caganたちは、
血中のブドウ糖レベルが上昇した時、それに対して癌細胞が応答して急速に増殖するメカニズムを同定した
eLife誌で発表された今回の研究は、なぜ肥満のように慢性的に高血糖になる人がある種の癌を発症するリスクが上昇するのかを説明する


我々が食べたものは消化されてグルコースのような小さい分子になり、血液によって全身の細胞に届けられて成長のための燃料として使われる
グルコースが効率よく吸収されるためにはインスリンが必要であり、インスリンは細胞表面の受容体に結合してチャネルを開き、グルコースを細胞に吸収させる

肥満の人々はしばしば持続的に血液中のグルコースとインスリンが多く、多過ぎるそれらはやがて『暗騒音background noise』となり無視tune outされるようになる(インスリン抵抗性)
インスリンが作用しなくなるとチャネルが開かなくなり、グルコースは細胞に吸収されずに血液中に蓄積する

しかし全ての細胞がインスリンとグルコースを無視tune outするわけではない
事実、平林たちは以前ショウジョウバエの腫瘍細胞は積極的に注意を払うtune inことを示している


2年前に発表された研究で彼らはショウジョウバエのRasとSrcという遺伝子を活性化させた(※)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23911328

RasとSrcはヒトの様々な癌で活性化している遺伝子である
ハエは代謝と細胞増殖を制御する遺伝子の多くをヒトと共有しているため、この研究は我々ヒトにも関係あるrelevant可能性はある

科学者はRasとSrcをハエの発達中の目の組織で活性化させ、それらの細胞を蛍光ライトの下で緑に発光するよう目印をつけた
通常のエサを与えたハエの腫瘍は小さくて良性だったが(画像左)、高糖食を与えると大きく悪性の腫瘍を生じた(画像右)

平林は高糖食を与えたハエの通常の細胞がインスリン抵抗性になる一方で、腫瘍細胞はそうならないことを発見した
腫瘍は余分なインスリン受容体を作るための『代謝のスイッチ』を入れて、インスリンに対して感受性を増大させていた
インスリンが通常より多く受容体に結合してより多くのグルコースのチャネルが開いた腫瘍細胞は、ハエのインスリン抵抗性の体内で他に行き場がないグルコースの『下水溝/sink』のようになった

しかし、2年前の研究では腫瘍細胞がどのようにして『代謝のスイッチ』を入れるのかは不明だった


平林とCaganは同じハエを詳細に研究し、腫瘍はSalt-inducible kinase (SIK)というタンパク質によってグルコースが手に入るかどうかavailabilityを間接的に検出することを示した
SIKはグルコースレベルが高いと『Hippoシグナル伝達経路』というルートに沿ってシグナルを送る

Hippo経路は細胞増殖の制御に関与することが知られている
Hippo経路がオンの時は増殖は制御されているが、オフになると細胞は増殖を続けcarry on、最後にはultimately腫瘍の発症につながるのかもしれない

平林とCaganはSIKが糖のセンサーのように働き、グルコースレベルに応じてHippoシグナル伝達経路をオフにすることを発見した
これは腫瘍細胞が増殖し続けることを可能にする


「RasとSrcをともに活性化した腫瘍は、SIKを使って細胞外に利用可能なグルコースが多く存在することを感知し、それを利用するよう細胞に伝えるtell」
平林は言う
これらの腫瘍はHippoシグナル伝達経路の変化に対して特に感受性が高く、その変化に急速に応答する用意をしているpoised to

「RasとSrcの変異した腫瘍はSIKを使って効率的にグルコース利用可能性に応答し、肥満のように栄養が豊富な状態で腫瘍が確実に増殖できるようにするensure
ただし、他の遺伝子変異による腫瘍がグルコースに対して同様に応答するかは不明である」

「我々の研究結果が示唆するのは、SIKを標的にする薬剤を開発できればインスリン抵抗性の環境で癌細胞が生き残るのを止めて、肥満と癌の関連を断ち切ることができるかもしれないということである」

科学者たちはSIK阻害剤を開発する前に、ヒトでも同様のメカニズムが生じるのかを確認しなければならないだろう


http://dx.doi.org/10.7554/eLife.08501
Salt-inducible kinases mediate nutrient-sensing to link dietary sugar and tumorigenesis inDrosophila.
eLife 2015


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23911328
Transformed Drosophila cells evade diet-mediated insulin resistance through wingless signaling
Cell 2013




関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/7584
高糖質食の摂取による糖代謝の異常が腫瘍の悪性化に及ぼす影響
平林 享・Ross L. Cagan

>最近,ヒトの線維芽細胞を用いた解析により,Wntシグナルが転写因子Tcfを介してインスリン受容体の発現を亢進することが報告され,古典的Wntシグナル伝達経路とインスリンシグナル伝達経路とのクロストークはヒトにおいても保存されていることが示された7).



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150406133613.htm
ショウジョウバエの腫瘍はImpL2(ヒトIGFBPsのホモログ)を分泌して、インスリンの働きを阻害してグルコースを使えないようにする



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151109140121.htm
膠芽腫でのEGFR活性化はグルコース取り込みを増やしてSCAPの翻訳後修飾/N-グリコシル化を促進し、SCAPとSREBPはゴルジへ移動、SREBPが活性化して脂質産生に関与する遺伝子を活性化する