ZEB1は乳癌の放射線治療への抵抗性を促進する
Twist(ねじれ)、Snail(カタツムリ)、Slug(ナメクジ)。
これらはわらべうたの歌詞のように聞こえるかもしれない。
しかし実際には、それは幹細胞様の特性を持つ細胞を生成できるタンパク質に与えられた風変わりな名前である。
その幹細胞様の細胞は、様々なタイプの組織を形成する能力がある。
ヒューストンテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究によれば、それらとはまったく異なる名前のZEB1タンパク質も、放射線治療での乳癌の治療を失敗させると現在考えられている。
リー・Ma博士によれば、ZEB1は実際、放射線治療によって乳癌に引き起こされるDNA損傷の修復を助けているかもしれないという。
それは『DNA損傷応答経路』という第一線の防御を強化することによってである。
「放射線治療は、DNAの切断を誘発することによって細胞死を引き起こす」、Maは言う。
「正常組織に損害を与えることなく腫瘍を放射線で治療する理論的根拠は、正常な細胞と比較して腫瘍細胞は活発に複製していて、しばしばDNA損傷修復機構において障害があるということである。」
したがって、腫瘍細胞はあまりDNA損傷を修復することができない。
しかし、常にそうとは限らない。
時々人体は放射線に対して抵抗する腫瘍細胞を産生する。
それらはどういうわけか、DNA損傷応答装置を「オンにする」ことが可能である。
これまで「どうやってそうするか」は常に疑問だった。
Maのチームは、最後の一秒で非常ボタンを押す、狡猾な腫瘍細胞の能力を証明した。
それは癌幹細胞を生じる活動を開始するZEB1の傾向によって引き起こされる。
「癌幹細胞は、DNA損傷応答システムの活性化を通して放射線抵抗性を促進する」、Maは言う。
「我々の研究によれば、ZEB1は癌幹細胞の特性を獲得させる上皮間葉転換(EMT)というプロセスを誘導することができる。その特性には放射線抵抗性も含まれる。」
EMTは人体が創傷治癒に反応を示す1つの方法である。癌はEMTを使って腫瘍進行を促進する方法を見つけると考えられている。
ZEB1はATMという遺伝子により、DNA損傷反応において重要な役割を果たすタンパク質Chk1を安定させることを可能にする。
ZEB1はさらに、USP7と呼ばれる酵素を配備することにより、腫瘍放射線への抵抗性を許すChk1の能力を促進する。
学術誌参照:
1.ZEB1のATMによって媒介される安定化は、CHK1を通してDNA損傷反応と放射線抵抗性を促進する。
Nature Cell Biology、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140804102940.htm
<コメント>
放射線への抵抗性にはZEB1が関与するという記事です。
癌の表現型とZEB1についての関連記事があります。
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/07/130703120557.htm
>The scientists determined that the difference in ZEB1's effects is due to the way the gene is marked in the two types of cancers.
>In luminal breast cancer cells, the ZEB1 gene is occupied with modifications that shut it down.
(管腔細胞型の乳癌では、ZEB1遺伝子は、妨害的修飾により占められている)
>But in basal breast cancer cells, ZEB1's state is more tenuous, with repressing and activating markers coexisting on the gene.
(基底細胞型の乳癌では、ZEB1遺伝子の状態は、抑制化と活性化のマーカーが遺伝子上に共存していて曖昧である)
>When these cells are exposed to certain signals, including those from TGFß, the repressive marks are removed and ZEB1 is expressed, thereby converting the basal non-CSCs into CSCs.
(これらの細胞がTGFβのようなシグナルに触れると、抑制マークは取り除かれてZEB1が発現する。それにより基底細胞型の非CSCはCSCに変化する。)