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2014年12月29日

2015-01-02 16:28:52 | 免疫

幹細胞移植から3年後の多発性硬化症患者における寛解についての報告
Report on remission in patients with MS three years after stem cell transplant



JAMA Neurologyのオンライン版で発表された研究によると、多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)の少数の患者が高用量の免疫抑制療法(high-dose immunosuppressive therapy; HDIT)の後に、自身の造血幹細胞を移植する治療を受けた。その3年後、患者の大部分は活動性の再発寛解型多発性硬化症(relapsing-remitting MS; RRMS)の寛解を維持し、神経機能が改善した。



多発性硬化症は変性疾患である。そして疾患修飾性(disease-modifying)の治療を受けたほとんどのRRMS患者は、治療効果の喪失(breakthrough disease)を経験する。

患者自身の細胞を用いる自己造血細胞移植(hematopoietic cell transplant; HCT)は、多発性硬化症において病原性の免疫細胞を除去し、免疫システムを初期状態に戻すことを目的として研究されている。再発寛解型多発性硬化症に自己の造血細胞を移植する研究(Autologous Hematopoietic Cell Transplantation; HALT-MS)では、RRMS患者に対するHDIT/HCTでの早期介入による効果を調べている。

プレスビテリアン・セントルーク・メディカルセンターのコロラド血液がん研究所(コロラド州デンバー)のRichard A. Nash医学博士らによる論文は、安全性と効能、そして処置後3年間の疾患安定の持続性について報告する。

患者は5年を通して調べられた。研究の結果、HDIT/HCTを受けた24例の患者のうち、全体での無症候生存率(event-free survival)の割合は3年で78.4パーセントだった。無症候生存の定義は「神経学的機能の喪失、臨床上の再発、または画像診断で観察される新しい病巣による死亡や疾患が存在しない生存状態」とされた。

無進行生存(progression-free survival)ならびに臨床的に再発のない生存(clinical relapse-free survival)は、3年でそれぞれ90.9パーセントと86.3パーセントだった。著者は、有害事象がHDIT/HCTに対して予想される毒性の影響と一致しており、治療と関連する急性の神経学的な有害事象は観察されなかったことに言及する。神経学的障害、クオリティオブライフと機能的なスコアの改善についても記した。



論説(Editorial): 多発性硬化症患者に対する幹細胞移植に関して、移動する標的(moving targets; 時間とともに変わる目標)

関連する論説で、ユタ大学(ソルトレークシティ)のM. Mateo Paz Soldan医学博士、そしてメイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のBrian G. Weinshenker医学博士は次のように書く:

「本研究ともう一つのフェーズ2単一群試験(single-arm study)の結果から、高用量免疫療法が短期的には活動性の多発性硬化症患者で大幅に炎症性疾患活動を抑制できることについてはほとんど疑いがない。多発性硬化症が長期間抑制されるといういくつかの証拠が存在し、治療に関連して罹患率と死亡率がどのように低下するかについての教訓が得られている。」

「しかしながら、小規模の研究でさえ死亡例が生じ、そして強力な処方計画はエプスタイン-バーウイルスと関連するリンパ腫という結果に結びついた。」



「Nashたちは、メモリーCD4+細胞の長期枯渇、ならびにCD4+が優位なT細胞受容体クローンの枯渇、そして『免疫再設定』のエビデンスを示す。」

「しかしながら、臨床的もしくは放射線学的な再発のエビデンスは、『免疫再設定』の免疫学的証拠に切り札で勝つ(trump)。そして本研究は、それらのエンドポイントが十分に達成されなかったという懸念を高める。多発性硬化症に対するHCTの妥当性と適応に関して、いまだ決定は下されていない(the jury is still out)」、と著者は結んだ。

記事供給源:
上記の記事は、JAMAネットワーク・ジャーナルによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.再発寛解型の多発性硬化症に対する高用量免疫抑制療法と自己造血細胞移植(HALT-MS)。

JAMA Neurology、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141229164854.htm

<コメント>

再発寛解型の多発性硬化症(relapsing-remitting multiple sclerosis; RRMS)に対して、高用量の免疫抑制治療(high-dose immunosuppressive therapy; HDIT) を実施して、その後に造血幹細胞を移植 (HCT) する治療について3年後の成績を報告する記事です。

一見すると良い数字ですが、論説によればまだ解決すべき課題は残っているようです。


2014年12月17日

2015-01-01 23:28:36 | 免疫

多くのアレルギー反応は、単一のタンパク質に由来する
Multiple allergic reactions traced to single protein



ジョンズ・ホプキンスとアルバータ大学の研究者は、薬剤や他の複数の物質に対して起きる危険で苦痛を伴うアレルギー反応の原因として、単一のタンパク質を特定した。この問題となるタンパク質を標的にする新しい薬が発見されれば、前立腺癌から糖尿病、そしてHIVまで、あらゆる治療の円滑化を助けるかもしれないと研究者は言う。彼らの研究結果は12月17日にネイチャー誌で発表された。



先行研究では、様々な薬の注射部位で起きる痛みとかゆみ、そして発疹のような反応を追跡して、免疫システムの一部である肥満細胞まで行き着いた。本来、肥満細胞の表面上にある特殊な受容体が警告シグナルである抗体を検出すると、細胞は急速に活性化してヒスタミンと他の物質を放出して炎症を誘発し、その領域に他の免疫細胞を引き寄せる。

それらの抗体は細菌やウイルスなどの『脅威』に反応したB細胞やT細胞など他の免疫細胞によって作られるが、しかし「これらの注射部位の反応の多くがアレルギー性反応のように見えるにもかかわらず、奇妙なことに抗体が作られていないのである」、ジョンズホプキンス大学医学部で基礎生医科学研究所の神経科学部の准教授であるXinzhong Dong博士は言う。

その反応の原因を明らかするため、Dongの研究室のポストドクターであるBenjamin McNeil博士はまず初めにマウスではどの肥満細胞の受容体が薬に反応するかを明らかにしようと試みた。先行研究ではアレルギー反応の原因になりそうなヒトの受容体が特定されていたが、McNeilはそのヒトの受容体と同様にマウスの肥満細胞だけに存在する受容体Mrgprb2を発見した。

彼は次にラボで育てた細胞にその受容体を組み入れ、それらは実際に薬剤に反応して肥満細胞の応答を引き起こすことを明らかにした。彼はヒト受容体に関しても同様の結果を先行研究から発見した。先行研究はヒト受容体が原因である可能性を示していた。

「全ての薬が単一の受容体を始動させることがわかったことは幸運である。それはその受容体を魅力的な薬標的にする」、McNeilは言う。

受容体を消去することが本当にアレルギー反応を取り除くかどうかを明らかにするため、研究チームはマウスで疑惑の受容体をコードする遺伝子を無効化した。これらの「ノックアウト」マウスでは、遺伝的に正常なマウスが示したようなどんな薬物アレルギー症状も起きなかった。

研究者は現在、原因となる受容体(ヒトではMRGPRX2)を安全に阻害できる化合物を発見しようと研究に取り組んでいる。その化合物は本当のアレルギー反応、つまり抗体を産生するような反応は阻害せず、MRGPRX2によって引き起こされるアレルギー様反応(pseudoallergic reactions)だけを阻害する。

MRGPRX2を起動させる薬剤は、例えば抗がん剤のcetrorelix、ロイプロリド、オクトレオチド、HIV薬のsermorelin、フルオロキノロン類抗生物質のレボフロキサシン、手術中に筋肉を麻痺させるために用いられる神経筋遮断薬のロクロニウムなどである。

Dongの研究グループは、MRGPRX2が免疫性病態(例えば薬剤使用から生じていない酒さと乾癬)の裏にある可能性も調査している。

記事供給源:
上記の記事は、ジョンズ・ホプキンス・メディシンによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.薬のアレルギー様反応にとって重要な、肥満細胞に特異的な受容体の同定。

Nature、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141217141035.htm

<コメント>
マスト細胞は抗体に反応してヒスタミン等を分泌しますが、薬剤アレルギーでは抗体がなくても反応が起きます。そのような薬剤アレルギーの原因がマスト細胞のMRGPRX2というGタンパク質共役受容体(マウスではMrgprb2。ヒトのX2のオルソログ/orthologue)であることが明らかになったという記事です。

Figure3Figure4で様々な薬剤が挙げられていますが、THIQ(Tetrahydroisoquinoline; テトラヒドロイソキノリン)モチーフに類似した構造が共通しているようです。