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2015年1月13日

2015-01-20 23:49:01 | 代謝

甲状腺機能低下症の治療に対する新しい洞察
New insights into treatment of hypothyroidism



ラッシュ大学メディカル・センターの医師と科学者によって指揮される国際研究チームは、アメリカで約1000万人が罹患する甲状腺機能低下症に対する新しい洞察を得た。今回の研究結果は特に標準的な治療の効果がない約15パーセントの患者にとって新しい治療手順につながる可能性がある。この研究は新年の初めにJournal of Clinical Investigation(JCI)とJournal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)で発表された。
http://www.jci.org/articles/view/77588
http://press.endocrine.org/doi/abs/10.1210/jc.2014-4092


甲状腺機能低下症は、甲状腺がサイロキシン(T4)とそれが活性化した状態のトリヨードサイロニン(T3)を十分に産生しないときに生じる。この病態は多数の健康問題を引き起こす可能性がある。例えば体重の増加や疲労、そして「もうろうとした頭(foggy brain)」などである。

何十年もの間、標準的な治療はレボチロキシン(levothyroxine)という合成T4サプリメントを毎日摂ることだった。いったん体内に吸収されればT4は脱ヨード反応(deiodination)によってT3に変化し、理論上はT3の血中濃度を完全に正常化する。

しかしながら、この治療法で患者の約15パーセントは全ての症状が改善されない。医師たちはその理由に長い間頭を悩ませてきた。この混乱が続く理由は主に、甲状腺機能低下症の治療が効くかどうかという効能は「患者がどのように感じるか」という主観的な報告に依存するためでもある。正常な甲状腺を有する人でも、他の病態、例えば閉経後症候群や臨床的うつ病などにより甲状腺機能低下症と似たような症状を経験するかもしれない。



JCIで発表される研究は甲状腺が除去されたラットで実施され、T3の循環血中のレベルがレボチロキシンだけでは完全に正常化されない理由について細胞レベルでの基礎を説明する。

加えて、レボチロキシンの処方にT3を追加することで、循環血中のT3レベルと甲状腺機能低下は完全に修正できることを明らかにする。レボチロキシンだけを投与されたラットのいくらかは、T4とT3を組み合わせて投与されたラットよりも、血液中のコレステロール濃度が高かった。

それらのラットは脳でも甲状腺機能低下症の徴候を示した。これは甲状腺機能低下症の一般的な症状である「もうろうとした頭」を潜在的に説明できる可能性がある。したがって、併用療法は一般に甲状腺機能低下症で影響を受ける臓器(脳、肝臓、骨格筋)において正常な甲状腺ホルモン作用を確立したと言える。

「もちろん、臨床的に本研究を確認することは重要である」、ラッシュの内分泌代謝学部のトップであり、両方の論文のシニア著者であるAntonio Bianco医学博士は言う。Bianco博士が共同議長を務めるアメリカ甲状腺学会タスクフォースは甲状腺機能低下症の治療ガイドラインも更新し、12月にThyroid誌で発表した。

「甲状腺機能低下性患者は全て同一であるというわけではない。併用治療でうまくいく人もいるし、そうでない人もいるだろう。したがって課題は、これらの個々人を特定して、その違いがなぜ存在するかについて理解することである」、Bianco博士は言う。

この点についてはJCEMでの研究で探究された。研究者は、T4をT3に変換する酵素であるD2(deiodinase)の一般的な多型性(polymorphism; 頻度が高い遺伝子的な突然変異)を調査した(Thr92Ala)。先行研究では、この多型性を有する甲状腺機能低下症の患者は併用治療の効果が高く、そこからBianco博士たちはこの多型性と標準治療が失敗する関係を探究するに至った。

研究者は約100人の遺体ドナーの脳を研究し、この多型のD2が、通常はD2を含まない細胞区画(ゴルジ装置)に蓄積する傾向があることを発見した。D2のこの異常な蓄積は、ハンティングトン病のような神経変性疾患の脳で観察されるのと同じように細胞の機能を阻害する。

「D2の多型性は、甲状腺機能低下症を発病するときに神経変性疾患が悪化しうる危険因子であると考えられる」、Bianco博士は言う。

幸いにも、この病態のための治療が使用可能かもしれない。

「多型D2に影響を受ける遺伝子のいくつかは、酸化ストレスを表した」、Bianco博士は言う。

「酸化ストレスを中和する物質(N-アセチルシステイン)でD2の多型を持つ細胞を処理すると、それらの遺伝子の発現は正常化した。」

「認知が低下する危険因子を示す要素を1つまたはそれ以上持つにもかかわらず、甲状腺機能低下性の患者の全てが同じではない理由をこのD2多型は説明する。さらなる研究によって確かめられればだが」、Bianco博士は言う。

「個人用にカスタマイズされた薬剤は、甲状腺機能低下症を捕えていたようだ。それは100パーセントの患者に効くことを確実にできるかもしれない。」

記事ソース:
上記の記事は、ラッシュ大学メディカル・センターによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.視床下部の2型脱ヨウ素酵素のユビキチン化における違いは、サイロキシンへの局所的な感度を説明する。

JCI、2015;

2.甲状腺ホルモンを活性化する酵素の優勢な多型は、相互に関連する臨床的な症候群の根底にある遺伝子的なフィンガープリントを残す。

Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150113153952.htm

<コメント>
甲状腺機能低下症(hypothyroidism)についての記事です。

甲状腺ホルモンのサイロキシン(T4)を脱ヨード反応(deiodination)によってトリヨードサイロニン(T3)に変換するII型脱ヨード酵素(type 2 deiodinase/D2)は、T4への曝露によって不活化してしまい、さらにD2には遺伝的な多型が存在するため、合成T4のレボチロキシンを補うだけでは完全には効かない人もいるという内容です。


Figure 5
この図は、視床下部-脳下垂体-甲状腺の流れを説明する。『T4によって誘発されるD2のユビキチン化』は甲状腺ホルモンの恒常性に関与するが、そのバランスは臓器によって異なる。
TRHを発現するニューロンは下垂体門脈(hypophyseal portal blood)にTRHを分泌し、TRHは下垂体前葉(anterior pituitary)へと輸送される。下垂体前葉ではベータ細胞からTSHが分泌され、TSHは甲状腺を刺激してT3とT4を作らせる。
体内のほとんどの組織では、T4への曝露はユビキチン化によるII型脱ヨウ素酵素(D2)の不活化を促進し、D2はプロテアソーム系によって分解される。ユビキチン化したD2(UbD2)は脱ユビキチン化酵素(deubiquitinase/DUB)によってプロテアソーム分解から逃れることができる。
末梢での脱ヨウ素化は『T4への曝露によって誘導されるD2のユビキチン化』にきわめて影響を受けやすく、したがって、血清T4/T3比の上昇は軽度でもD2の不活化を促進し、その分画でのT4からT3への変換を低下させて、末梢のT3産生を抑制する。
同様の状況は脳の別の領域でも観察され、血清のT4/T3比が上昇すると、甲状腺機能低下症に典型的な遺伝子発現プロファイルにつながる。

それらとは対照的に、視床下部のD2は『T4曝露によるユビキチン化』による影響を受けにくい。さらに、視床下部では脱ユビキチン化が非常に効率的であるため、T4によるD2不活化は意味をなさない。
その結果、視床下部ではD2によるT3産生を経由するT4シグナルはきわめて効率的であるが、末梢ではD2によるT3産生は容易に阻害される。以前発表されたデータ(18)によれば、下垂体の向甲状腺細胞(thyrotroph;下垂体ベータ細胞)における状況は、おそらく、この視床下部と末梢という両極端の間の中間(intermediary)である。
これは、甲状腺切除(thyroidectomized/Tx)ラットにレボチロキシン(L-T4)を投与した際に観察された「TSH分泌の正常化」と「末梢でのT3産生(の低下)」との間の矛盾を説明する。

※tanycyte: タニサイト。脳室壁を構成する上衣細胞の中でも、細胞体から突起が神経実質内に伸び出して突起が脳表面にまで達しているような上衣細胞を特にタニサイトと呼ぶ。第三脳室壁によくみられる



脳や甲状腺にはFoxOが発現しているため、にきびの治療薬で影響を受ける人もいるようです。

http://ta4000.exblog.jp/17942429/
>FoxOは哺乳類の組織に広く発現しており、特に脂肪組織、脳、心臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、骨格筋、脾臓、甲状腺、そして精巣に多い。

http://ta4000.exblog.jp/18487331/
>Karadagらが47人のにきび患者を3ヶ月間イソトレチノインで治療したところ、遊離トリヨードサイロニン (T3)、甲状腺刺激ホルモン (TSH)、抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体の濃度、黄体化ホルモン (LH)、プロラクチン (PRL)、総テストステロン、そして朝のコルチゾールならびにACTHが減少したことを最近証明した。

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