Single-lesion biopsy may be insufficient to choose therapy targeting resistance mutations
February 5, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160205135008.htm
薬剤で標的にすることが可能な遺伝子突然変異をドライバとする転移性の腫瘍が標的治療薬に対して抵抗性になると、通常は次の治療法の選択をガイドするために転移病変の一箇所から生検し、抵抗性の原因となった新しい変異について試験する
マサチューセッツ総合病院(MGH)のがんセンターとトリノ大学(イタリア)の研究者は、このような戦略が標的となりうる別の突然変異を見逃してしまい、異なる転移を生じるかもしれないということを発見した
彼らはCancer Discovery誌の2月号で、血液中を循環する腫瘍DNA断片を分析することにより患者の癌の分子的な基盤の全体像をもたらす可能性を報告する
「治療を受けている間に転移病巣metastatic lesionの一つで生じる薬剤抵抗性の分子メカニズムは、同じ患者の隣接する病巣で抵抗性を促進するメカニズムとは全く異なりうることを我々は発見した」
MGHがんセンターの胃腸管癌センターでトランスレーショナル研究ディレクターであるRyan Corcoran, MD, PhD.は言う
「我々の結論は、転移病巣の一箇所から生検してスタンダードな分子試験を実施するのは不十分であり、血液中を循環する腫瘍DNAを調べることで患者の腫瘍に存在する分子的な多様性をよりうまく捉えられるかもしれないというものである
それにより効果的な治療法を選択して抵抗性に打ち勝つ能力が促進される」
著者らは結腸直腸癌が肝臓に転移した症例を報告する
この患者は抗EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブcetuximab (アービタックスErbitux) に15ヶ月間反応していた
患者が治療に抵抗性になると転移先の肝臓から一箇所の生検を実施し、抵抗性をもたらす新たな突然変異を分析した
この標本からはセツキシマブ治療の前には存在していなかったMEK1変異が見つかり、
MEK1変異は抗EGFR抗体への抵抗性のドライバとなることが結腸癌の実験室モデルで著者らによって実証された
この研究結果を元に、患者はMEK阻害剤のトラメチニブtrametinib(メキニストMekinist)と別の抗EGFR抗体であるパニツムマブpanitumumab(ベクティビックスVectibix)を組み合わせた治療を受けた
この組み合わせは同じ変異を持つセツキシマブ抵抗性腫瘍細胞の細胞モデルでは有効だった
患者は最初こそ組み合わせ治療に反応しているように思われた
しかし、3ヶ月後の腹部CTスキャンではMEK1突然変異の肝臓病変は縮小していたものの、別の転移病巣が増殖を続けていた
組み合わせ治療の開始前と治療中に取られていた血液サンプルから血液中を循環する腫瘍DNAの分析がトリノ大学のAlberto Bardelli, PhDら研究チームによって実施され、
治療開始時に取られた血液サンプルにはMEK1変異に加えて以前検出されなかったKRAS変異も存在していたことが明らかになった
組み合わせ治療の間に血液中で検出されるMEK1変異のレベルは低下したが、KRAS変異のレベルは劇的に上昇した
KRAS変異はMEK1変異病巣ではどこにも見つからなかったものの、組み合わせ治療の間も進行を続ける病巣の一つでは検出された
このことは別個の抵抗性変異が生じていて異なる転移の増殖を促進していたことを暗示implyする
循環する腫瘍DNAの分析では抵抗性の変異を両方とも同定できていたことから、
著者らは治療経過の監視には単一病巣の生検よりもそのような『液体生検liquid biopsies』が有効である可能性を強調する
液体生検は頻繁に繰り返すことが可能であり、患者にとっての不都合もほとんどない
「総合的に見て、我々の研究は
同じ患者の別個のdifferent転移病巣で進化する異なるdistinct抵抗性メカニズムが
その後の治療に対して腫瘍のそれぞれの転移病巣の間でどのようにして異なる応答を駆動するドライバとなりうるのかを示す
ハーバード・メディカルスクールの内科学助教授であるCorcoranは言う
「これらの結果は、抵抗性が生じた際に単一の腫瘍生検からの分子テストを元にした治療選択の際にあり得るpossible落とし穴を強調するが、それらは同時に腫瘍学において臨床的な決定をする際に液体生検を組み込むことの潜在的なpotential見込みをも例証するものである」
彼は付け加える
「近年、血液中を循環する腫瘍DNAを分析する我々の能力は劇的に進歩し、技術は進歩を続けている
しかし現在いくつかの分析が臨床的に利用可能であるものの、液体生検は腫瘍生検を完全に置き換えるまでには至っていない
治療への抵抗性を生じた時に患者の腫瘍をリアルタイムに監視するために液体生検の可能性を利用する最適な方法を、我々は学ぶ必要がある
それにより抵抗性のタイミングと原因の両方とも予測し、それにより治療を修正することができるようになる」
http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-15-1283
Tumor Heterogeneity and Lesion-Specific Response to Targeted Therapy in Colorectal Cancer.
結腸癌における腫瘍の不均一性と標的治療にする病変特異的な応答
MEK1 K57T
KRAS Q61H
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ab7f83d0f92133abb83530140b509ad7
より一般的でない2つの突然変異、KRASとBRAFは、生検の小さい検体では見逃される可能性がある。
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151223221343.htm
ALK変異に対してALK阻害剤→耐性のため別のALK阻害剤→耐性のため別のALK阻害剤→耐性のため最初のALK阻害剤を投与すると有効だった
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e833200.html
ALK遺伝子再構成を伴う52歳の女性患者が、ALKのリン酸化部位の二次的変異によりクリゾチニブ耐性となった。この二次的変異はC1156Yのアミノ酸置換をもたらすものと予測された。
耐性後、第2世代ALK阻害薬であるCeritinibを使用したが多発肝転移によりわずか5週間後に無効中止となり、ヒートショック蛋白90(HSP-90)阻害薬も無効だった。
続いてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を行ったところ6か月間は無増悪期間が得られたが、その後病勢進行に至り、クリゾチニブ再投与を試みたが無効だった。
続いて、第3世代ALK阻害薬であるLorlatinib(PF-06463922)の第I相試験に参加したところ、5週間後には41%の腫瘍縮小効果が得られたが、8か月後には肝転移が増悪した。
肝転移巣の再生検を行い遺伝子シーケンスを調べたところ、C1156Yの二次変異に加えて、L1198Fの三次変異を認めた。この変異はLorlatinibの結合部位に構造変化をもたらし、結合を阻害するものだった。
しかしながら、L1198Fは不思議なことにクリゾチニブの結合作用を増強する効果も併せ持っていることがわかり、これによってC1156Yのクリゾチニブ阻害効果が無効化されていた。
患者は遺伝子シーケンスの最中もLorlatinibの投与を受けていたが肝機能障害の進行により中止せざるを得なくなっていた。しかし、クリゾチニブの再々投与により臨床症状と肝機能障害は改善した。
February 5, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160205135008.htm
薬剤で標的にすることが可能な遺伝子突然変異をドライバとする転移性の腫瘍が標的治療薬に対して抵抗性になると、通常は次の治療法の選択をガイドするために転移病変の一箇所から生検し、抵抗性の原因となった新しい変異について試験する
マサチューセッツ総合病院(MGH)のがんセンターとトリノ大学(イタリア)の研究者は、このような戦略が標的となりうる別の突然変異を見逃してしまい、異なる転移を生じるかもしれないということを発見した
彼らはCancer Discovery誌の2月号で、血液中を循環する腫瘍DNA断片を分析することにより患者の癌の分子的な基盤の全体像をもたらす可能性を報告する
「治療を受けている間に転移病巣metastatic lesionの一つで生じる薬剤抵抗性の分子メカニズムは、同じ患者の隣接する病巣で抵抗性を促進するメカニズムとは全く異なりうることを我々は発見した」
MGHがんセンターの胃腸管癌センターでトランスレーショナル研究ディレクターであるRyan Corcoran, MD, PhD.は言う
「我々の結論は、転移病巣の一箇所から生検してスタンダードな分子試験を実施するのは不十分であり、血液中を循環する腫瘍DNAを調べることで患者の腫瘍に存在する分子的な多様性をよりうまく捉えられるかもしれないというものである
それにより効果的な治療法を選択して抵抗性に打ち勝つ能力が促進される」
著者らは結腸直腸癌が肝臓に転移した症例を報告する
この患者は抗EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブcetuximab (アービタックスErbitux) に15ヶ月間反応していた
患者が治療に抵抗性になると転移先の肝臓から一箇所の生検を実施し、抵抗性をもたらす新たな突然変異を分析した
この標本からはセツキシマブ治療の前には存在していなかったMEK1変異が見つかり、
MEK1変異は抗EGFR抗体への抵抗性のドライバとなることが結腸癌の実験室モデルで著者らによって実証された
この研究結果を元に、患者はMEK阻害剤のトラメチニブtrametinib(メキニストMekinist)と別の抗EGFR抗体であるパニツムマブpanitumumab(ベクティビックスVectibix)を組み合わせた治療を受けた
この組み合わせは同じ変異を持つセツキシマブ抵抗性腫瘍細胞の細胞モデルでは有効だった
患者は最初こそ組み合わせ治療に反応しているように思われた
しかし、3ヶ月後の腹部CTスキャンではMEK1突然変異の肝臓病変は縮小していたものの、別の転移病巣が増殖を続けていた
組み合わせ治療の開始前と治療中に取られていた血液サンプルから血液中を循環する腫瘍DNAの分析がトリノ大学のAlberto Bardelli, PhDら研究チームによって実施され、
治療開始時に取られた血液サンプルにはMEK1変異に加えて以前検出されなかったKRAS変異も存在していたことが明らかになった
組み合わせ治療の間に血液中で検出されるMEK1変異のレベルは低下したが、KRAS変異のレベルは劇的に上昇した
KRAS変異はMEK1変異病巣ではどこにも見つからなかったものの、組み合わせ治療の間も進行を続ける病巣の一つでは検出された
このことは別個の抵抗性変異が生じていて異なる転移の増殖を促進していたことを暗示implyする
循環する腫瘍DNAの分析では抵抗性の変異を両方とも同定できていたことから、
著者らは治療経過の監視には単一病巣の生検よりもそのような『液体生検liquid biopsies』が有効である可能性を強調する
液体生検は頻繁に繰り返すことが可能であり、患者にとっての不都合もほとんどない
「総合的に見て、我々の研究は
同じ患者の別個のdifferent転移病巣で進化する異なるdistinct抵抗性メカニズムが
その後の治療に対して腫瘍のそれぞれの転移病巣の間でどのようにして異なる応答を駆動するドライバとなりうるのかを示す
ハーバード・メディカルスクールの内科学助教授であるCorcoranは言う
「これらの結果は、抵抗性が生じた際に単一の腫瘍生検からの分子テストを元にした治療選択の際にあり得るpossible落とし穴を強調するが、それらは同時に腫瘍学において臨床的な決定をする際に液体生検を組み込むことの潜在的なpotential見込みをも例証するものである」
彼は付け加える
「近年、血液中を循環する腫瘍DNAを分析する我々の能力は劇的に進歩し、技術は進歩を続けている
しかし現在いくつかの分析が臨床的に利用可能であるものの、液体生検は腫瘍生検を完全に置き換えるまでには至っていない
治療への抵抗性を生じた時に患者の腫瘍をリアルタイムに監視するために液体生検の可能性を利用する最適な方法を、我々は学ぶ必要がある
それにより抵抗性のタイミングと原因の両方とも予測し、それにより治療を修正することができるようになる」
http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-15-1283
Tumor Heterogeneity and Lesion-Specific Response to Targeted Therapy in Colorectal Cancer.
結腸癌における腫瘍の不均一性と標的治療にする病変特異的な応答
MEK1 K57T
KRAS Q61H
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ab7f83d0f92133abb83530140b509ad7
より一般的でない2つの突然変異、KRASとBRAFは、生検の小さい検体では見逃される可能性がある。
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151223221343.htm
ALK変異に対してALK阻害剤→耐性のため別のALK阻害剤→耐性のため別のALK阻害剤→耐性のため最初のALK阻害剤を投与すると有効だった
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e833200.html
ALK遺伝子再構成を伴う52歳の女性患者が、ALKのリン酸化部位の二次的変異によりクリゾチニブ耐性となった。この二次的変異はC1156Yのアミノ酸置換をもたらすものと予測された。
耐性後、第2世代ALK阻害薬であるCeritinibを使用したが多発肝転移によりわずか5週間後に無効中止となり、ヒートショック蛋白90(HSP-90)阻害薬も無効だった。
続いてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を行ったところ6か月間は無増悪期間が得られたが、その後病勢進行に至り、クリゾチニブ再投与を試みたが無効だった。
続いて、第3世代ALK阻害薬であるLorlatinib(PF-06463922)の第I相試験に参加したところ、5週間後には41%の腫瘍縮小効果が得られたが、8か月後には肝転移が増悪した。
肝転移巣の再生検を行い遺伝子シーケンスを調べたところ、C1156Yの二次変異に加えて、L1198Fの三次変異を認めた。この変異はLorlatinibの結合部位に構造変化をもたらし、結合を阻害するものだった。
しかしながら、L1198Fは不思議なことにクリゾチニブの結合作用を増強する効果も併せ持っていることがわかり、これによってC1156Yのクリゾチニブ阻害効果が無効化されていた。
患者は遺伝子シーケンスの最中もLorlatinibの投与を受けていたが肝機能障害の進行により中止せざるを得なくなっていた。しかし、クリゾチニブの再々投与により臨床症状と肝機能障害は改善した。