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KIF1Bβはミトコンドリアの分裂とアポトーシスに重要

2016-02-01 06:06:19 | 
Gene often lost in childhood cancer crucial in cells' life or death decision

January 25, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125130025.htm

神経芽腫は子どもで3番めに多い腫瘍である
癌で死ぬ子どもの15%が神経芽腫であり、その多さの理由はこの腫瘍の悪性の性質と診断時の転移の頻度が一因である
神経芽腫の細胞ではしばしば1番染色体の領域が失われており、重要な腫瘍抑制遺伝子が存在すると考えられてきた

「我々のデータは1q36に局在するKIF1Bβが神経芽腫で失われる腫瘍抑制遺伝子である可能性を強く示唆する」
カロリンスカ研究所で微生物学・腫瘍細胞生物学の主任研究員principal investigatorであり、ウプサラ大学ルートヴィヒがん研究所(ストックホルム・スウェーデン)のAssistant MemberでもあるSusanne Schlisioは言う



神経芽腫は発達時に一時的に生じて神経系や他の組織の源となる『神経堤細胞neural crest cell』という前駆体細胞から発生し、
特定の変異により神経堤細胞を源とする腫瘍を発症するリスクが高い家族が存在する

研究チームは以前神経芽腫で変異する遺伝子が神経堤細胞の生死の決定に関与することを発見している
その研究によると、プログラム細胞死によって死ぬはずの神経堤細胞は、KIF1B-βが失われると細胞死を回避する
死ななかった細胞はのちに癌細胞に成長する

彼らは今回の研究でKIF1B-βが細胞死を引き起こすメカニズムを明らかにした
それによると、KIF1B-βは細胞の発電所であるミトコンドリアに影響し、それはカルシニューリンcalcineurinという酵素を活性化するという
また、Schlisioたちはミトコンドリアの断片化による細胞死を誘発するために必要とされる重要なシグナルがKIF1B-βの喪失で損なわれることを示した

 KIF1B-β→カルシニューリン活性化→ミトコンドリア断片化→プログラム細胞死

さらに、研究者は患者から生検で得られた神経芽腫の腫瘍を分析することによりKIF1B-βの喪失が予後の悪さならびに生存の低下と関連することを実証し、
加えてカルシウムに依存性のカルシニューリンによるシグナル伝達がどのように実行されるのかを説明できる全般的なメカニズムも明らかにした

これは重大な発見である
なぜなら、カルシニューリンによるシグナル伝達の制御の喪失が神経変性疾患や心臓病、癌といった多くの疾患に関与するようだからである

「我々はKIF1B-βが神経堤細胞ならびに神経堤細胞を源とする腫瘍の生死に関与すると結論する」
Susanne Schlisioは言う
「将来神経芽腫の新たな治療の開発を試みる際に、KIF1B-βが細胞死を誘導するメカニズムの知識が重要であることが示されるだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2015.12.029
The 1p36 tumor suppressor KIF 1Bβ is required for Calcineurin activation controlling mitochondrial fission and apoptosis.
カルシニューリン活性化はミトコンドリア分裂とアポトーシスを制御し、その活性化には1p36の腫瘍抑制因子KIF1Bβが必要である


Highlights
・1p36に局在する腫瘍抑制遺伝子のKIF1Bβは、カルシニューリンの活性を全般的に調節する
・KIF1Bβによるカルシニューリン活性化は、DRP1を介するミトコンドリア分裂を引き起こす
・KIF1Bβの喪失はミトコンドリアの伸長を引き起こし、発達過程のアポトーシスdevelopmental apoptosisを失敗させる
・NGF競合中のニューロンのアポトーシスの回避は腫瘍発症につながる

※神経成長因子/nerve growth factor(NGF): ニューロンはお互いにNGFを競合し、NGFが不足した余分なニューロンはアポトーシスする


Summary
KIF1Bβは1p36の腫瘍抑制因子の候補であり、発達中の交感神経系におけるアポトーシスを調節する

我々はKIF1Bβがカルシウムイオン(Ca2+)に依存的なホスファターゼであるカルシニューリンを活性化することを発見した
KIF1Bβはカルシニューリンとカルモジュリンの複合体を安定させることにより酵素の自己抑制を解除し、カルシニューリンが基質を認識できるようにする
カルシニューリンは細胞のCa2+への応答を仲介する重要なメディエーターであり、その調節不全は癌や心臓病、神経変性疾患や免疫疾患に関与する

我々はKIF1Bβがカルシニューリン依存的なDynamin-related protein 1 (DRP1) の脱リン酸化を通じてミトコンドリアの動態dynamicsに影響することを示す
DRP1はミトコンドリアの分裂fissionとアポトーシスを引き起こす

 KIF1Bβ→カルシニューリン活性化→DRP1脱リン酸化→ミトコンドリア分裂↑,アポトーシス↑

さらに、KIF1Bβは既知のあらゆるカルシニューリン基質すべての認識を発動させるactuate
このことはKIF1BβがCa2+シグナル伝達において大部分に共通のgeneralメカニズムに関与することを意味し、
加えてCa2+依存的なシグナル伝達がどのようにしてカルシニューリンによって実行されるかについても示唆する

神経芽腫と褐色細胞腫で以前明らかにされた病原性のKIF1Bβ変異はカルシニューリンの活性化にすべて失敗し、DRP1を脱リン酸化することができない

重要なことに、1p36がヘミ接合的に削除された神経芽腫では、KIF1BβとDRP1がサイレンシングされている
これはカルシニューリン調節不全とミトコンドリア動態がハイリスクかつ予後が悪い神経芽腫の一因であることを示す

※hemizygous: ヘミ接合の。2倍体生物にもかかわらず、存在する遺伝子が1コピーだけの状態

※神経芽腫と褐色細胞腫: どちらもカテコールアミン分泌腫瘍。ノルエピネフリンとエピネフリンの尿中代謝産物であるバニリルマンデル酸の試験によりスクリーニングされる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141105093500.htm
ミトコンドリアを分裂fissonさせるタンパク質Drp1を阻害すると、ドーパミンを分泌するニューロンの細胞死と機能低下は抑制された

[ドーパミン分泌ニューロン]
 Drp1→ミトコンドリア分裂→細胞死,機能低下

 Drp1↓→ミトコンドリア分裂↓→細胞死↓,機能低下↓

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms6244
Drp1 inhibition attenuates neurotoxicity and​dopamine release deficits in vivo



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160112113614.htm
パーキンソン病とPARK14

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10332
Impairment of PARK14-dependent Ca2 signalling is a novel determinant of Parkinson’s disease.

http://www.nature.com/ncomms/2016/160112/ncomms10332/fig_tab/ncomms10332_F7.html
Figure 7: PLA2g6 (PARK14)-dependent Ca2+ signalling as a novel determinant of PD.


 PARK14/PLA2G6変異→ストア作動性カルシウム流入↓→ER内カルシウム欠乏↓→オートファジー↓→DAニューロンの加齢による喪失→パーキンソン病