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銅を届けてALSを治療する

2016-02-05 06:06:00 | 
New therapy halts progression of Lou Gehrig's disease in mice

January 29, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160129090449.htm


(銅SODと亜鉛SODは生命にとって必須だが、ダメージを受けると有害になる

Credit: Photo courtesy of Oregon State University)

オレゴン州立大学の研究者は、筋萎縮性側索硬化症/amyotrophic lateral sclerosis(ALS)の研究に使われるマウスモデルの一種で疾患の進行を約2年間、本質的essentiallyに止めていると発表した
正常なマウスの寿命は約2年である

Neurobiology of Disease誌で発表された今回の研究結果は、これまでALSの治療法の探求の中で最も注目すべき一つである

「我々はこの治療がALSの進行を非常に強く止められることに衝撃を受けている」
オレゴン州立大学理科大学College of Scienceで生化学と生物物理学の特別教授distinguished professorである筆頭著者のJoseph Beckmanは言う
彼は州立大学のライナス・ポーリング研究所では主任研究員principal investigatorであり、Burgess and Elizabeth Jamieson Chair職の保持者でもある


何十年もの研究にもかかわらず、ALSへの治療は何一つ見つかっていない
できることと言えば寿命を1ヶ月足らず伸ばすだけである

今回の研究では『Cu-ATSM』という化合物による治療をマウスモデルで調査した
科学者は研究でのマウスの反応がヒトのそれと非常に似ているかもしれないと考えている

※銅-ATSM/Copper-ATSM(Cu-ATSM): ジアセチルビス(N(4)-メチルチオセミカルバゾナート二価銅/diacetylbis(N(4)-methylthiosemicarbazonato) copper(II)。Aはアセチル-、Tはチオ-、Sはセミ-、Mはメチル-。似たような化合物として、pyruvaldehyde bis(N4-methyl)thiosemicarbazone (PTSM)、glyoxal-bis-thiosemicarbazone (GTS) がある

ヒトが同じ反応をするかどうかはまだ不明だが、研究者たちはできるだけ早いヒトでの臨床試験ヘ向けて動いており、新しいアプローチの安全性と効能をテストしようとしている


ALSは1800年台後半に進行性の致命的な神経変性疾患として同定され、
1939年にはアメリカのベースボールで伝説的なルー-ゲーリックがALSと診断されたことにより全世界で知られるようになった

ALSは脊髄の運動ニューロンの細胞死と劣化によって起きることが知られており、
銅/亜鉛のスーパーオキシドジスムターゼ/superoxide dismutase(SOD)の突然変異と関連付けられている


Cu-ATSMは特にミトコンドリアが損傷した細胞へ銅を送り届けるのを助けることが知られ、そして脊髄の中にも到達する
ALSの治療が必要なのは脊髄の内部である

この化合物は毒性が低く、血液脳関門を容易に貫通し、ヒトでも既に低用量ではあるが使われている
実験動物でははるかに高いレベルでも十分な忍容性がある
Cu-ATSMを使用した後の不必要な銅は速やかに体内から排出される

しかしながら、専門家はこのアプローチが銅のサプリメントのように単純ではなく、銅がそれほど極端ではなくても毒性があると警告する
そのようなサプリメントはALSの患者にとって何ら価値はないだろうという


研究では新しい治療法を使うことでトランスジェニックマウスによるALSモデルの一種で進行を止めることが可能だった
このマウスは治療をしないと普通なら2週間以内に死ぬが、
治療をしたマウスの中には650日以上生き残るものがあり、
これはあらゆる過去の研究よりも500日以上も長い

実験の中には治療を開始してからそれを差し止めるものがあり、治療を止めたマウスは2ヶ月以内にALSの症状を示し始め、別の月には死んだ
しかし治療を再開するとマウスは体重が増加し、ALSの進行は再び止まって6ヶ月から12ヶ月生存した

「我々はなぜこの治療がマウスに効くのかについて確たる理解があり、
この治療は家族性familialと散発性sporadicのどちらでも有効であると予測される」
Beckmanは言う


今回の進歩は、ALSという疾患の進行への理解ならびに生化学の基礎研究における確かな科学的進歩を元にしている

今回の研究で使われたトランスジェニックマウスはヒトの『スーパーオキシドジスムターゼ/superoxide dismutase(SOD)のための銅シャペロン/copper chaperone for superoxide dismutase(CCS)』という遺伝子を持つ
CCSは銅をSODへと挿入するが、このSOD遺伝子を持つトランスジェニックマウスは治療をしないとすぐに死んでしまう

数年の研究の後、科学者たちは銅を届けることによるALS治療へのアプローチを開発した
それは脊髄の特定の細胞ならびに銅の欠乏によって弱ったミトコンドリアに銅を届けるというものだった
銅はSODを安定させる金属であり、抗酸化タンパク質のSODが適切に機能することは生命体にとって必須である
補因子cofactorである銅が欠乏するとSODはフォールディングされずに有害となり、運動ニューロンを殺す

このアプローチが有効なのはミトコンドリア機能の改善が一因であるというエビデンスがあり、これはおそらくパーキンソン病などの病態にも価値があるだろうと研究者は述べた

この治療は既にALSによって失われたニューロンを著しく回復できる可能性は低いが、診断後の開始でも進行を遅らせることは可能かもしれないと言う
ALSを引き起こすSODの突然変異のキャリアの治療にも使える可能性がある


http://dx.doi.org/10.1016/j.nbd.2016.01.020
Copper delivery to the CNS by CuATSM effectively treats motor neuron disease in SODG93A mice co-expressing the copper-chaperone-for-SOD.
CuATSMによる中枢神経系への銅の送達は、SODのための銅シャペロンを発現するSODG93A変異マウスにおける運動ニューロン疾患を効果的に治療する


Highlights
・SODG93Aを高発現するマウスでは、銅リガンドのCuATSMが寿命を最大25%まで延長する
・SODG93Aを高発現し、CCSも発現させたマウスでは、CuATSMは20ヶ月間生存する(500%)
・運動ニューロン疾患は、CuATSM治療を止めたり再開することにより、進行の停止や再発が可能である
・CCS発現と銅を組み合わせると、マウスの脊髄におけるSODタンパク質の量がほぼ倍になる
・この大多数の変異体SODは、成熟して活性のある状態(銅・亜鉛SOD)という形で見られる


Abstract
銅・亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ/superoxide dismutase(SOD)の変異体の過剰発現はマウスにALSを誘発し、
これは最も広く使われてきた神経変性モデルである
しかしながら、過去20年間、このマウスの寿命を薬理学的な薬剤で延長できるのはほんの2、3週に過ぎなかった

『SODへの銅シャペロン/Copper-Chaperone-for-SOD (CCS) 』というタンパク質はSODに銅を挿入することにより成熟を完了させるが、逆説的に、マウスに『ヒトのCCS』と『変異体SOD』を共に発現co-expressionさせると、誕生から二週以内に死ぬ

我々はCCSと変異体SODの共発現が脊髄内の銅の欠乏を引き起こすと仮定し、これらのマウスの仔にPET画像化の薬剤であるCuATSMを投与した
CuATSMは数分以内に中枢神経系(CNS)へ銅を送達することが知られている

CuATSMはCCSxSODマウスの仔の早期の死亡を妨げ、
脊髄腹側/ventral spinal cord/hypochordalの銅・亜鉛SODタンパク質を著しく増大させた

注目すべきことにRemarkably、CuATSMの治療の継続はマウスの生存を平均18ヶ月延長した
CuATSMの治療を止めると、マウスはALSに関する症状を示し、3ヶ月以内に死んだ

CuATSMによる治療を再開すると症状を示していたマウスは回復した
これは疾患の進行を制御する手段をもたらす

すべてのヒトALS患者もCSSを発現することから、SOD突然変異による家族性ALSも、CCSxSODマウスと同様にCuATSMの治療に反応する可能性があるという希望をもたらす


Introduction
(略)
この問題に異なる角度からアプローチすべく、我々はどのプロセスがSODマウスにおける運動ニューロン疾患の発症を『加速』するのかを調べ始めた

これまで研究で最も急速にALSを加速したのは、ヒトのCCSがヒトのSODと共に発現する時である
SODG93Aを『低』発現し、CCSを共発現するマウスは、ALSによって30日から50日で死ぬ
これはヒトCCSを発現しないマウスよりも8倍も早い (Son et al., 2007)

なぜCCSがSODG93Aの有害性を加速するのかについて理解することは重要である
なぜなら、トランスジェニックマウスにおけるヒトSODG93Aに対するマウスCCSの比率と比較して
ヒトのALS患者におけるSODに対するヒトCCSの発現の比率がより高いからである (Rothstein et al., 1999).

Son and Elliott (Son et al., 2008) は、『低』発現SODG93AxCCSマウスでは
銅依存性のシトクロムcオキシダーゼ(複合体IV)の活性が大幅に低下することを明確に示した
これは脊髄で銅の欠乏が示されたことと一致する

in vivoでの銅の配分は、銅への強い親和性を持つSODとの『親和性勾配affinity gradients』によって決定される (Banci et al., 2010)
したがって、低発現SODG93AxCCSマウスにおけるCCSの過剰発現はミトコンドリアへの銅のインポートを損なうということが提案されている


最も有望なALS治療法の一つは、CuATSMと銅の複合体である
これは低発現SODG93AとSODG37RというALSマウスモデルに保護的であり、寿命をそれぞれ15%または26%延長する (Soon, CP, et al., 2011 and McAllum, EJ, et al., 2013)

CuATSMはPET画像化薬剤として低酸素状態のヒトの腫瘍で使われ (Dearling et al., 2002)、毒性が低く、BBBを通過してALS患者の脳に数分で届く (Ikawa et al., 2015)

ATSMの半分moietyは低分子の疎水性hydrophobicリガンドであり、2+酸化状態の銅と親和性が高い (Dearling and Packard, 2010)
CuATSMがPETスキャニング薬剤として使われる論理的根拠rationaleは、これが『低酸素の組織』で選択的に銅をリリースするためであり、そこでの銅は1+酸化状態に還元される (Donnelly et al., 2012)



質量分析法法から明らかになったのは、SOD変異マウスの脊髄ではSODタンパク質の約半分が『銅・亜鉛SOD』だったものの、残る半分のSODは亜鉛のみで、銅は含まれなかったということである (Rhoads, TW, et al., 2011 and Rhoads, TW, et al., 2013)



関連サイト
http://alexkazu.blog112.fc2.com/blog-entry-469.html
SOD1変異モデルマウスは、ヒトG93A変異SOD1遺伝子を23コピー保有しています。その結果、運動神経細胞で高濃度のヒトG93A変異SOD1蛋白質が発現することになります。
研究者らは、このモデルマウスを、銅シャペロン蛋白質(hCCS)過剰発現マウスと交配したところ、生存期間が極端に短縮することを発見しました。
SOD1蛋白質は、銅との親和性が最も強い蛋白質の1つであり、hCCSによる銅の枯渇が致死的であることをあらわしています。



関連サイト(PDF)
http://www.tcichemicals.com/ja/jp/support-download/tcimail/backnumber/article/135dr.PDF
さて,この SOD1 酵素における変異と ALS 発症とがどのように関連しているかが一番の関心事である。 SOD 酵素の方から言えば,変異による効果としてスーパーオキサイドイオンの分解能が問題となる。実際に,いくつかの変異型 SOD では SOD 活性は正常型の 40 ~ 50%までに落ち込んでいるが,しかしほとんど活性が落ちていないものも多い 2,9)。もともとスーパーオキサイドイオンそのものの酸化力は小さく,それ自身での細胞障害を起こす可能性は低いのである。
現在の中心的な考え方は,「変異SOD1が構造変化によって神経細胞に対する細胞毒性機能を新たに獲得したことが原因で,ニューロンの変性が起きる」というものである 11)。 これを,“ gain-of-function”と呼んでいる。
この変異 SOD に由来する毒性の原因はなんであろうか。多くの SOD の構造解析の結果から,変異はβバレル構造の骨格となる分子表面の β鎖に集中して存在しており,それが原因でβバレル構造が歪み, SOD1 サブユニットの二量体形成( 図 1) 12) が阻害され, SOD1 が不安定化することが指摘されている。この構造不安定性のためにSOD酵素の会合体形成が進行することが毒性の最大の原因であると考える研究者が多い 9,13,14)。

(略)以上の事実から,ALS と関連している SOD の変異は一般的には銅(II)イオンとは離れたところで生じており,その影響は銅(II)イオンの周りのわずかな構造変化しか引き起こさないが,しかし過酸化水素の捕獲・活性化とは密接に関連していると推定される。これらのことから変異SODではSOD作用の途中で生成する過酸化水素の高い反応性が原因で二量体構造の表面相互作用が変化し,モノマーへ解離が起きやすくなっていると推測され,これより“ gain-of-function”の発現機構が,初めて明らかにされたのである。 

最近の研究から,ALS 発症とその進行の機構は違うという考えが提案されている。すなわち,会合体の形成は必ずしも ALS 発症とは関係していないという考えである 32)。これはアミロイド蛋白の会合とアルツハイマー病に対する最近の考えと似ている 33,34)。ALS の場合,構造的に不安定な二量体SODからミスフォールデングした SODモノマーが形成し, それが他の分子と会合することで細胞死を導くと考えたほうが合理的であろう 35-37)。

過酸化水素で wild-type SOD も構造変化を受ける事実からして 29), SOD 二量体構造がいわゆる“ gain-of-function” 以外の原因で壊れる可能性を調べることは, 孤発性ALS発症を考える上でも非常に重要な問題であると思っている。酸化ストレスというと,「活性酸素」となるが,私は過酸化水素と鉄イオンが,酸化ストレスを引き起こす最大の原因であると指摘してきた 6,30)。多量のnon-specific iron ionの形成は,症状的には「鉄過剰症」と呼ばれているが,これは単に鉄イオンを過剰に摂取する以外に,アルミニウム・マンガンイオンの多量の摂取・蓄積によっても引き起こされるので,注意しなければいけない 6,41)。最新のレビューに,「アルツハイマー病に対するアルミニウムイオン原因説には科学的根拠は得られておらず, この説への関心は弱まっている」 , と記載されているが 42),これはとんでもない認識不足である 41)。



関連サイト
http://www.als.gr.jp/staff/document/kiso/kiso_41.html
変異SOD1は活性酸素種の過剰な産生を引き起こし、増大した酸化ストレスがβ-カテニン/AKT/ FoxO1経路へ作用し癒着帯タンパクの発現を変え、血液脊髄関門(blood spinal cord barrier: BSCB)の完全性を障害していると考えられた。