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異数性はどのようにして腫瘍につながるか

2016-02-26 06:06:30 | 
Scientists shed light on how cells with an incorrect number of chromosomes lead to tumor development

February 9, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160209090714.htm


(この画像ではハエの羽組織の前駆体細胞が、その発現する様々なタンパク質によって色付けされている
このハエモデルは、染色体不安定性chromosome instability、異数性aneuploidy、腫瘍発生tumorigenesisという三者の関係性を調べるために実験で用いられた

Credit: Lara Barrio, IRB Barcelona)

異数性細胞/aneuploid cells、つまり染色体の数が異常な細胞はヒトのほとんどの腫瘍で見つかる
バルセロナ生物医学研究所/Institute for Research in Biomedicine(IRB)Barcelonaはショウジョウバエで研究を行い、
生き残った異数性細胞がどのようにして腫瘍の発達を促進するのかを明らかにした

約4万3千のヒトの腫瘍を分析した最近の研究により、充実性腫瘍solid tumourの68%が異数性であり、染色体数の異常が明らかになった
科学者は近年、この異数性は腫瘍発達の一因なのか、それとも癌細胞のゲノム不安定性に付随する影響collateral effectなのかを明らかにしようと試みてきた(異数性は腫瘍発達の原因なのか、結果なのか)

※collateral effect: 記事中では"co-lateral effect"


Developmental Cell誌で発表された今回の研究はICREA(スペイン・カタロニア)の研究者であるMarco Milán率いる研究グループによってIRBバルセロナで行われたものだ
この研究結果はゲノムの不安定性と異数性、そして癌との間の関係についての詳細をもたらし、
異数性細胞によって引き金を引かれる分子・細胞メカニズムがどのようにして腫瘍を生じるのかを説明する

彼らはショウジョウバエの『羽原基wing primordium』をモデルとして使い、異数性と腫瘍発生についての研究を実施した
この組織は単層構造の上皮epithelium organised into a single layerであり、20個の細胞から2~3日で3万個にまで成長する
これらの特徴を考慮すると、ゲノム不安定性を生じ、増殖する組織で異数性細胞を引き出す分子・細胞メカニズムを細かく調べるためには、この羽原基という組織は理想的なシステムである


異数性細胞: 第一歩は自殺
Aneuploid cells: first step, suicide

研究チームは、異数性細胞がまず最初にプログラムされた細胞の自殺であるアポトーシスを活性化することを観察した
同時に、この差し迫ったimminent細胞の喪失を相殺しようとして異数性細胞は隣の細胞に『分裂して増殖しろ』と指示するシグナルを送っていた
これは正常な組織(この場合はハエの羽)の発達を確実にして保証ensureさせようとするものだった

次に異数性細胞はさらなる異数性aneuploidyを阻止するために一連のDNA修復シグナルを活性化し、抗腫瘍的な保護経路も活性化した

「我々は分子・細胞プロセスのカスケードを、そして修復保護と補償のメカニズムを描写してきた
このメカニズムは異数性細胞の中で生じ、そして細胞の外に対しても引き起こされ、
それらは同時に、または結果として起きる」
そう説明するのはpostdoctoral researcherで筆頭著者のMarta Clementeである


しかし、もし異数性細胞が何とかして生き残ってしまったら、何が起きるのか?

研究者が細胞死を妨害したところ、異数性細胞に由来する増殖シグナルが観察された
それは元々は健康な組織を維持するために働くシグナルだが、今や腫瘍の発達を促進していた


この研究は、癌の発症におけるゲノム安定性のダーウィン進化論的な見方perspectiveを広げるものであり、「それは腫瘍発生におけるゲノム安定性が果たす役割についてのおそらく不完全な見方である」とMilánはいう
ここでいう進化論的な見方というのは、腫瘍促進遺伝子がランダムに増大するとともに腫瘍抑制遺伝子がランダムに失われ、そうした増減が最終的に腫瘍細胞を促進するという考え方を元にしたものである

「どういうわけかsomehowこのゲノム不安定性に由来する異数性は代謝的ストレスも引き起こし、
それは次に、腫瘍の増殖と発達を促進する一連のシグナルの発現につながる」


異数性がほとんどの癌に共通することから、Marco Milánは異数性細胞の排他的exclusivelyな除去に向けた治療を探すことが癌に取り組むための優れた戦略をもたらすかもしれないと考察considerする

「今回の基礎生物学研究は、異数性細胞によって引き起こされる分子的なつながりについての新たな情報をもたらす
これは癌と戦うための治療を研究する際に最も重要なステップである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.01.008
Gene Dosage Imbalance Contributes to Chromosomal Instability-Induced Tumorigenesis.
遺伝子量の不均衡は染色体不安定性によって誘発される腫瘍発生の一因である


Highlights
・染色体全体の遺伝子不均衡gene imbalancesは、異数性によって誘発される細胞死に寄与する
・染色体全体の遺伝子の量的不均衡gene dosage imbalancesは、腫瘍発生的反応を誘導する
・DDR経路は、染色体不安定性/chromosomal instability (CIN) による異数性と腫瘍発生のレベルを低下させる
・遺伝子の量的不均衡はROSを誘導し、これはCINによる腫瘍発生に寄与する

※DDR経路: DNA damage response pathway/DNA損傷応答経路


Summary
染色体不安定性/chromosomal instability (CIN) は、癌の突然変異のしやすさの源であると考えられる
しかしながら、この不安定性の結果としてしばしば異数性を生じ、これは細胞の適応度fitnessを損なう

今回我々は
ショウジョウバエの量的補償メカニズム/dosage compensation mechanism (DCM) を使い、
染色体全体の遺伝子の量的不均衡gene dosage imbalanceが、
染色体不安定性による異数性の有害な影響とその腫瘍形成を促進pro-tumorigenicする作用の一因であることを実証した


我々は
CINによって誘発されるX染色体数の変化が引き起こす有害な影響を、DCMが再セットresetすることで釣り合わせるcounterbalanceという証拠を提供する

重要なことに、
異数性細胞はROS産生、JNK依存的な細胞死、そしてアポトーシス阻害による腫瘍発生という点で細胞に影響を与えるが、
DCMへの干渉はそれらを真似るのに十分であるsuffice

我々は
JNK活性化におけるROSの役割ならびに
CINの有害な影響を緩衝する様々な細胞と組織全体のメカニズムを明らかにする
それにはDNA損傷修復、p38経路の活性化、そして補償的な増殖を促進するサイトカイン産生が含まれる

我々のデータは
CINによって誘発される細胞死と腫瘍発生を相殺counteractする強固な補償メカニズムの存在を明らかにする



関連サイト
http://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/~hisaom/HMwiki/index.php
遺伝子コピー数が変動するとパートナー遺伝子との量的不均衡(遺伝子量不均衡)により細胞機能に悪影響を及ぼすような遺伝子の事を「量的均衡遺伝子」(Dosage Balance Gene)と呼ぶ。


<コメント>
補償的な増殖を促進するサイトカインが具体的に何なのかはAbstractには書かれていないが、
Referenceを見る限りではIL-1αとIL-6が増殖を促進するようだ(肝細胞癌では)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18691550
Hepatocyte necrosis induced by oxidative stress and IL-1 alpha release mediate carcinogen-induced compensatory proliferation and liver tumorigenesis.
酸化ストレスとIL-1α分泌によって誘発される肝細胞の壊死は、発癌物質による補償的な増殖と肝臓の腫瘍発生を仲介する


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2707922/figure/F7/

 p38α,IKKβ↓─┤ROS↑─┤MKP↓─┤JNK↑→細胞死↑→IL-1α↑→IL-1R/MyD88↑→[クッパー細胞]IL-6↑→補償的増殖↑→肝癌↑