DNA breaks in nerve cells' ancestors cluster in specific genes
Study reveals new avenue for thinking about brain development, brain tumors and neurodevelopmental/psychiatric diseases
February 11, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211184955.htm
(神経幹細胞・前駆細胞で頻発するDNA二本鎖切断クラスター/Recurrent DSB clusters(RDC)を示す
Credit: Boston Children's Hospital)
Breakable genes may promote disease, brain cell diversity
Date:February 11, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211141341.htm
ボストン小児病院、ハーバード・メディカルスクール(HMS)、ハワードヒューズ医学研究所の『細胞分子医学プログラム/Program in Cellular and Molecular Medicine (PCMM) 』の研究者たちは、
発達中の脳細胞のゲノムにはDNAが他よりも非常に壊れやすい27箇所のクラスターclusters/ホットスポットhotspotsが存在することを明らかにしてCell誌で報告した
それらのホットスポットは脳腫瘍や多くの神経発達的・神経精神病学的な病態に関与する遺伝子に現れており、
このことはこれらの病態の源についての、さらにはどのようにして脳が様々な回路を生成するのかという新たな疑問を生じる
今回の研究のルーツは30年以上前にさかのぼる
PCMMのディレクターであり研究首席著者study senior authorでもあるFrederick Alt, PhDたちは、腫瘍と癌遺伝子oncogene、DNA切断/DNA修復との間のつながり、特にその免疫細胞と神経細胞におけるつながりlinksの調査を初めて開始した
一連の研究の中でAltのラボは、DNA修復経路の一つである非相同末端結合/non-homologous end joining (NHEJ) を欠損させてDNA鎖切断の修復ができなくなった神経細胞が
発達の初期に死に絶えるか髄芽腫medulloblastomaという脳腫瘍を生じることを発見した
彼らはなぜこの経路が失われるとそのような劇的な影響があるのかを理解しようと奮闘した
「我々はDNAの切断について非常に多くのことを考察してきた」
遺伝学の教授であり、ハーバードでは小児学のCharles A. Janeway ProfessorでもあるAltは言う
「そして多くの人々が長年にわたって、DNA切断が神経発達における多様性diversityを形作るために重要でありうるという可能性を考えてきた
しかし、NHEJが欠けていると神経系発達がほぼ完全に阻止されることにつながるという、神経細胞におけるそのような切断を確認するための方法は存在しなかった」
最近になり、AltのラボはDNA切断を非常に高解像度でゲノム全体にマッピングする手法として『ハイスループット・ゲノムワイド・トランスロケーション・シーケンシング (HTGTS) 』を設計した
HTGTSは元々、癌ではどのようにして遺伝子が再編成reshuffleされるか、どうやって転座translocateが生じるかを理解するために開発されたが、
AltのラボはこれをCRISPR遺伝子編集の正確さを計測するためにも利用し、加えてゲノムが遺伝子を切断すべきでない箇所で切断しないようにするためにどのようにしてDNA切断酵素を『サンドボックスに入れておく』か詳しく調べるprobeためにも使い始めた
※sandbox: サンドボックス。コンピューターのセキュリティ用語
今回の研究でAltのラボメンバーたちはHTGTSと情報工学informaticsを使い、マウスの神経幹細胞・前駆細胞/neural stem and progenitor cell(NSPC)におけるDNA切断のパターンを複製ストレスreplication stressという条件下で探索してマッピングした
※NSPC: 脳のニューロン、アストロサイト、乏突起膠細胞oligodendrocyteを生じる細胞
実験によりNSPCのゲノムが頻繁に切断される27箇所のホットスポットが明らかになった
印象的だったのはstrikingly、それら27のホットスポットが27の遺伝子それぞれに散らばって存在していたことである
27の遺伝子には多くの特徴が共通していた
・27の遺伝子全てが長く、大部分が10万塩基以上で、多くのエキソンと長いイントロンを持つ
・そのほとんどが遅いレプリケーターlate replicatorである。つまり細胞複製プロセスで遅くにコピーされる
・それらはニューロン表面に見られるタンパク質をコードし、そのほとんどはニューロンがコミュニケーションするのを助ける役目を果たす(例えばシナプス形成や細胞間接着)
・27の遺伝子の内、24の遺伝子が、腫瘍抑制と神経学的病態のどちらか、または両方と関連がある(病態は例えば自閉症スペクトラム障害、統合失調症、双極性障害)
「神経細胞でのDNA切断が重要であるという仮説にフィットするような遺伝子セットは、もう見つからないかもしれないという夢を見るくらいだった」とAltは声を上げる
発見されたDNA切断のほとんどが遺伝子のイントロンで頻繁に現れていたことから、研究チームはホットスポットが明確な目的を持っていると推測するに至った
つまり『脳が様々な回路のレパートリーを生成するのを促進する』ためにわざと切断するのだろうという
「二本鎖切断のほとんどがエキソン間で生じるため、それらはおそらく場合によってはin some casesエキソンの一つか二つを消去させ、潜在的に遺伝子が異なるタンパク質を作れるようにするのだろう」
Altはそのように説明する
様々な方法で遺伝子のエキソンをスプライシングすることにより、ゲノムは一つの遺伝子のコードから複数のバリエーションのタンパク質を作る可能性がある
そうしてNPSCから発達するニューロンは自分自身を配線wireし、独特な神経回路を形成する
「我々が明らかにした27の遺伝子の一つがコードするタンパク質はニューレキシンneurexinというもので、このタンパク質の形態は潜在的に1000を越える
そのうちのいくつかはニューロン間を異なる強さで結合する」
Altラボのpostdoctoral fellowであるWeiは言う
「我々の発見は様々なシナプス結合synaptic connectionのメカニズムをもたらし、ニューロン間の接触を異なるものにする」
※ニューレキシン: 多数のアイソフォームからなる神経細胞表面タンパク質で、α-ニューレキシンを欠損するマウスではシナプスでの伝達物質の放出が著しく障害される
「神経が発達する間、ヒトは比較的限られた数のNSPCから1000億のニューロンで脳全体を形成する」
ハーバードで小児科学の助教授assistant professorであるSchwerは付け加える
「この状況でDNA切断が頻発することにどのような潜在的な利点が存在するのか?
それは回路とシナプスの様々な組み合わせをサンプルとして抽出するための方法かもしれない
それはほとんど進化のミニチュアであるかのようだ」
「我々はこれが当てはまるのか確信してはいない」
彼は続ける
「しかし、神経発達中に生じるこれらの複製ストレスと関連する切断は、これまで認識されてきた神経細胞の多様性に寄与する方法でありうることを今回我々は示す
この多様性を持つ神経細胞が最終的に成熟した脳へと発達する」
また、研究チームは今回の発見に基いて、これら27の遺伝子によって影響を受ける神経発達中の複製ストレスと関連するDNA損傷が、神経発達的な疾患または神経精神病学的な疾患を促進すると推測している
「これらの遺伝子のほとんど全てが、神経発達的な要素を持つ疾患と関連する」
Schwerは言う
「もし遺伝子内の破損を効率的に修復できなければ、そのヒトは神経発達疾患に罹患しやすくなるのかもしれない/it could be that」
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.12.039
http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(15)01703-1
Long Neural Genes Harbor Recurrent DNA Break Clusters in Neural Stem/Progenitor Cells.
神経幹細胞・前駆細胞における長いニューロンの遺伝子は、頻発するDNA切断クラスターを持つ
(1番染色体から順に、
Bai3(Adhesion G Protein-Coupled Receptor B3)、
Pard3b(Par-3 Family Cell Polarity Regulator Beta)、
Nfia(転写因子NFIA)、
Magi2(Membrane Associated Guanylate Kinase, WW And PDZ Domain Containing 2)、
Sdk1(Sidekick Cell Adhesion Molecule 1)、
Ptn(プレイオトロフィン)、
Ctnna2(Catenin (Cadherin-Associated Protein), Alpha 2)、
Csmd1(CUB And Sushi Multiple Domains 1)、
Cdh13(カドヘリン13)、
Wwox(WW Domain Containing Oxidoreductase)、
Ntm(Neurotrimin)、
Grik2(Glutamate Receptor, Ionotropic, Kainate 2)、
Dgkb(Diacylglycerol Kinase, Beta 90kDa)、
Npas3(転写因子Neuronal PAS Domain Protein 3)、
Mdga2(MAM Domain Containing Glycosylphosphatidylinositol Anchor 2)、
Nrxn3(ニューレキシン3)、
※上流プロモーターからはEGF様配列を持つαが、下流プロモーターからは配列を持たないβアイソフォームが形成される
Gpc6(グリピカン6)、
Ctnnd2(Catenin (Cadherin-Associated Protein), Delta 2)、
Oxr1(Oxidation Resistance 1)、
Csmd3(CUB And Sushi Multiple Domains 3)、
Rbfox1(RNA Binding Protein, Fox-1 Homolog (C. Elegans) 1)、
Fgf12(Fibroblast Growth Factor 12)、
Lsamp(Limbic System-Associated Membrane Protein)、
Cadm2(Cell Adhesion Molecule 2)、
Nrxn1(ニューレキシン1)、
※By using alternate promoters, splice sites and exons, predictions of hundreds or even thousands of distinct mRNAs have been made.
Dcc(DCC Netrin 1 Receptor)、
Prkg1(Protein Kinase, CGMP-Dependent, Type I))
Highlights
・神経幹細胞・前駆細胞における『頻発するDNA二本鎖切断クラスター/Recurrent DSB clusters (RDCs)』を明らかにする
・全てのRDCsは遺伝子内に存在し、そのほとんどが長い遺伝子で、転写され、複製が後期である
・ほとんどのRDC遺伝子はシナプス形成と神経細胞接着のどちらか/両方に関与する
・複製ストレスと関連する脆弱な箇所fragile siteをヌクレオチドレベルの解像度で提供する
※fragile site: 脆弱部、染色体不安定部
Summary
27の神経幹細胞・前駆細胞(NSPC)の頻発DSBクラスター(RDC)のほとんどは、アフィディコリンaphidicolinによる弱い複製ストレスで検出された
これは複製関連ゲノム脆弱部のヌクレオチドレベル解像の視点をもたらす
※アフィディコリンaphidicolin: 抗生物質。真核生物のα型DNAポリメラーゼを特異的に強く阻害する
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211141341.htm
今回の研究ではDNAをわざと切断して『エサbait』として利用した
この切断された箇所は、既に切断されている箇所と結合するため、元々どこが切断されていたかを示す
そうして特定された27のクラスター全てが、ゲノムのほとんどが遺伝子ではないにも関わらず、遺伝子の中に存在した
27の内15の遺伝子はニューロンが近くにくっつけるようにするタンパク質をコードし、22の遺伝子がシナプスの形成または活性に関与していた
なぜ壊れやすいのかはおそらく遅れて転写されるためで、転写するための分子機構と複写のための分子機構が衝突collideするのかもしれないという
この衝突が二本鎖切断につながる可能性があると研究者は示唆する
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151130084043.htm
癌と関連すると思われていたBRCA1は認知症にも関係がある
脳は記憶する際にDNAを切断しているため、DNAを修復するBRCAは記憶にも重要
関連サイト
http://ameblo.jp/mojio914/entry-11469645587.html
HHMI/Howard Hughes Medical Institute(ハワードヒューズ医学研究所)は実際には研究所なんてないんですけど、お金だけを配っている団体があるんですよね。
お金をもらう、すなわちHHMI investigatorになるというのは最高に名誉なことで、アメリカではトップクラスのサイエンティストであることを意味します(うちのボスもその一人になるわけですが)。
Study reveals new avenue for thinking about brain development, brain tumors and neurodevelopmental/psychiatric diseases
February 11, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211184955.htm
(神経幹細胞・前駆細胞で頻発するDNA二本鎖切断クラスター/Recurrent DSB clusters(RDC)を示す
Credit: Boston Children's Hospital)
Breakable genes may promote disease, brain cell diversity
Date:February 11, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211141341.htm
ボストン小児病院、ハーバード・メディカルスクール(HMS)、ハワードヒューズ医学研究所の『細胞分子医学プログラム/Program in Cellular and Molecular Medicine (PCMM) 』の研究者たちは、
発達中の脳細胞のゲノムにはDNAが他よりも非常に壊れやすい27箇所のクラスターclusters/ホットスポットhotspotsが存在することを明らかにしてCell誌で報告した
それらのホットスポットは脳腫瘍や多くの神経発達的・神経精神病学的な病態に関与する遺伝子に現れており、
このことはこれらの病態の源についての、さらにはどのようにして脳が様々な回路を生成するのかという新たな疑問を生じる
今回の研究のルーツは30年以上前にさかのぼる
PCMMのディレクターであり研究首席著者study senior authorでもあるFrederick Alt, PhDたちは、腫瘍と癌遺伝子oncogene、DNA切断/DNA修復との間のつながり、特にその免疫細胞と神経細胞におけるつながりlinksの調査を初めて開始した
一連の研究の中でAltのラボは、DNA修復経路の一つである非相同末端結合/non-homologous end joining (NHEJ) を欠損させてDNA鎖切断の修復ができなくなった神経細胞が
発達の初期に死に絶えるか髄芽腫medulloblastomaという脳腫瘍を生じることを発見した
彼らはなぜこの経路が失われるとそのような劇的な影響があるのかを理解しようと奮闘した
「我々はDNAの切断について非常に多くのことを考察してきた」
遺伝学の教授であり、ハーバードでは小児学のCharles A. Janeway ProfessorでもあるAltは言う
「そして多くの人々が長年にわたって、DNA切断が神経発達における多様性diversityを形作るために重要でありうるという可能性を考えてきた
しかし、NHEJが欠けていると神経系発達がほぼ完全に阻止されることにつながるという、神経細胞におけるそのような切断を確認するための方法は存在しなかった」
最近になり、AltのラボはDNA切断を非常に高解像度でゲノム全体にマッピングする手法として『ハイスループット・ゲノムワイド・トランスロケーション・シーケンシング (HTGTS) 』を設計した
HTGTSは元々、癌ではどのようにして遺伝子が再編成reshuffleされるか、どうやって転座translocateが生じるかを理解するために開発されたが、
AltのラボはこれをCRISPR遺伝子編集の正確さを計測するためにも利用し、加えてゲノムが遺伝子を切断すべきでない箇所で切断しないようにするためにどのようにしてDNA切断酵素を『サンドボックスに入れておく』か詳しく調べるprobeためにも使い始めた
※sandbox: サンドボックス。コンピューターのセキュリティ用語
今回の研究でAltのラボメンバーたちはHTGTSと情報工学informaticsを使い、マウスの神経幹細胞・前駆細胞/neural stem and progenitor cell(NSPC)におけるDNA切断のパターンを複製ストレスreplication stressという条件下で探索してマッピングした
※NSPC: 脳のニューロン、アストロサイト、乏突起膠細胞oligodendrocyteを生じる細胞
実験によりNSPCのゲノムが頻繁に切断される27箇所のホットスポットが明らかになった
印象的だったのはstrikingly、それら27のホットスポットが27の遺伝子それぞれに散らばって存在していたことである
27の遺伝子には多くの特徴が共通していた
・27の遺伝子全てが長く、大部分が10万塩基以上で、多くのエキソンと長いイントロンを持つ
・そのほとんどが遅いレプリケーターlate replicatorである。つまり細胞複製プロセスで遅くにコピーされる
・それらはニューロン表面に見られるタンパク質をコードし、そのほとんどはニューロンがコミュニケーションするのを助ける役目を果たす(例えばシナプス形成や細胞間接着)
・27の遺伝子の内、24の遺伝子が、腫瘍抑制と神経学的病態のどちらか、または両方と関連がある(病態は例えば自閉症スペクトラム障害、統合失調症、双極性障害)
「神経細胞でのDNA切断が重要であるという仮説にフィットするような遺伝子セットは、もう見つからないかもしれないという夢を見るくらいだった」とAltは声を上げる
発見されたDNA切断のほとんどが遺伝子のイントロンで頻繁に現れていたことから、研究チームはホットスポットが明確な目的を持っていると推測するに至った
つまり『脳が様々な回路のレパートリーを生成するのを促進する』ためにわざと切断するのだろうという
「二本鎖切断のほとんどがエキソン間で生じるため、それらはおそらく場合によってはin some casesエキソンの一つか二つを消去させ、潜在的に遺伝子が異なるタンパク質を作れるようにするのだろう」
Altはそのように説明する
様々な方法で遺伝子のエキソンをスプライシングすることにより、ゲノムは一つの遺伝子のコードから複数のバリエーションのタンパク質を作る可能性がある
そうしてNPSCから発達するニューロンは自分自身を配線wireし、独特な神経回路を形成する
「我々が明らかにした27の遺伝子の一つがコードするタンパク質はニューレキシンneurexinというもので、このタンパク質の形態は潜在的に1000を越える
そのうちのいくつかはニューロン間を異なる強さで結合する」
Altラボのpostdoctoral fellowであるWeiは言う
「我々の発見は様々なシナプス結合synaptic connectionのメカニズムをもたらし、ニューロン間の接触を異なるものにする」
※ニューレキシン: 多数のアイソフォームからなる神経細胞表面タンパク質で、α-ニューレキシンを欠損するマウスではシナプスでの伝達物質の放出が著しく障害される
「神経が発達する間、ヒトは比較的限られた数のNSPCから1000億のニューロンで脳全体を形成する」
ハーバードで小児科学の助教授assistant professorであるSchwerは付け加える
「この状況でDNA切断が頻発することにどのような潜在的な利点が存在するのか?
それは回路とシナプスの様々な組み合わせをサンプルとして抽出するための方法かもしれない
それはほとんど進化のミニチュアであるかのようだ」
「我々はこれが当てはまるのか確信してはいない」
彼は続ける
「しかし、神経発達中に生じるこれらの複製ストレスと関連する切断は、これまで認識されてきた神経細胞の多様性に寄与する方法でありうることを今回我々は示す
この多様性を持つ神経細胞が最終的に成熟した脳へと発達する」
また、研究チームは今回の発見に基いて、これら27の遺伝子によって影響を受ける神経発達中の複製ストレスと関連するDNA損傷が、神経発達的な疾患または神経精神病学的な疾患を促進すると推測している
「これらの遺伝子のほとんど全てが、神経発達的な要素を持つ疾患と関連する」
Schwerは言う
「もし遺伝子内の破損を効率的に修復できなければ、そのヒトは神経発達疾患に罹患しやすくなるのかもしれない/it could be that」
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.12.039
http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(15)01703-1
Long Neural Genes Harbor Recurrent DNA Break Clusters in Neural Stem/Progenitor Cells.
神経幹細胞・前駆細胞における長いニューロンの遺伝子は、頻発するDNA切断クラスターを持つ
(1番染色体から順に、
Bai3(Adhesion G Protein-Coupled Receptor B3)、
Pard3b(Par-3 Family Cell Polarity Regulator Beta)、
Nfia(転写因子NFIA)、
Magi2(Membrane Associated Guanylate Kinase, WW And PDZ Domain Containing 2)、
Sdk1(Sidekick Cell Adhesion Molecule 1)、
Ptn(プレイオトロフィン)、
Ctnna2(Catenin (Cadherin-Associated Protein), Alpha 2)、
Csmd1(CUB And Sushi Multiple Domains 1)、
Cdh13(カドヘリン13)、
Wwox(WW Domain Containing Oxidoreductase)、
Ntm(Neurotrimin)、
Grik2(Glutamate Receptor, Ionotropic, Kainate 2)、
Dgkb(Diacylglycerol Kinase, Beta 90kDa)、
Npas3(転写因子Neuronal PAS Domain Protein 3)、
Mdga2(MAM Domain Containing Glycosylphosphatidylinositol Anchor 2)、
Nrxn3(ニューレキシン3)、
※上流プロモーターからはEGF様配列を持つαが、下流プロモーターからは配列を持たないβアイソフォームが形成される
Gpc6(グリピカン6)、
Ctnnd2(Catenin (Cadherin-Associated Protein), Delta 2)、
Oxr1(Oxidation Resistance 1)、
Csmd3(CUB And Sushi Multiple Domains 3)、
Rbfox1(RNA Binding Protein, Fox-1 Homolog (C. Elegans) 1)、
Fgf12(Fibroblast Growth Factor 12)、
Lsamp(Limbic System-Associated Membrane Protein)、
Cadm2(Cell Adhesion Molecule 2)、
Nrxn1(ニューレキシン1)、
※By using alternate promoters, splice sites and exons, predictions of hundreds or even thousands of distinct mRNAs have been made.
Dcc(DCC Netrin 1 Receptor)、
Prkg1(Protein Kinase, CGMP-Dependent, Type I))
Highlights
・神経幹細胞・前駆細胞における『頻発するDNA二本鎖切断クラスター/Recurrent DSB clusters (RDCs)』を明らかにする
・全てのRDCsは遺伝子内に存在し、そのほとんどが長い遺伝子で、転写され、複製が後期である
・ほとんどのRDC遺伝子はシナプス形成と神経細胞接着のどちらか/両方に関与する
・複製ストレスと関連する脆弱な箇所fragile siteをヌクレオチドレベルの解像度で提供する
※fragile site: 脆弱部、染色体不安定部
Summary
27の神経幹細胞・前駆細胞(NSPC)の頻発DSBクラスター(RDC)のほとんどは、アフィディコリンaphidicolinによる弱い複製ストレスで検出された
これは複製関連ゲノム脆弱部のヌクレオチドレベル解像の視点をもたらす
※アフィディコリンaphidicolin: 抗生物質。真核生物のα型DNAポリメラーゼを特異的に強く阻害する
関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211141341.htm
今回の研究ではDNAをわざと切断して『エサbait』として利用した
この切断された箇所は、既に切断されている箇所と結合するため、元々どこが切断されていたかを示す
そうして特定された27のクラスター全てが、ゲノムのほとんどが遺伝子ではないにも関わらず、遺伝子の中に存在した
27の内15の遺伝子はニューロンが近くにくっつけるようにするタンパク質をコードし、22の遺伝子がシナプスの形成または活性に関与していた
なぜ壊れやすいのかはおそらく遅れて転写されるためで、転写するための分子機構と複写のための分子機構が衝突collideするのかもしれないという
この衝突が二本鎖切断につながる可能性があると研究者は示唆する
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151130084043.htm
癌と関連すると思われていたBRCA1は認知症にも関係がある
脳は記憶する際にDNAを切断しているため、DNAを修復するBRCAは記憶にも重要
関連サイト
http://ameblo.jp/mojio914/entry-11469645587.html
HHMI/Howard Hughes Medical Institute(ハワードヒューズ医学研究所)は実際には研究所なんてないんですけど、お金だけを配っている団体があるんですよね。
お金をもらう、すなわちHHMI investigatorになるというのは最高に名誉なことで、アメリカではトップクラスのサイエンティストであることを意味します(うちのボスもその一人になるわけですが)。