機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年8月28日

2014-09-03 21:19:39 | 

細胞は悪性化する前に腫瘍の形成を感知して成長を停止させる
How premalignant cells can sense oncogenesis, halt growth



突然変異を起こした発癌性H-RASの活性化は、活性酸素種(ROS)の一種である過酸化水素(H2O2)を生成するように細胞を刺激する。

「大部分の人々は、高濃度のROSが与える可能性がある大きな損害について考える」、コールドスプリングハーバー研究所(CSHL)のニコラスTonks教授は言う。

「しかし、今回の研究は、調節されたROSの産生はむしろ有益な役割を演じることを例証する。」



研究チームは、発癌性H-RASに応じたROSの産生が、どのようにシグナル経路を微調整して老化状態に入らせることができるかを示した。

このプロセスの重要な部分は、PTP1Bというタンパク質に対するROSのインパクトである。

Tonksは、約25年前、PTP1Bを発見した。

PTP1Bは他のタンパク質のチロシンからリン酸基を取り除く作業を実施する酵素、つまりヒトには105個が存在するチロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーの1つである。

リン酸塩を加えたり取り除くことは、タンパク質の間でシグナルを送るための主要な手段の1つである。



発癌性H-RASの細胞では、少ないがPTP1Bを不活性にするには十分なROSが産生される。

リン酸塩を除去する酵素のPTP1Bが不活性になると、AGO2(Argonaute 2)という重要なタンパク質はリン酸化されたままである。

その結果、AGO2は、細胞のRNA干渉機構(RNA interference; RNAi)に関与することができなくなる。



正常な細胞において、RNAi機構はp21という遺伝子を抑制している。

しかし、この特異的な状態(H-RASは活性化され、ROSによってPTP1Bは不活性化し、AGO2は脱リン酸化されず、RNAiは無効にされる)では、p21タンパク質は不自然に蓄積し始める。

「これは重要な段階である。p21タンパク質の蓄積は効果的に細胞サイクルを停止させ、細胞が老化状態に入ることを可能にする」、Tonks研究室のMing Yangは説明する。



「これは、我々が5年前に示した仮説の確認である」、Tonksは言う。

「我々は発癌性RASがROSの産生を誘導することを知り、これはPTPの調節につながると提唱した。今回PTP1Bという例を用いて、PTPの不活性化が複雑なシグナル・カスケードの一部としてどのように作用するかについて示す。そのシグナルは最終的に細胞の老化を誘導する。」



「酸化によるPTP1B不活化は、AGO2の作用を妨げる。ROSと遺伝子サイレンシングの明白なつながりを我々は示した。これは他の病理でも観察される可能性がある」、モントリオール大学のブノワ・ボアヴァン助教授は言う。

RNAi機構の活性を保つことにおけるPTP1Bの役割は、重要な影響を持つ可能性がある。

老化に入ることは完全に腫瘍形成を抑えるためには不十分であり、癌がその生存と増殖を促進するように進化するにつれて、発癌性の突然変異は概して増えていく。

しかし、今回の研究は癌患者の遺伝的背景を知ることの潜在的重要性を示す。なぜなら、成長の中断を誘導するために自然に生じるプロセスのための、短いが重要な期間が存在するからである。

記事供給源:
上記の記事は、コールドスプリングハーバー研究所により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)によるArgonaute 2のチロシン393の脱リン酸化は、発癌性RASを誘導された老化において遺伝子サイレンシングを調節する。

Molecular Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140828135521.htm

<コメント>
H-RASV12により増加するROS(hydrogen peroxide; 過酸化水素、H2O2)は、PTP1Bを酸化して不活性化することで、AGO2のチロシン393残基を脱リン酸化できないようにします。

AGO2のチロシン393残基がリン酸化していると、miRNAによるRNA干渉が阻害され、p21は活性化して、H-RASV12による腫瘍促進性miRNAを相殺します。

つまり、H-RASの変異が生じても、ROSを利用することで腫瘍形成を促進するmiRNAを阻害して腫瘍形成を抑制する仕組みです。



ROS─┤PTP1B→AGO2チロシン393脱リン酸化→RNA干渉─┤p21

2014年8月27日

2014-09-03 15:19:19 | 癌の治療法

クロヅルはナノテクノロジーの補助により未来の癌治療を改革する
Thunder god vine, with assists by nanotechnology, could shake up future cancer treatment



肝細胞癌(HCC)は、世界的な癌関連死の第2の主要な原因である。

この悪い予後は、従来の化学療法薬(例えばドキソルビシン、エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、エトポシド、またはその組合せ)を使用しての癌治療の困難による。

その原因はおそらく、全身の副作用を抑えるため肝臓の腫瘍では充分な濃度まで到達することができないからだろう。



今回、ソウル国立大学基礎科学研究所(IBS)と国立癌センター・シンガポールの科学者は、より良好な候補薬を検索するためにHCC細胞のパネルに対して数百もの天産物を含むライブラリをスクリーニングした。

その結果、中国医学がクロヅル(thunder god vine)から分離したトリプトライド(Triptolide)という化合物を見出した。

トリプトライドは現在の治療法よりはるかに強力であり、HCC以外の悪性の癌に対しても有効であることが判明した(膵臓癌、神経芽細胞腫、胆管癌)。

しかし、マウスでの実験では、高い効力は毒性の増加も伴っていた。



Hyeon教授たちは、ナノ製剤を使用して腫瘍への特異的な運搬を増やすことにより有毒な負荷を軽減しようと努力した。

そうして設計された製剤は、ヌクレオチド前駆体(葉酸)でコーティングされたpH感受性のナノゲルであった。



彼らはポリマー・プルロニックF127(pluronic F127)を葉酸でエステル化してコーティング材料を作ることから始めた。

次にβ-ベンジル-L-アスパラギン酸 N-カルボキシ無水物(β-benzyl-L-aspartate N-carboxy anhydride)を重合して、酸性の状態下でのプロトン化(protonation)への反発力によるpH感受性のコア材料を製作した。

「2つのポリマーの組合せは、水中でコア/シェル構造のナノ粒子を形成する」、Hyeon教授は説明する。

「我々はトリプトライドを疎水性の核に詰め込み、ナノ・ゲルを作り出した。」



マウスの実験では、コーティングされたトリプトライドは炎症を起こしたHCC腫瘍組織に蓄積した。

一旦そこで、葉酸を標的とするリガンドは、HCCがこの抗癌剤を取り込むことを促進する。

腫瘍細胞の内側は正常組織(pH7.4)と比較して酸性である(pH6.8)ので、pHの低下はコーティングをばらばらにしてトリプトライドの純粋な形態をリリースさせる。そしてそれは、腫瘍細胞を破壊する。



国立癌センターシンガポールの研究者は種々のHCC細胞でトリプトライドの活性のメカニズムを調査し、トリプトライドが主に2つのタンパク質、AURKACKS2のレベルを低下させることが判明した。

研究者はHCC患者の臨床的なデータベースに対してこれらのタンパク質をクロスチェックして、タンパク質の発現の増加が癌の攻撃性と相関することを見いだした。

学術誌参照:
1.肝細胞癌を標的とする治療としての、pH感受性Nanoformulatedトリプトライド。

ACSナノ、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140827091946.htm



<コメント>
トリプトライドが癌に有効であるという記事は以前にもありましたが、毒性については全く述べられていませんでした。

2014年8月26日

2014-09-03 11:26:43 | 代謝

脂肪の蓄積を調節する受容体
Discovery explains how receptor regulates fat accumulation in obesity



スウェーデンのカロリンスカ研究所Karolinska Institutet)の研究によれば、脂肪の分解を増加させるシグナルに対する脂肪細胞の感度は、受容体ALK7との関連がある。



ALK7受容体は、代謝の制御に関与する脂肪細胞と組織で主に見られる。

ALK7に突然変異があるマウスはALK7が機能するマウスより脂肪の蓄積が少ないが、これまでその理由は不明だった。



研究者は脂肪細胞だけがALK7を持たないマウスを作製して、ALK7受容体がない脂肪細胞はアドレナリンとノルアドレナリン・シグナルへの感受性が高まることを明らかにした。

通常、アドレナリンとノルアドレナリンは脂肪の分解を促進する。

しかし栄養分が豊富な時、脂肪細胞はシグナルに抵抗して代わりに脂肪を貯めこむようになる。



研究者は、ALK7を阻害することによって肥満の防止が可能かどうか調査した。

現時点ではALK7の阻害剤は存在しないが、ALK7の特定の突然変異をマウスを生じさせることによってこれを解決した。

この突然変異は化学物質による阻害に対して感受性にするため、いつでもマウスの受容体を妨害することが可能になった。



「このアプローチにより我々は、高脂肪食を与えても化学物質を投与するだけでマウスをより痩せているようにすることができた。これは、ALK7受容体の急性の阻害が成体の動物で肥満を防止できることを示唆する」、神経科学部のTingqing Guoは言う。

研究者はさらに、ヒトの脂肪細胞でも、ALK7受容体がマウスと似たような方法で働くことを示した。

記事供給源:
上記の記事は、カロリンスカ研究所により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.脂肪細胞のALK7は、肥満において栄養の過負荷とカテコールアミン抵抗性を関連づける。

eLife、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140826085726.htm

<コメント>
脂肪細胞のALK7という受容体をノックアウトすると、高脂肪食でもアドレナリン・ノルアドレナリンに抵抗性が起きず、太りにくくなったという記事です。

具体的には、ノックアウトによりβ-アドレナリン受容体の発現、β-アドレナリンシグナル、ミトコンドリア生合成、脂肪の分解と酸化が促進されたとAbstractにあります。

アドレナリン等のホルモンへの抵抗性の仕組みは、より具体的には高脂肪食によるALK7シグナルを介してβ-アドレナリン受容体(ADRB2ADRB3)やホルモン感受性リパーゼ(HSL)等の発現が減少し、さらにRGS2(Regulator of G protein signaling 2)の発現が上昇して、アデニル酸シクラーゼ(とcAMP/PKA)が阻害されるためであるようです。

http://elifesciences.org/content/3/e03245

>In addition, expression of the negative regulator of adrenergic signaling Rgs2, an inhibitor of adenylate cyclase, was elevated after a high fat diet in the adipose tissue of wild type mice but not in Alk7 knock-out mice (Figure 5G) or fat-specific Alk7 knock-out mice (Figure 5H,I).


RGS2はさらにCrtc3(CREB Regulated Transcription Coactivator 3)のような調節因子と協力すると本文にあります。

>possibly by cooperating with intermediate regulators, such as Crtc3.


研究で使われているALK7のリガンドのアクチビンBはインヒビンβBサブユニットのホモダイマーで、構造的にTGF-βに類似しています。

アクチビンBと、もう一つのリガンドGDF-3は、高脂肪食/肥満により脂肪細胞で発現が増加することが明らかになっています。

>A high fat diet and obesity increase adipocyte expression of the two main ALK7 ligands activin B and GDF-3, suggesting enhanced ALK7 signaling in obesity.

最近は高脂肪食でおなかいっぱい食べても痩せるというダイエットが広まっているようですが、今回の記事はそのような珍説に疑いを抱かせるには十分だろうと思います。

アドレナリンは熱の産生も促進するため、高脂肪食により「アドレナリン抵抗性」が褐色脂肪細胞でも起きるとすれば、体温が低下しやすくなるのではと思います。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b7d30af07b3db4b916c15070e4044793

>褐色脂肪は寒冷やエピネフリンなどのホルモンによってスイッチがオンになり、熱発生遺伝子(thermogenic gene)という遺伝子グループの作用により熱を発生させる。

2014年8月25日

2014-09-03 08:19:47 | 

乳癌転帰を予測する有望なバイオマーカー
New biomarker highly promising for predicting breast cancer outcomes



癌死の圧倒的多数は転移と関連している。

そして「上皮間葉転換(epithelial to mesenchymal transition)」と呼ばれるプロセスは、乳癌の転移を促進する。

腫瘍細胞は上皮細胞の特性(例えば彼らの隣にくっつく能力)を失い、間葉細胞の能力(マトリックスを通過して血流に移動する)を得ることにより、転移が可能になる。

マギル大学のジョージUrsini-シーゲルたちは、上皮間葉転換を経験した乳癌細胞ではp66ShcAというタンパク質がきわめて豊富であることを示した。



「p66ShcAの高い発現レベルは、あらゆる乳癌サブタイプの上皮間葉転換に関する多数の遺伝子の発現と強く関連している」、Ursini-シーゲルは言う。

乳癌は少なくとも5つのサブタイプに階層化される。そして、そのそれぞれは異なる転帰と関連している。

しかし以前の研究では、サブタイプの中に不均一性(heterogeneity)が存在し、それによりサブタイプに基づく転帰の予測は信頼性が低下することが示された。

「p66ShcAは乳癌の分子サブタイプと関係なく、乳癌の悪い転帰を確認するための初めてのバイオマーカーとして役立つかもしれない。」

学術誌参照:
1.p66ShcAは、上皮間葉転換を誘導することによって、乳癌可塑性を促進する。

分子細胞生物学、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140825185834.htm

<コメント>
乳癌の予後の予測に役立つバイオマーカーについての記事です。予後が良いとされる乳管上皮乳癌(luminal breast cancer)でも、一部の患者でしばしば癌死リスクが高まるのは、予後が良いからと強力な抗癌剤を控えることだけが原因ではなさそうだという内容です。p66ShcAはHER2+乳管上皮乳癌においてEMTを促進するとAbstractにあります。

以前の肺癌の記事ではp66Shcは転移の抑制と関連していましたが(アノイキス抵抗性)、今回は転移の促進と関連しています(EMT)。

p66ShcはERK1/2、p53、ROSへの応答とアポトーシス、細胞の移動、血管新生など様々な機能に関与しているので、細胞の種類と環境によって異なる結果になるということなのでしょう。

Wikipediaの説明もかなり複雑です。

WikipediaのReference[4]のIntroductionにはこうあります。

>p66Shc was originally recognized as an inhibitor of ERK1/2 activity [13].

>Moreover, p66Shc restrains Ras hyper-activation, Rb-dependent proliferation and metastatic feature of lung carcinoma cells [15].


>Paradoxically, p66Shc activates ERK1/2 and enhances proliferation of prostate cancer cells [16].

>As well as, abundant expression of p66Shc was also recognized in many breast cancer cell lines and primary breast tumors with high metastatic potential [17].

>Moreover, p66Shc protein level is induced by steroid hormone in the proliferation of several carcinoma cells and in primary prostate cancers [18].