雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

ミタマニン

2012-07-11 | 日記
 サプリ先進国の日本に生まれたことは、この上ない幸せなことである。 黒酢やにんにくをサプリで摂ると、年をとっても「何でそんなに元気なの?」と、他人から不思議がられ、コンドロイチンやグルコサミンのサプリで腰痛や関節痛知らずだ。 スッポンエキスで、男は年を取っても夜に強く、若い者に負けないくらい性力モリモリ。 女性はスッポンコラーゲンでますます若く、美しくなれる。 どんなに髪の毛が薄い人でも、なんたら21で、97%の人は髪の毛が生えてくるし、柑橘エキスを頭に振りかけると、髪の毛が太く若々しく立ってくる。 どんなにお酒を飲んでも、しじみエキスさえ飲んでいれば、肝臓は活き活き。 鮫肝油で朝はすっきり起きられるし、なによりなのは、疲れ知らずで働ける。 目はアントシアニンのサプリではっきりクリア。

 こんな素晴らしいサプリ天国日本にも、今まで無かったサプリがある。 それは、死んだ人を蘇らせるサプリだ。 ところがこの度、霊能大学大学院の研究室で、彷徨っている「魂」を捕まえることに成功した。 その成分を分析し、ある物質を発見したのだった。 研究室では、その物質を「ミタマニン」と名付けて色々動物実験を重ねた結果、ネズミの魂から抽出した「ネズミミタマニン」を食べさせたネズミは、殺しても24時間程度経つと生き返ることが判明した。 それではと、人間の「魂」の捕獲許可を厚労省に求めたところ、日本国内での捕獲はダメと規制がかけられてしまった。 苦肉の策として、アフリカ各国に研究員を派遣して、派遣国の協力を得て「魂」を捕獲、多量のミタマニンの精製に成功し、臨床実験材料として日本に持ち帰った。 
 
 その情報を人伝に知ったある男が、密かに大学の研究室にメールを送った。 「私はスキルス性胃がんを宣告された34才の男性です・・・」 メールは気迫の籠った訴えが続く。 「ステージ4と診断されて、余命幾何もないことを告げられました」 そして、「どうかこの私を臨床実験に使って下さい」と、結んであった。
 
 研究室では、願っても無い申し出と、早速研究員のひとりが彼の友人ということにして男に逢い、精製したミタマニンを男に手渡した。 「少しでも早い方がよろしい、今日からこの薬を飲みなさい」そう伝えると、研究員は帰っていった。

 間もないある日、男は死んだ。 通夜を終え、葬儀屋が来て式の準備中に、家族の一人が棺の中へ故人が大切にしていた本を入れようと蓋を取った時、男は大きく欠伸をしてムックリ起き上がった。 家族は驚いて腰を抜かすし、喪服姿の親戚の男女は何が起こったのか判断できずにオロオロと右往左往。 その中に、落ち着き払ってメモをとる若い青年がいた。 あの研究室員だ。

 少し時が経ち、皆が落ち着きを取り戻すと、喜びの歓声に変った。 葬式は喪服パーティーに変わり、豪華なオードブルとシャンパンが振る舞われ、歌ったり踊ったり。 その中心でニヤニヤとその様子を見ていた元故人の男は、突然真顔になり、色のあさ黒い青年を凝視するようになった。 目はランランと輝き、よだれを垂らし、あげくに槍を構える仕草をして奇声を上げたのだった。  

   (以上は個人の空想です。ミタマニンは食品であり、効能、効果を提示したものではありません)

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