連続小説「江戸の辰吉旅鴉」というのを書いていて、「ツウと言えばカア」という表現を使ったが、江戸時代に「ツウカアの仲」なんて表現はなかったことだろう。
「おい辰、喉がかわいたなぁ」
「へい兄貴、ちょっと行って来ます」
辰、駈け出して行くと、自動販売機で缶コーヒー「金の微糖」を買ってきて兄貴に手渡す。皆まで言わずとも、今兄貴が缶コーヒー金の微糖を飲みたいと思っていることを辰は察知したのだ。
「おい辰、さっきから若い女ばかりジロジロみてやがるなぁ」
「別に…」
「いいから、今から風俗へ行こうぜ」
こんなのが、「ツーカー」の仲っていうのではないのだろうか。
「ツーカー」の語源はなんだろうかと、検索をかけてみた。
① 鶴が「ツー」と鳴くと、烏が「カァ」と鳴いて応える様子から来たものだそうである。
それは、沼で鳴いた鶴の声に、偶然山で烏が反応して鳴いたものであり、鶴と烏は仲が良い訳でも、鳴き声で情報をやりとりしている訳でもない。
② 「それは○○つーの」物知りの長屋のご隠居が教えると、八っあんが「なんだそうかぁ」と応えるみたいな説があるそうだ。これでは「ツーカーの仲」とは言えない。答えを噛んで砕いて教えて、ようやく八っつあんが理解したというのでは、「ツーカー」の寧ろ逆である。
③ 「ツーカー」は、通過からきたものであるというのも可怪しい。「ツーカーの仲」のなのに、相手の言わんとしていることを、しっかれ受け止めないで通過させてしまっては「ツーカーの仲」とは言えない。
これらを「説」と捉えているというのが、Web検索で得られたものであるが、いずれも「説」を成していない。
猫爺の説
ある日、与兵が沼で菱の実を採っていると、一羽の鶴が罠に掛かって藻掻いているのを見つけた。与兵は鶴を可哀想に思い、罠を外して逃してやった。鶴は直ぐに逃げもせずに与兵の顔を暫く不思議そうに眺めていたが、与兵の「早く逃げろ」という言葉に、われに返って空高く舞上がった。
「罠には気を付けるのだぞ、元気に暮らせよ」
鶴は、与兵の言葉が分かったように、与兵の頭上を三回まわって、遠くに飛んで行った。
それから三日後、与兵夫婦が布団に入って間なしに戸を叩く音が聞こえた。
「とんとん、夜道に迷った美しい女でございます」
「自分で美しい女やて、ちょっと開けてやろうかな」
妻が止めた。
「折角納まるべくものが、納めるところに納まったというのに、放っておきなさい」
「いやいや、道に迷ったと言われる女性を、放ってなどおけるものか、まして、美しい女と言うではないか」
女は「つう」と名乗った。与兵はつうを招き入れ、女房がふてくされているのも構いなく、「腹が空いておろう」と、甲斐甲斐しく粥など炊いて食べさせ、機織り部屋に布団を敷いてやった。
「お礼に、機をおりましょう」
つうは機織り部屋の障子をぴったり閉めて、「決してここを開けないでください」と言って部屋に閉じこもった。
パタン、パタンと、機を織る音が聞こえて来たが、与兵は我慢が出来ずに、 つう と叫ぶと、障子を開けてしまった。
「そんなことをしてはいけない、やめなさい」
「わかったのです かあ 」
「そうだよ、お前が自分の羽を抜いて、機に織り込んでいることぐらいわかったさ」
「お礼がしたかったのです」
鶴に戻っていたつうは、恥ずかしそうに言うと窓を開け、闇の中へ飛んでいってしまった。
「おい辰、喉がかわいたなぁ」
「へい兄貴、ちょっと行って来ます」
辰、駈け出して行くと、自動販売機で缶コーヒー「金の微糖」を買ってきて兄貴に手渡す。皆まで言わずとも、今兄貴が缶コーヒー金の微糖を飲みたいと思っていることを辰は察知したのだ。
「おい辰、さっきから若い女ばかりジロジロみてやがるなぁ」
「別に…」
「いいから、今から風俗へ行こうぜ」
こんなのが、「ツーカー」の仲っていうのではないのだろうか。
「ツーカー」の語源はなんだろうかと、検索をかけてみた。
① 鶴が「ツー」と鳴くと、烏が「カァ」と鳴いて応える様子から来たものだそうである。
それは、沼で鳴いた鶴の声に、偶然山で烏が反応して鳴いたものであり、鶴と烏は仲が良い訳でも、鳴き声で情報をやりとりしている訳でもない。
② 「それは○○つーの」物知りの長屋のご隠居が教えると、八っあんが「なんだそうかぁ」と応えるみたいな説があるそうだ。これでは「ツーカーの仲」とは言えない。答えを噛んで砕いて教えて、ようやく八っつあんが理解したというのでは、「ツーカー」の寧ろ逆である。
③ 「ツーカー」は、通過からきたものであるというのも可怪しい。「ツーカーの仲」のなのに、相手の言わんとしていることを、しっかれ受け止めないで通過させてしまっては「ツーカーの仲」とは言えない。
これらを「説」と捉えているというのが、Web検索で得られたものであるが、いずれも「説」を成していない。
猫爺の説
ある日、与兵が沼で菱の実を採っていると、一羽の鶴が罠に掛かって藻掻いているのを見つけた。与兵は鶴を可哀想に思い、罠を外して逃してやった。鶴は直ぐに逃げもせずに与兵の顔を暫く不思議そうに眺めていたが、与兵の「早く逃げろ」という言葉に、われに返って空高く舞上がった。
「罠には気を付けるのだぞ、元気に暮らせよ」
鶴は、与兵の言葉が分かったように、与兵の頭上を三回まわって、遠くに飛んで行った。
それから三日後、与兵夫婦が布団に入って間なしに戸を叩く音が聞こえた。
「とんとん、夜道に迷った美しい女でございます」
「自分で美しい女やて、ちょっと開けてやろうかな」
妻が止めた。
「折角納まるべくものが、納めるところに納まったというのに、放っておきなさい」
「いやいや、道に迷ったと言われる女性を、放ってなどおけるものか、まして、美しい女と言うではないか」
女は「つう」と名乗った。与兵はつうを招き入れ、女房がふてくされているのも構いなく、「腹が空いておろう」と、甲斐甲斐しく粥など炊いて食べさせ、機織り部屋に布団を敷いてやった。
「お礼に、機をおりましょう」
つうは機織り部屋の障子をぴったり閉めて、「決してここを開けないでください」と言って部屋に閉じこもった。
パタン、パタンと、機を織る音が聞こえて来たが、与兵は我慢が出来ずに、 つう と叫ぶと、障子を開けてしまった。
「そんなことをしてはいけない、やめなさい」
「わかったのです かあ 」
「そうだよ、お前が自分の羽を抜いて、機に織り込んでいることぐらいわかったさ」
「お礼がしたかったのです」
鶴に戻っていたつうは、恥ずかしそうに言うと窓を開け、闇の中へ飛んでいってしまった。