雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺のミリ・フィクション「浦 島子伝」

2013-02-05 | フィクション
 浦島太郎の記事を、このブログに2度上UPした。一度目は、長野県の「寝覚の床」に伝わるもの。二度目は、猫爺のパロディー。乙姫がくれた玉手箱を、乙姫が「決して開けてはなりません」と言う前に、太郎がその場で開けてしまい、乙姫も鯛やヒラメまでもが腰のまがったお婆さんになってしまったと言うふざけた話。

 今回は、「浦島太郎」の基になった「浦 嶋子伝」を想像してみよう。 想像と書いたのは、原作の「浦嶋子伝」を読んでいないからだ。 浦嶋子(浦島太郎)は、浜辺でウミガメを見つける。 実はこのウミガメは亀姫(乙姫)の化身で、若くてイケメンの男をハントに来ていたのである。 亀姫は、浦嶋子を見るなり一目ぼれしてしまった。



 浦が海辺を歩いていると、雌の海亀が寄ってきた。
   「ちょいとお兄さん、竜宮城で遊んで行かない? 美しいお姫様がもてなしてくれるわよ」
   「お前さんは、客引きかい?」
   「違うわよ。 だって竜宮城はバーでもキャバレーでもないのだから」
   「じゃあ、竜宮城という風俗店?」
   「まっ、しつれいね、客引きじゃないってば」
 平安時代に、こんな会話があろう筈もないのだが、浦 嶋子は亀に蓬莱島(中国)へ連れて行かれる。 竜
宮城に着くと亀は姿を消し、代わって美しい亀姫(乙姫)に出迎えられ、嶋子は亀姫に心を奪われる。

   「ようこそいらっしゃいました。さあ、お寝間はこちらでございます」
   「姫様、いきなりお寝間とは…」
   「そうですか、ではご一緒にお風呂に入りましょう」
   「---」

  -中略-(実は、この浦 嶋子伝はポルノ本のため、ここには書けないことが起る)

   「嶋子がここにきて、早くも三年が経ちました、一度父母の元へもどりとうございます」
   「そうですか、でも嶋子さま、一度お帰りになりますと、もうここへは来てはくださらないのでしょ」
   「いえいえ、滅相もございません、父母の元気な顔を見たら、嶋子は必ずここへ参ります」
   「わかりました、ではこの玉手箱をお預けしましょう」
   「中身は何でございましょうか?」
   「狼煙(のろし)です、また竜宮城へ来たくなったら、この玉手箱の蓋を開けてください、亀がお迎えに参ります」

 浦 嶋子は、三年ぶりに亀の背中に乗り、来た道を戻っていった。亀に出会った浜辺に着くと、そこは三年前とはすっかり様子が変わり、浜辺はゴミだらけ、父母の棲家の有ったあたりは、工場になっていた。嶋子は行くところもなく途方にくれたが、玉手箱を思い出して蓋をあけてみた。ポワーンと紫の煙が立ち込めただけで何事もない。 

 しばらくすると、波打ち際の方から声が聞こえてきた。
   「浦 嶋子さま、姫はもうあなたさまに未練はないそうです、新しく若いイケメンの殿方が見つかりました」

 浜辺でバチャと音がして、沖に向かって戻って行く黒い影が見えた。


      (再投稿)  (原稿用紙4枚)