雑文の旅

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温故知新「自殺のすすめ・渡辺淳一著」

2012-10-15 | 日記
   ◆自殺にはさまざまな種類がある。なかで死に顔が最も美しいのは…◆

 渡辺淳一著「自殺のすすめ」の出だしである。 この短編小説のテーマは、「自殺」であるが、「美しい死に顔」だと私は受け取った。 白髪で医師免許を持たない解剖学のY教授が、抗議の中で医学生Uの自殺未遂をとりあげた。 Uは首の血管を切ったが、頸静脈だったから失敗したのだと嘲笑する。
 「死ぬなら、頸動脈をきちんと切って仰向けに倒れなければならない」
 「医学生が、こんな易しいところを間違っては笑われる」と。
 このことは、本人の学生Uにも伝わった。

 それから一ヶ月後、学生Uは、自殺を遂げる。 今度はきちんと頸動脈を切り、仰向けに倒れていた。 白く美しい死に顔だった。 その傍らには、解剖の本が頸動脈のところを開いて、きちんと置いてあった。

 その後のY教授は、退職し自宅で、脳溢血で倒れ、「たれ流しの寝たきり老人」になり、肺炎を併発して死んだ。

  (自殺に対する逆説と、ペーソスであり、決して読者に自殺をすすめるものではない) …と思う。 
    (原稿用紙2枚)

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