雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

夜盲症

2012-03-05 | 日記
 昔ほど聞かない病名に、夜盲症というのがある。 文字通り、薄暗いところで物が極端に見えづらくなる。 私の子供時代には、結構ビタミンA不足で「夜盲症」に罹る子供が居たものだ。 治療はビタミンAの補給で、薬局で購入できる「肝油」を飲まされた。 肝油は魚の肝の脂肪油で、ごく安価な栄養剤である。 最近では鮫珠とか名付けられ、えらく高価なサプリに様変わりしている。 しかし、ビタミンAを大量に摂取すると、副作用があると聞かされてきた。 そのビタミンAを毎日摂取すると、元気になるとか、美肌効果があるとか、効能だけを謳った商品が売られている。 毎日ガバガバ摂取しても副作用が顕われないほど肝油分が少ないのかも知れない。 そんなものを、あの高価な値段で購入して、どんな効果が望めるのだろう。 

 私も子供の頃に夜盲症になった時期がある。 夏の夜は、遅くまで子供たちは外で遊んだものだ。 「缶けり」など、そんなに生易しいものではない。 お寺の塀に登ったり、民家の瓦屋根に登ったり、今思えば無茶苦茶な遊びぶりだった。 それが夜盲症になると、出来なくなるのだ。 

 夜盲症とは、目のフィルムである網膜の感度が落ちる病気である。 現在、その夜盲症と同じ症状になった。 原因は「網膜症」の治療だ。 網膜内の血管が破れて出血するのが網膜症で、進むと確実に失明する。 予め出血の恐れがある血管をレーザーで焼いて出血を予防するのだが、当然網膜の組織も焼いてしまう。 その結果感度が落ちて、夜盲症と同じ症状になるのだ。 

 この治療を受けた後も、しばらく車の運転をしていたが、走っていて暗いトンネルに入って中ほどに来たとき、突然目が見え辛くなった。 ただ、前を走る車のテールだけを頼りにその場を凌いだが、後で同乗していた娘が、「壁に擦れそうだった」と、ぽっりと言った。 

 それからは、トンネルと、夜間の運転は控えていたが、やはり大きな事故を起さないうちに運転をやめた。 妻もまた、私より10年以上前に運転をやめたが、その時の妻の寂しさが、自分の身になって初めて判った。