妻を自分の持ち物と思い込んでいる男は、その裏切りに怒っていた。
妻は借金をしてまで姉に金を貢いで(貸して)いた。
その金は返してもらえる気配もないまま、妻は病気で死んだ。
妻の死後、妻の裏切りを知る。更なる借金があったのだ。
当然、あの姉のところへ持って行ったに決まっている。
妻が生きていれば殴りつけただろう。だが、その妻はもういない。
その怒りは当然のように妻の姉に向かう。
「殺してやる!」
今の自分が惨めな生活をしているのは、妻とその姉、あの姉妹の所為なのだ!
男は自分の自堕落さを反省する事もなく、今の状況を妻の所為にしていた。
家族と相談することなく好き勝手にやってきた男。
妻が彼に相談も無く借金をしていたのも、そんな彼の態度が原因だったのに。
その日、幼い子供が一緒にいることを知っていれば、男も日を改めたかもしれない。
それによって思いとどまる事もできたかも。
子供たちは騒いだ。
男はその子供たちに怯えた。騒ぐ子供たちが怖かった。
この騒がしい小さな姉妹もこの女の血を継いでいる。この女のようになって、俺のような純粋な男を食い物にするに違いない。こいつらも同類だ!
とにかく殺してしまわなければならないのだ!
男は泣いた。そして慌てた。計画性のない怒りに任せた凶行。
どんな風に殺したのか憶えてもいない。後始末もお粗末だった。
妻は死に、怒りの対象を殺害した男にはなにも残ってはいなかった。
幼い子供を殺してしまった事を悔やむだけ。
今よりもずっとましであろう牢屋の中の「人間らしい生活」が彼の慰みとなるだろう。
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