お盆休み明けの昨夜
オープン前の支度をしていたら
向かいのRで働く小春姐さんがタバコを買いに来た
ウチの店は何種類かのタバコを常に買い置きしているので
彼女は週に何回か求めに来る
「ケンちゃんが亡くなったのよ」
小春姐さんのお客でウチにも何度か遊びに来た事のある人だ
いつも酔っ払っていて何を話しているか分らない
茶色に染めたパンチパーマと
胸元に光る金のネックレスがトレードマーク
一瞬かたぎには見えないが
市役所で働いていたのだと言う
駅の反対側にスナック街があり
そこのMで飲んでいる時に
突然泡を吹いて倒れたらしい
救急車を呼んで病院に運ばれたが
既に心配停止状態だったとか…
一ヵ月後に61歳の誕生日を迎える所だった
「え~?あのケンちゃんが?!」
とても信じられなかった
確かにいつも酔っ払ってはいるが
体の何処かが悪そうには見えなかったし
つい一ヶ月前にもウチに飲みに来ている
その日はお友達のマッちゃんと一緒に来店し
私はラスカルと一緒にお相手した
ケンちゃんは昨日から眠らずに飲み歩いていると言っている
横山やすしの様な痩せたタイプで
お腹も出ていない
「ケンちゃんって相変わらずタフよねェ」
こんなに痩せてて何処にそんな体力があるのかと
いつも不思議に思っていた
「ケンちゃん、何か身体を鍛えているの?」
酔っ払い特有のろれつの回らぬ声で
「喧嘩で鍛えてる」
とシャレにならない答えが返ってきた
彼はあと数ヶ月で定年だったのに
上司と喧嘩して市役所を辞めたそうだ
それから一年くらい次の仕事を探していたが
この不況では何もない
年老いた母親を老人ホームに預けて
自分は連日飲み歩いていたらしい
特有な風貌から家族の匂いを感じさせなかった彼は
5人の兄弟が居て無縁仏にはならなくて済んだ
「オネエ、飲みに来たよ!」
と今でも酔っ払ったケンちゃんが
Rのドアを開けそうだと
小春姐さんがポツリと呟いた
オープン前の支度をしていたら
向かいのRで働く小春姐さんがタバコを買いに来た
ウチの店は何種類かのタバコを常に買い置きしているので
彼女は週に何回か求めに来る
「ケンちゃんが亡くなったのよ」
小春姐さんのお客でウチにも何度か遊びに来た事のある人だ
いつも酔っ払っていて何を話しているか分らない
茶色に染めたパンチパーマと
胸元に光る金のネックレスがトレードマーク
一瞬かたぎには見えないが
市役所で働いていたのだと言う
駅の反対側にスナック街があり
そこのMで飲んでいる時に
突然泡を吹いて倒れたらしい
救急車を呼んで病院に運ばれたが
既に心配停止状態だったとか…
一ヵ月後に61歳の誕生日を迎える所だった
「え~?あのケンちゃんが?!」
とても信じられなかった
確かにいつも酔っ払ってはいるが
体の何処かが悪そうには見えなかったし
つい一ヶ月前にもウチに飲みに来ている
その日はお友達のマッちゃんと一緒に来店し
私はラスカルと一緒にお相手した
ケンちゃんは昨日から眠らずに飲み歩いていると言っている
横山やすしの様な痩せたタイプで
お腹も出ていない
「ケンちゃんって相変わらずタフよねェ」
こんなに痩せてて何処にそんな体力があるのかと
いつも不思議に思っていた
「ケンちゃん、何か身体を鍛えているの?」
酔っ払い特有のろれつの回らぬ声で
「喧嘩で鍛えてる」
とシャレにならない答えが返ってきた
彼はあと数ヶ月で定年だったのに
上司と喧嘩して市役所を辞めたそうだ
それから一年くらい次の仕事を探していたが
この不況では何もない
年老いた母親を老人ホームに預けて
自分は連日飲み歩いていたらしい
特有な風貌から家族の匂いを感じさせなかった彼は
5人の兄弟が居て無縁仏にはならなくて済んだ
「オネエ、飲みに来たよ!」
と今でも酔っ払ったケンちゃんが
Rのドアを開けそうだと
小春姐さんがポツリと呟いた