昨夜はとっても奇妙な事が起こった
早い時間にご来店のSさんご夫婦
20日にお誕生日を迎えたダンナさんを
ワインでお祝いして店内はアットホームな雰囲気に包まれていた
共働きのご夫婦で
お互いの休みが重なった時でないと
飲みに出る事はない
この日は約一ヶ月ぶりのご来店だった
奥さんのアッ子ちゃんは蕎麦屋で働いている
根っからのお人好し、世話好きな性格から
スタッフ達のまとめ役的な役割を担っている
ここの所、最近入ったバイトの事で頭を痛めている
本人にやる気はあるのだが
周囲とのコミュニケーションが上手く行かず
他のスタッフからブーイング
確かにアッ子ちゃんも
彼の事は前から気になっていた
ある日、店長からその点を注意されたらしい
ところが彼にとってみれば
仕事は一生懸命にやっているのだから
何の問題もないだろうとの答え
益々孤立していく結果に…
そんな話を聞いているうちに
時計の針は3時近くになっていた
アッ子ちゃんのダンナさんは
大好きなカラオケで自慢の喉を披露していたが
当店はその都度料金を徴収するシステムなので
所持金に余裕がなくなっていた
「近所のコンビ二におろしに行って来る」
そう言ってダンナさんは店を出た
店内は他のお客さんたちも楽しげに談笑していて
ヒマだけど雰囲気だけは良かったのだ
数分後、アッ子ちゃんのダンナが戻って来た
帰って来るなりこう言うのだ
「ず~と誰かが後ろから着いて来て
耳元で『歌って、歌って!』と囁くんだよ」
丑三つ時の暗い裏通りだから
怪しげな現象もないとは言えない
まして通りの途中にある今にも倒れそうな古い佇まいは
道に迷った酔客を昭和の始めにタイプスリップさせそうだ
私には思い当たるふしがあった
去年、かけおちの末
男に捨てられて兵庫のアパートで衰弱死したMちゃんの事だ
彼女には夫が居たが、それを捨てて男を選んだ
その男との事は誰もが反対したが
Mちゃんは後先考えずに男の故郷の熊本に飛んだ
最初こそ良かったが
徐々に誰もが予想した結果になって行った
脚の不自由なMちゃんは酒びたりになり
義足も入らないほど太ってしまった
Mちゃんの親友のYちゃんがその都度心配して彼女に会いに行った
確か最後の方は入院していたはずだ
それから数ヶ月経ってYちゃんからメールで
Mちゃんの訃報を知らされた
熊本に居たはずなのに何故か兵庫のアパートで衰弱死していたらしい
しかも一緒のはずの男は見当たらず
近所からの通報でMちゃんは変わり果てた姿で発見されたのだ
駆け落ちまでした男からは捨てられ
唯一の肉親の妹からも見放されて無縁仏となったMちゃん
男はその後、警察の捜索で身柄を確保されたが
特に事件性はないとの事で釈放されたとか…
Mちゃんの骨は親友のYちゃんが東京に持って帰り
無縁仏を扱うお寺に預けた
身内の承諾も必要で、嫌がる妹さんを説得するのに必死だったとか
ちょうど初盆だった事もあり
Mちゃんはよく通ってた当店に遊びに来てたのかもしれない
その当時アッ子ちゃん夫婦には優しく接してもらってた
「あんな夫婦が羨ましい」とよく呟いていた
昨夜、アッ子ちゃんたちはいつもと違う席に
吸い寄せられる様に腰掛けた
誰も其処に案内していないのに
当たり前の様に着席したのだ
他にはまだ誰もお客さんが居なかったので
何処のお席でも良かったのだが
入り口に一番近いエアコンの真下の席を選んだ
その席はよくMちゃんが腰掛けていた席だった
優しいアッ子ちゃんご夫婦と一緒にお酒を飲みたかったのかもしれない
早い時間にご来店のSさんご夫婦
20日にお誕生日を迎えたダンナさんを
ワインでお祝いして店内はアットホームな雰囲気に包まれていた
共働きのご夫婦で
お互いの休みが重なった時でないと
飲みに出る事はない
この日は約一ヶ月ぶりのご来店だった
奥さんのアッ子ちゃんは蕎麦屋で働いている
根っからのお人好し、世話好きな性格から
スタッフ達のまとめ役的な役割を担っている
ここの所、最近入ったバイトの事で頭を痛めている
本人にやる気はあるのだが
周囲とのコミュニケーションが上手く行かず
他のスタッフからブーイング
確かにアッ子ちゃんも
彼の事は前から気になっていた
ある日、店長からその点を注意されたらしい
ところが彼にとってみれば
仕事は一生懸命にやっているのだから
何の問題もないだろうとの答え
益々孤立していく結果に…
そんな話を聞いているうちに
時計の針は3時近くになっていた
アッ子ちゃんのダンナさんは
大好きなカラオケで自慢の喉を披露していたが
当店はその都度料金を徴収するシステムなので
所持金に余裕がなくなっていた
「近所のコンビ二におろしに行って来る」
そう言ってダンナさんは店を出た
店内は他のお客さんたちも楽しげに談笑していて
ヒマだけど雰囲気だけは良かったのだ
数分後、アッ子ちゃんのダンナが戻って来た
帰って来るなりこう言うのだ
「ず~と誰かが後ろから着いて来て
耳元で『歌って、歌って!』と囁くんだよ」
丑三つ時の暗い裏通りだから
怪しげな現象もないとは言えない
まして通りの途中にある今にも倒れそうな古い佇まいは
道に迷った酔客を昭和の始めにタイプスリップさせそうだ
私には思い当たるふしがあった
去年、かけおちの末
男に捨てられて兵庫のアパートで衰弱死したMちゃんの事だ
彼女には夫が居たが、それを捨てて男を選んだ
その男との事は誰もが反対したが
Mちゃんは後先考えずに男の故郷の熊本に飛んだ
最初こそ良かったが
徐々に誰もが予想した結果になって行った
脚の不自由なMちゃんは酒びたりになり
義足も入らないほど太ってしまった
Mちゃんの親友のYちゃんがその都度心配して彼女に会いに行った
確か最後の方は入院していたはずだ
それから数ヶ月経ってYちゃんからメールで
Mちゃんの訃報を知らされた
熊本に居たはずなのに何故か兵庫のアパートで衰弱死していたらしい
しかも一緒のはずの男は見当たらず
近所からの通報でMちゃんは変わり果てた姿で発見されたのだ
駆け落ちまでした男からは捨てられ
唯一の肉親の妹からも見放されて無縁仏となったMちゃん
男はその後、警察の捜索で身柄を確保されたが
特に事件性はないとの事で釈放されたとか…
Mちゃんの骨は親友のYちゃんが東京に持って帰り
無縁仏を扱うお寺に預けた
身内の承諾も必要で、嫌がる妹さんを説得するのに必死だったとか
ちょうど初盆だった事もあり
Mちゃんはよく通ってた当店に遊びに来てたのかもしれない
その当時アッ子ちゃん夫婦には優しく接してもらってた
「あんな夫婦が羨ましい」とよく呟いていた
昨夜、アッ子ちゃんたちはいつもと違う席に
吸い寄せられる様に腰掛けた
誰も其処に案内していないのに
当たり前の様に着席したのだ
他にはまだ誰もお客さんが居なかったので
何処のお席でも良かったのだが
入り口に一番近いエアコンの真下の席を選んだ
その席はよくMちゃんが腰掛けていた席だった
優しいアッ子ちゃんご夫婦と一緒にお酒を飲みたかったのかもしれない