長内那由多のMovie Note

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『複製された男』

2020-10-29 | 映画レビュー(ふ)

 近年『メッセージ』『ブレードランナー2046』『DUNE』とSF大作が続くドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だが、そのルーツは深海魚が狂言回しをする異色のデビュー作『渦』であり、ねっとりと絡みつく悪夢のような本作『複製された男』だろう。それは同郷カナダの巨匠デヴィッド・クローネンバーグを思わせるが、ヴィルヌーヴの特色は『灼熱の炎』『静かなる叫び』で見せた卓越した演出力と、その異能に湛えられたノーブルさだ。自分そっくりの男を見つけた主人公の恐怖の徴候はくすんだトロントの街に蔓延し、闇の口がポッカリと口を開く。眩暈を誘う2人のブロンド美女メラニー・ロランとサラ・ガドンも僕らをアンモラルに引き込むには十分だ。ミステリアスなスコアに乗って90分間、胸の高鳴るようなサスペンスが展開する。

 三流役者の主人公は美人妻が妊娠し、追い詰められた末に自分と入れ替わってくれるもう1人の自分を“複製”したのか。謎の鍵がスイッチとなり、主人公の頭から蜘蛛が這い出て夢も現もないがしろになる。おぉ、これはヴィルヌーヴの『イレイザー・ヘッド』か!


『複製された男』13・加、スペイン
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ
 

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