長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ペイン・キラー』

2023-09-06 | 海外ドラマ(へ)

 ピーター・バーグ監督といえば、日本ではカルト的人気のSFアクション映画『バトルシップ』を引き合いに出されるが、そのキャリアで注目すべきは盟友マーク・ウォルバーグとのコンビ作だろう。アフガニスタンでの米兵救出作戦を描いた『ローン・サバイバー』、メキシコ湾での重油流出事故を描く『バーニング・オーシャン』、ボストン爆破テロ事件に挑む捜査機関の群像劇『パトリオット・デイ』の3本は今やハリウッドでは作られることがない、娯楽性を兼ね備えた実録社会派作品だ。パーデュー製薬から発売された鎮痛剤オキシコンチンによる“オピオイド危機”を描く新作『ペイン・キラー』は、全6話のリミテッドシリーズとしてNetflixから登場である。

 スティーヴン・ソダーバーグがアメリカの直面する“麻薬戦争”を題材に、『トラフィック』を発表したのは2000年のこと。その頃、既にアメリカは内側からドラッグによって崩壊しつつあった。パーデュー製薬のオキシコンチンは医療用麻薬でありながらいとも簡単に処方され、その入手のしやすさから社会に多くの中毒者を生む。ドラマはパーデューの責任を追求する検事、パーデュー製薬を経営するサックラー家、不慮の事故によりオキシコンチンを処方された一介の労働者、そしてパーデュー製薬から多大なバックマージンを得ていた営業担当者の姿を点描し、オキシコンチンがいかにしてアメリカに蔓延していったのかを暴いていく。多くの登場人物とロケーションが交錯する様はまさに“ピーター・バーグ版『トラフィック』”で、エグゼクティブプロデューサーにはドキュメンタリー映画の巨匠アレックス・ギブニーも名を連ね、日本人には馴染みの薄いオピオイド危機の全体像を把握するにはうってつけのテキストと言えるだろう。

 俳優陣も注目に値するパフォーマンスだ。今や名優となったマシュー・ブロデリックは、オキシコンチンによって一族の栄華を取り戻したサックラーを一種のサイコパスとして演じており、社会的地位にありながら道義的責任を一切感じないその姿にはここ日本の視聴者も思うところが多いはず。『バトルシップ』で主演したばかりにその後のキャリアで苦労したテイラー・キッチュは42歳を迎え、心優しい一家の大黒柱がオピオイドによって中毒者へと身を落とす様を壮絶に演じ、堅実にキャリアを切り開きつつある。金銭目当てでオキシコンチンの営業を始め、やがて良心の呵責に揺れていくウエスト・ドゥカヴニーの名前に聞き覚えがあるなと思えば、父親はモルダー捜査官ことデヴィッド・ドゥカヴニー、母親はティア・レオーニであった。そして検事役ウゾ・アドゥーバが力強いパフォーマンスでドラマを牽引している。

 しかし、これだけ揃っても『ペイン・キラー』は現実の重みに相対しきれていない。シーズン後半、ピーター・バーグはリミテッドシリーズという6時間の尺をやや持て余し気味だ。説明過剰で落ち着きのない編集、そしてサックラーが先代の亡霊と対話し続けるという演出過多が、事件の深刻さと名もなき中毒者たち、遺族の苦しみに対してあまりに存在の耐えられない軽さである。バーグの実録映画は終幕に事件当事者を登場させ、テーマを丸々語らせるという手癖があるが、今回も各エピソードの冒頭、遺族のインタビューが挿入されている。被害者とパーデュー製薬の間では多額の示談が成立したものの、先ごろアメリカの連邦最高裁判所がこれをを無効化する方向で動き出した。示談によるサックラー家の存続が道義的にも許されないことが大きな理由と思われるが、そんな作品外のエピローグも含め、やや手ぬるい口当たりの軽さが気がかりであった。


『ペイン・キラー』23・米
監督 ピーター・バーグ
出演 マシュー・ブロデリック、テイラー・キッチュ、ウゾ・アドゥーバ、ウエスト・ドゥカヴニー
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『ベター・コール・ソウル シーズン6』(寄稿しました)

2022-08-19 | 海外ドラマ(へ)

 『ベター・コール・ソウル』シーズン6についてはリアルサウンドで全話レビューしています。以下のリンクからご覧ください。

シーズン6

過去シーズンはこちらをどうぞ↓
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『ペリー・メイスン』

2021-02-05 | 海外ドラマ(へ)

 往年の名作TVドラマ『弁護士ペリー・メイスン』のリブート作だ。舞台は1920年代のロサンゼルス。ペリー・メイスンは弁護士ではなく私立探偵で、幼児誘拐殺人事件の裏に潜む陰謀に立ち向かう。妻子に去られ、くたびれたペリー・メイスンをやさぐれた色気で見せるのは『ジ・アメリカンズ』の名優マシュー・リスだ。明暗際立つ美しいカメラとテレンス・ブランチャードのくすぶるようなトランペットが合わされば、オールドスタイルが何とも心地よい本格ノワールである。リッチなプロダクションデザインと、毎話群衆シーンで見せるダイナミックな絵作りもさすがはHBOだ。製作総指揮を務めるのはロバート・ダウニー・Jr.とスーザン・ダウニー夫妻。かねてより裏方に回りたいと公言していたダウ兄が『アベンジャーズ/エンドゲーム』で天下を取った今、満を持してのリリースである。

 演技巧者揃いのキャスト陣にも性格俳優ダウ兄の志向が伺える。殺害された幼児の母親役には『GLOW』で獣人プロレスラーを演じたゲイル・ランキン。『GLOW』シーズン3(コロナショックによってこれを最後に打ち切りとなった)で、ランキン演じるシーラは演技養成所に通い始め、女優志望の主人公が刮目するほどの才能の片鱗を見せる。まさに本作の爆発的なパフォーマンスに繋がる“伏線”だった
 事件の鍵を握るカリスマ宣教師役には『オーファン・ブラック』のタチアナ・マスラニーが扮し、その母親役には久々リリ・テイラーという個性派女優同士の凝ったキャスティングも面白い。ペリー・メイスンの下請け探偵役で名優シェー・ウィガムが珍しく軽妙な芝居を見せており、こちらもさすがのバイプレーヤーぶりである。

 シリーズ監督はHBOのベテラン、ティモシー・ヴァン・パタンが務めているが、中盤第4~6話では『裸足の季節』で知られるトルコの女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュベンが起用されている。第4話、ペリー・メイスンの師匠であり、父親代わりでもあるベテラン弁護士EBは自らの醜聞に絡め取られ、命を絶つ。「女は感情的だ」と宣い、優秀な助手デラをぞんざいに扱ってきた彼だが、EBこそ感情的であり、“老害”だろう。そんな男の身勝手さに憐みを込めるジョン・リスゴーは『ザ・クラウン』のチャーチル役に続く名優の仕事ぶりである。

 ドラマは折り返しの第5話でようやくセットアップを完了し、新生『弁護士ペリー・メイスン』としてスタートする。それまでのノワールドラマから、本来の法廷ドラマへシフトチェンジし、シリーズの雰囲気もガラっと一変。おなじみのキャラクターのオリジンを描くというのがリブートの目標とは思うが、原作に愛着がない身としてはちょっとアがりきれなかった。当初、1シーズンのみのリミテッドシリーズとして製作された事からも所謂“企画モノ”であったと伺えるが、今シーズンの成功を得て続編の製作が決定した。2020年代の『弁護士ペリー・メイスン』として独自性を発揮するのは次からだ。


『ペリー・メイスン』20・米
監督 ティモシー・ヴァン・パタン、デニズ・ガムゼ・エルギュベン
出演 マシュー・リス、ジュリエット・ライランス、クリス・チョーク、シェー・ウィガム、タチアナ・マスラニー、ジョン・リスゴー、ゲイル・ランキン、ロバート・パトリック

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『ベター・コール・ソウル シーズン5』

2020-04-25 | 海外ドラマ(へ)
※このレビューは物語の展開に触れています※

 当初、シーズン5がファイナルと目されていたが、2021年OA予定(コロナショックで延期は必至だろう)のシーズン6で完結する事が公式にアナウンスされた。アメリカTVドラマ史に残る傑作『ブレイキング・バッド』の前日譚としてスタートした本シリーズはオリジナルとは趣を異にしながら、大きく弧を描くようにアルバカーキ・サーガへのミッシングリンクを埋め、ついに今シーズンで『ブレイキング・バッド』へと結実する最終章の幕を開けた。

残されたミッシングリンク

 前シーズンのラストで兄チャックの呪縛を振り切ったジミーは屋号を「ソウル・グッドマン」に改名する。これまで培ってきたコネクションを活用して犯罪者専門に業態を変えるが、綱渡りっぷりは健在だ。治安の悪い地域で携帯電話を在庫処分する傍ら、弁護費用50パーセントOFFのキャンペーンを展開。そうこうしているうちにまたカルテルからお声がかかった。今度は下っ端じゃない。サラマンカファミリーの代理頭ラロの弁護だ。

 今シーズンの見所の1つがシーズン4終盤で登場したラロだろう。マイクに対する咬ませ犬かと思いきや、腕っぷしばかりのサラマンカファミリーには珍しい頭脳派。料理好きで面倒見が良く、冷徹な殺人鬼というこのシリーズならではの魅力的な悪役だ。さすがのガスも彼には手を焼き、密偵となったナチョは枕を高くして眠ることができない。『ブレイキング・バッド』シーズン2第8話、ソウルはウォルター達に銃を向けられた際「ラロがお前らを送ったのか?」と言う。ラロはガスによる暗殺指令から生き延びたのか?それともソウルの知らない所でラロは消されたのか?

 そしてナチョの命運はどうなるのか?父親を救うため組から足を洗いたいと願う彼に対し、マイクは警察署内の汚職から命を絶たれた息子の姿を見出している。『ブレイキング・バッド』へのいわば“繋ぎ”に過ぎないキャラクターにこれほど肩入れしてしまうのも本シリーズならではの人物造形によるものだ。彼らの結末がシーズン6の大きな見所の1つになるだろう。

悪への静かなる転落

 今シーズンの主役はキムだ。これまでもジミーのささやかで小さな悪の誘惑が彼女の運命を変えてきたが、それはいよいよ取り返しのつかない大きな奈落にたどり着いてしまう。ジミーにつられて戯れに窓からビール瓶を放り投げたのはまだ序の口。メサ・ヴェルデのコールセンター建設予定地を立ち退かない老人が登場し、彼女が見て見ぬふりをしてきた悪事への傾倒を言い当てる。キムはまるでそれを払拭するかのようにジミーの悪知恵を使って、万事丸く収めようと奮闘するのだ。

 法を守る弁護士の立場でありながら“みんなが笑顔になるならちょっとくらいのルール逸脱は問題ない”というのがジミーのマインドであり、それが彼を三流に留めてきた原因だが、キムはこれまでの4シーズンを通して少しずつ毒されてきてしまった。『ブレイキング・バッド』でスカイラーが劇的に悪へと引きずり込まれたのに対し、『ベター・コール・ソウル』は悪への転落を静かにゆっくりと描き、万人が胸に手を当てたくなってしまうものへと昇華している。
 最も頭を抱えてしまうのがジミーがそれに気付いていない事だ。第10話「俺は君にとって害悪なのか?」と自責の念に駆られながらも、脅威が去れば舌の根も乾かぬうちに「仕事をサボれ」と誘惑する。彼は自分自身の転落も、愛するキムを引きずり降ろしている事も自覚していない。

 そしてキムの『ブレイキング・バッド』における不在、という悲劇の予兆はいよいよ今シーズンで顕在化する。彼女の存在がラロに知られてしまうのだ(「彼女はもうゲームに参加しちまったんだ」)。そしてシーズン4と対になるラストショットに、僕らが恐れていたことがいよいよ現実のものになりつつある事がわかる。あぁ、キムよ!

現代アメリカ神話へ

シーズン5はこれまで『ベター・コール・ソウル』が培ってきた“より遅く、より熱く”というナラティブが最高潮に達した傑作シーズンだ。脚本、撮影、演出、演技は円熟の極みにあり、全10話1分たりともクオリティを落とさない完全試合である。中でも第8話、9話はアルバカーキ・サーガ史上トップクラスの傑作回だろう。

 アルバカーキでは事件は砂漠で起きる。かつてウォルターが「家族のために」と物語を始めたように、自らの動機と向き合ったジミーは身から出た尿を飲んで渇きを癒し、砂漠を放浪する。“世界で2番目の弁護士”と書かれた愛用のタンブラーを捨て、あのみっともない愛車を捨て、兄チャックが片時も手を離せなかった保温シートを捨て去る。ジミーの象徴であったモノが砂漠に置き去られ、物語は静かに『ブレイキング・バッド』へと連なり、最終章の幕が上がる。

 マイクは言う「人は皆、選択をする。道を降りたと思っても、結局は元の道に戻る」「そして今のこの場所へとつながってたんだ。それはどうすることもできない」 。

 ジミーは『ブレイキング・バッド』という定められた結末に向かって歩いているだけなのか?『ベター・コール・ソウル』という物語によって自らの運命を見つけ出すことはできないのか?奇しくも『ブレイキング・バッド』のアーロン・ポールが出演する『ウエストワールド シーズン3』が同時期に放映され、共に自由意志と決定論に繋がるポップカルチャーの横断が面白い。

 そして『ベター・コール・ソウル』における運命論はコーマック・マッカーシーにも通じていく。『ノー・カントリー』や『ザ・ロード』、“国境3部作”で知られるアメリカ文学界の巨匠はメキシコと接したアメリカ辺境から人と神、死と運命の物語を描いてきた。『ノー・カントリー』の原作『血と暴力の国』には前述のマイクの台詞とそっくりな一節がある。

“人生の一瞬一瞬が曲がり角であり人はその一瞬一瞬に選択をする。どこかの時点でおまえはある選択をした。そこからここにたどり着いたんだ。”

 また2013年にマッカーシーが脚本を書き下ろした『悪の法則』(リドリー・スコット監督)は『ベター・コール・ソウル』と全く同じ設定の物語だ。マイケル・ファスベンダー扮する弁護士はあるビジネスに手を出した事でメキシコ・カルテルという絶対的な死につけ狙われることになる。
キムはラロの脅威を前にして「明日は大丈夫なの?」とジミーに尋ねるが、彼は答えをはぐらかす。死を避ける方法なんてないからだ。

 文学性も帯びた『ベター・コール・ソウル』は“『ブレイキング・バッド』前編”というポップカルチャーの域を超えた、現代アメリカ神話に到達しようとしている。コロナショックであらゆる楽しみを奪われた今、僕らはこの物語をよすがに生きていくのだ。


『ベター・コール・ソウル シーズン5』20・米
監督 ヴィンス・ギリガン、他
出演 ボブ・オデンカーク、レイ・シーホーン、ジョナサン・バンクス、ジャンカルロ・エスポジート、マイケル・マンド、トニー・ダルトン
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『ベター・コール・ソウル シーズン1~4』

2018-12-22 | 海外ドラマ(へ)

『ベター・コール・ソウル』は『ブレイキング・バッド』に登場した名脇役、悪徳弁護士ソウル・グッドマンを主人公にしたスピンオフ作品だ。舞台は『ブレイキング・バッド』以前、ソウルは本名をジミー・マッギルといい、国選弁護人として軽犯罪者を弁護、日銭を稼ぐ毎日を送っていた。事務所を構える金もままならず、台湾式マッサージ店の物置を借りてはオフィス代わりにするうだつの上がらなさだ。

本作は『ブレイキング・バッド』と似て非なるグルーヴのドラマだ。バイオレンスや殺人、麻薬カルテルの抗争は遠景に過ぎず、ジミーの奮闘にスポットが当てられた人間ドラマとなっている。ケチな詐欺師だったジミーは敏腕弁護士である兄チャックによって更生、通信教育で司法試験に合格した後、兄の経営する大手法律事務所HHMでメールボーイとしてキャリアをスタートした。だが法律家として名高い兄から見ればジミーは所詮“不肖の弟”。弁護士としての所属なんて許されない。無名の通信制大学で学んだなんてもっての他だ。ドラマはこの兄弟の愛憎入り混じった骨肉の争いを中心に展開していく。

『ブレイキング・バッド』のスリルやサスペンスを期待した人には肩透かしに感じるかも知れない。昨今のツイストやクリフハンガーにあふれ、奇抜なストーリー展開のドラマ群と比べるとずっと地味だが、ヴィンス・ギリガンら製作陣の手腕は円熟の極みにあり、実に“大人っぽい”のである。セリフよりも描写で見せる脚本、演技派俳優たちの誠実な演技、抑制かつ無駄のない洗練された演出…『ブレイキング・バッド』以後、充実を極める“ピークTV”によって鍛えられた僕達が今こそ見るべきドラマなのだ。

【ダークサイドへ】

麻薬カルテルともパイプを持つ海千山千の悪徳弁護士ソウルを知っているだけに、ジミーがどうやって“ダークサイド”に転じてしまうのか、興味が尽きない。ジミーは誰からも愛される熱意に満ちた弁護士だが、生来の要領の良さから度々、法の枠を超えた裏技を使ってしまう。

『ブレイキング・バッド』が余命いくばくもない主人公が麻薬密造を始めるという、悪への転落を劇画的に描いていたのに対し、『ベター・コール・ソウル』はジミー本人すら自覚していない程のゆっくりしたスピードで人が悪へと転落していく様を描いている。それはやがて本人だけではなく、周囲の人々にも影響を及ぼし、歪を来していってしまう。兄チャックやジミーの唯一の理解者となる恋人キムは後の『ブレイキング・バッド』には登場しない。それがいったい何を意味するのか。後の物語を知るからこその悲劇の予兆に胸騒ぎが止まらなくなってしまうのだ。

【ブレイキング・バッド2002】

シーズン3からはもう1人の主人公とも呼べるマイク・エルマントラウトを入り口に、『ブレイキング・バッド』の名物キャラクターが続々と登場し始める。車椅子と呼び鈴が強烈なインパクトを残したヘクター・サラマンカも本作では現役バリバリのヤクザだ。そして最大のヴィランであるガス・フリングはいよいよそのドラッグビジネスを巨大化させる直前にあり、マイクの人生に大きく関わり始めていく。

その他、後にソウル・グッドマン事務所でも受付を務めるフランチェスカなど本編の脇役も多数登場しており、『ブレイキング・バッド』の記憶を呼び起こしながら見ていくイースターエッグ探しのような楽しみもある。

一方、前述のキムやチャック、そしてサラマンカの片腕である穏健派ヤクザのナチョなど本編に登場しない重要なサブキャラクター達がミッシングリンクをどのように埋めていくのか興味がつきない。さり気なく登場した脇役が後に重要な役割を果たすなど、人物配置は『ブレイキング・バッド』以上に巧妙だ。

 【完結編は映画版か?】


 先頃、『ブレイキング・バッド』続編が長編映画として企画されている事が明らかになった。数々のドラマ、映画に影響を与えてきた本シリーズとしては当然の流れだろう。噂によるとジェシー・ピンクマンのその後が描かれるというが、当然『ベター・コール・ソウル』も直結してくるのではないだろうか。本作では毎シーズンの冒頭、『ブレイキング・バッド』後の潜伏生活を続けるソウルが描かれている。彼が自分の人生にどのような決着をつけるのか?拡張し続ける“ブレイキング・バッドユニバース”の到達点は映画、ドラマ界に大きなムーヴメントを引き起こす事だろう(ひょっとしたらピークTVの節目になるかも知れない)。まずはファイナルとなるシーズン5を心して待とう。


『ベター・コール・ソウル』15~・米
監督 ヴィンス・ギリガン他
出演 ボブ・オデンカーク、レイ・シーホーン、ジョナサン・バンクス、マイケル・マッキーン、パトリック・ファビアン、ジャン・カルロ・エスポジト
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