オリンピック開催中の東京都で連日3000人超の新型コロナ感染者が確認され、去る7月30日に菅総理大臣が記者会見を行った。かねてから原稿の棒読み、事前に打合されたメディアとの質疑応答、フリージャーナリストからの質問に噛み合わない返答等、その内容は先進国とは思えない稚拙さだったが、この日の会見も危機感に乏しい、実に不誠実なものだった。
本作はそんな菅政権の内幕に迫るドキュメンタリー映画である。内山雄人監督のユーモラスな語り口はアダム・マッケイ作品を思わせ、まるでバラエティ番組のようなわかり易さでこの絶対に笑ってはいけない暗愚の実像に迫っていく。ナレーションはかねてよりSNS上で政権批判を繰り返してきた古舘寛治だ。劇場には50代以上の観客の姿が多く、上映中には度々、笑い声が起こり、それはやがて失笑、そして嘆息へと変わっていった。
この映画を初日に観るような観客にとって本作に特段、新しい情報はない。内山監督もそれは認めている様子で、作中ではこの程度の情報にすら触れていない人々にどうやって伝えるかという問題定義がされている。映画はそんな彼らに向けた"入門編”の域を出ず、既に現状を知る僕たちの価値観を変えるような迫力には乏しい。本作の公式ツイッターアカウントが突如、凍結された時「政府の意向では?」という陰謀論が囁かれたが、恐れるほどの仕上がりではないのだ。もしそれが本当なら、ガースーはこの程度の言論すら統制しようとする卑小な性根の持ち主なのだろう(いや、多分そうなのだが)。
本作の公開翌日、都内の感染者数は4000人を超え、菅は「重症者以外は自宅療養」という方針を打ち出した。政治に無関心でも、政治は生活に直結する。就任会見時の"自助・共助・公助”という言葉がついに僕らの命を脅かすのだ。
『パンケーキを毒見する』21・日
監督 内山雄人
ナレーション 古舘寛治
「上映中には度々、笑い声が起こり、それはやがて失笑、そして嘆息へと変わっていった」
どんな内容なのか、気になる部分です。
地元では上映していないので、観にいけるかはわかりませんが、覚えておきます。